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大学一年生 Freshman になったムスメ。出発前。

8月下旬に、ムスコと一緒にムスメの大学入寮を手伝った。三人で Airbnb に3泊し楽しく過ごして、ムスメを見送った。

さて。
"You need to leave the house."
"I need to leave the house."
とお互いに言い合った母娘。

NY郊外のこんな小さな裕福な街にいて、世界を知ったつもりになっていちゃいけない、と私は二人の子供に言い聞かせて育てた。

ボストンの大学に進んだムスコは "People are nice." と驚き、サッカーで敵対していた高校の出身者とキャンパスででくわし「あの時は悪かった。大学では fresh start をしたいんだ」と言われたというから、環境に強制された言動が間違っていることをどこかでわかっていながら、その波に身を任せてしまったということなのだろう。

それでもムスコは仲良い友達仲間がいたが、ムスメは本当にかわいそうだった。上級生からは男女ともに可愛がられ、下級生からも男女ともに慕われ、先生もコーチも感心するほど良い生徒で、同級生の男子の友達は多かったのに、とにかく同級生の女子とうまくいかなかった。

嫉妬以外の、何物でもないことは明らか。

地元の大学や車で数時間以内の距離にある大学へと子供を誘導するよその親を横目に見ながら、さっさとこんな街を出て遠くの大学に行きなさい、と私は言い続けた。アメリカは広い、世界は広いのだから、こんな社会しかないと思ってはいけない。世の中あんな連中しかいないと思ってはいけない。どこでも好きなところへ行きなさい、と言った。

オハイオ州にあるムスメの大学街まで、飛行機で2時間足らず、車では7時間弱。ムスコのいるボストンは、飛行機で1時間、車では5時間弱。電車でも5時間程度。某氏と二人で交代で運転しながら Road Trip が楽しくできる距離だ。

ムスメの大学は、看護師を目指し始めた時から私がずーっと目をつけていた。通常はどんなに早くても大学2年生からしか始まらない病院での実地演習が、この大学では1年生の二週目から始まる。卒業するまでに費やす1300時間もの実地演習は、他の大学の二倍近く。連結している病院は米国内はもちろん世界でもトップ5に数えられる。が、4年後に NCLEX という看護師資格試験に受からなければ身も蓋もないので、1年生から全てのテストは、このNCLEX フォーマットだそうだ。

さて。例のタマなしRyan との結末である。

Road Tripから帰ってきて、その後祖母宅に十日間遊びに行っていた彼女は、家に戻ってきて大学入寮まで1週間しか残っていなかった。

祖母宅滞在中に電話かけてきて "I will miss you.." と言ったという Erik はいわゆる「お別れ」をギリギリまで先延ばしにしていたようだが、ある日しびれを切らしたムスメが、"Today or December." とテキストしたら(注:ムスメが次に帰省するのは12月のクリスマス休暇)、即座に"Today" と返事して、その日うちに来て、私はミートソーススパゲティをたっぷり食べさせて、二人は "The Bachelorrette" というリアリティショーを見て盛り上がっていた。

これまでに何度も私は Erik を呼んでうちでご飯食べさせようとしたのに(食欲旺盛な男の子に食べさせたかったのに)恋人でもないのにムスメの家に来るというコンセプトがどうしても受け入れられず、他の男子スイマーと一緒にここで集まった以外に、彼一人で遊びに来ることはなかった。

お腹空いてるというので、冷凍庫にあったミートソースを食べさせたのだが、
"I never had this good pasta in my life…"
とうめいていたようで、ムスメが「だから遊びにこいって何度も言ったのに!」と罵る始末。

まさかこんなに食べるとは思わないけど、超お腹空いてるっていうし男の子だしと、ムスメと私二人なら乾麺パスタ170-180g茹でるところを、彼一人分で300gくらい茹でたら凄まじい量だったのに、「死んでも食べ残さない」と言いながらほとんど食べて、ほんの少しの残りを家に持ち帰った Erik.

笑。笑。笑。

ノースキャロライナ州の大学に行くタマなしともやっぱり最後に会わなきゃね、とは言っていたのだが、こっちの方は、どうも彼がいつなら会えるのかと迫っていたらしい。

何せ8年生から12年生まで続いた両想い。Memory Lane に書いた私の中高時代の想い人(のちに「カス」と命名した MT君)のことを思うに、後悔しないように、一度「寝た」らいいと思う、と母としてはあるまじきことまで言い放った私。

もちろんムスメは呆れて果て、相手にしなかったけれど。

この家を出る前日の朝、ムスメはついにタマなしに会った。

どのくらいで帰ってくるのかわからなかったから、ムスコと私は近くのコーヒーショップに出かけていた。あっという間に戻ってきたらしく、家には誰もいない、どこにいるのかとテキストが入り、こっちにおいでよと返事したら、真っ赤に泣き腫らした目でやってきた。

彼の曖昧さに相当振り回されたというのに、とにかく彼女のタイプで、好きだったんだよねぇ…。

タマなしがムスメの大学にも合格していたことは以前の記事で書いた。

そして。その日。

"I will transfer to your college if you want me to."

と言ったというではないか。あぁ。

ムスメは「それ、お母さんはOKしてるわけ?」とツッコんだらしい。確かに私でも同じことを聞いただろう。

インスタのプロフィール写真を、母親とのツーショットに変更した時点で、私もムスメも絶句し、でもママ…将来もし…もし結婚したらどうするよ、と情けなさそうに言ったムスメに、私は先方とは一切関わらないと言った。冗談じゃない、あんな母親。

まぁ、あんたが産む子をまたタマなしにされるのがオチよ。

子供は産むから「ママ、育てて」と言うムスメ。
そ、そんな。せっかく子育て終わったのに。

さて。オハイオ州入りしたムスメに、タマなしがテキストした。

R: Hi How are you doing there?
ム: Good. I like it here.
R: I can't stop thinking about you.
ム: I can. Bye Bye Ryan.

ひゃー。容赦ないにも程がある。

もし。24年前に某氏がそんなメッセージを送ってきたら、私がムスメみたいな返事をするなんて有り得なかった。

彼は、私がムスメの話をすると、そっくりだそっくりだ、同じ遺伝子だと笑っているけれど、こういうところは絶対に違う。

そんなムスメは新生活を始めて1週間になるのだが、これがまた波瀾万丈で。

(続)


ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。