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「誕生日おめでとう」キスしようとしたら引っ叩いてやる。タマなしと冷戦中のムスメ。

アメリカでは州によって違うのだが、この州では17歳の誕生日に運転免許の路上試験を受けるのが普通。高校2年の前半期か後半期に筆記試験のクラスを学校で受講し、それに合格して16歳の誕生日を迎えたら6時間(2時間x3)の路上実習を受けて、仮免取得となる。それからは17歳の誕生日まで、もしくは仮免取得から最低半年間は、親同伴の運転を経て、路上試験を受ける流れ。

ムスメは17歳になり、無事に免許を取得した。

朝イチバンで試験を受けに行くので、学校へは遅刻する。誕生日の朝は、友達から誕生日おめでとうメッセージが続々と届く。タマなしRyanからも、もちろんきた。相変わらず返事をしない。

じつは、もう1ヶ月以上、キスしてない(サセテナイ)らしい。

"You should be proud of me, Mom!!!"

1ヶ月以上前って何があったっけ、と考えてみる。あぁ、高校最後の遠征ミート。ちょっとした、いやかなり酷い事件があったのだ。

高校の水泳チームメートの同級生に、とんでもなく小意地が悪い女子がいる。違う水泳クラブなのだが、ムスメとどっこいどっこいのスピードなので何かと張り合う。高校1年の時にミートで親と顔を合わせたが、両親ともに全身から凄まじい競争心がはみ出していて、私はおそれをなしてしまい、こんな親からプレッシャー受けて育ったら….と正直思った。

案の定、競争心むきだしで、ありとあらゆる機会にいかに自分の方が速いか、ちくちく言うスイマーに育った。自分より遅いスイマーは見下し馬鹿にする。速いスイマーでも、調子が悪い時は当然ある。そういう時にすかさず貶す。水泳という個人競技なのに、他人との比較で泳いでいる。自分が負けた時には、必ず言い訳をする。そして他人を貶めることで、自分の相対的な位置を上げている。

実は、ムスメとダチ関係になる前、Erikはこの彼女のことが長いこと好きだったが、相手にされなかった。そのうちムスメの視線を通じて、Erikは彼女の本性を見極めていく。Erikがムスメと仲良くなっていくにつれて、それまではまるで相手にしなかったのに、この女は彼にちょっかいを出し始めた。ムスメはしっかとErikをつかんで離さなかった。

「私とErikみたいな関係には興味がないくせに、私とErikが仲がいいのがただ気に入らないのよ。」

ようやく諦めた彼女は、私がエレベーターで出くわしたRyanとErikの友達、一つ学年下のJack、と付き合うようになった。性悪カップルの誕生である。結構イケるErikでもRyanには到底及ばないが、そのErikの足元にも及ばないルックスのJackだから、私は驚いた。

えっ!!Jackなんかで、手を打ったの?!

JackはErikよりも速い。まれに2 IM(個人メドレー)でErikが勝つと、ムスメと私は祝杯をあげる。が、Jackの方が速いのが現実。二人とも、この性悪女と同じクラブで泳いでいる。

さて、この性悪カップルが、高校最後の遠征ミート先のディナーで、ムスメの携帯を取り上げ隠し続けるという嫌がらせをした。15分程度なら冗談で済む。これを1時間近くやったというから、悪意満載である。

Ryanは、レストランのTVでやっていた大学バスケットボールの試合に釘付けで役立たず。Erikも、友達のJackが絡んでいるからムスメを助けず。この件でムスメはErikと大げんかをした。

こんなに私は彼のこと大事な友達だと思ってるのに、なんであんな性悪のヤツのことを友達だからって、私の側に立たないのよっ!

どいつもこいつも、タマなし、である。

RyanもErikも、コトが済んでからムスメに謝ったらしいが、そんな「ごめん、もっと何かすべきだった」なんていうセリフには何の価値もない、と私は怒った。ムスメは、でも意地悪をしたのは彼じゃない、と言う。

が、何もせず傍観したという罪は、しっかり問われるべきだと私は思う。最近は、巻き込まれることを避けて、公道で暴力を受けている老人を誰も助けなかったと事件の後で取り上げられることも多い。それは他人のために手を差し伸べて、命落とすケースもあるからだ。が、そんな暴力行為を目の前にして何もしないで、その後どうやって生きていくのだろう。関わらなくてよかった、と思うのだろうか。

友達であろうとなんだろうと、むしろ友達だからこそ、いい加減にしろよ、と言えばいいではないか。誰も何も言わないから、1時間もそんな嫌がらせが続く。冗談でやっているんだから、と自分に言い聞かせてしまうのだろう。Teenager社会の難しさ、である。

深入りすればするほど、Ryanのタマなし度が気になってくるのだろう。彼女の理念信念にそわない言動が目につく。だから、絶対にBFGFの関係にはならない、ときっぱり言うようになった。

さて、免許を無事獲得して、学校に着いた。

誕生日おめでとうキス、されそうになったらどうするの?

I will punch him in the face!!! (顔、引っ叩いてやる!)
OK!!
Gosh, I have to resist his hotness~. (あぁ、彼のカッコヨサに負けないようにしなきゃ〜)

顔をしかめて、彼女は車を降りた。いってらっしゃい〜。

2022.4.7 さらに続編。










ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。