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ワタシの視線

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1994年にアメリカ上陸。アメリカに住む日本人としての私が感じたこと、思うこと。
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#エッセイ

年相応、とは。

オシャレとかお化粧の話題、になると、どうも日本にいる80歳の母と話が噛み合わない。 母は「洋服はアラフォー世代を参考にしてアクセサリーもつける」と言っている。化粧もするし髪も月に一度は染めている。一応いずれ白髪に移行することを想定して、染める色は真っ黒ではなく茶色を徐々に明るくしている、らしい。太っていないし、言動も若々しい。 60代の友達は彼女のことをほんのちょっと年上だろう、程度に思っているから、飛行機で旅行するのに誕生日を記入しなきゃいけないとか、なにかの折に年齢が

自分で淹れるコーヒーと紅茶。

私は、コーヒーよりも紅茶の方が好きだ。若い頃は1日に何度もコーヒーを飲んでいたのに、17年前に二人目を産んでからカフェインが体に強すぎると感じるようになった。飲んだ後にちょっと吐き気がするのである。 が、紅茶は問題ない。 Fortnum & MasonとMariageはモチロンのこと、イタリアで出会った Babingtonsも香りが素晴らしい。Fauchon, Whittard, Harney & Sons, T2。Tea Forteはレストランでよく出されるし、The

免許とったムスメ、独り立ちの始まり。

ムスメが免許をとって一人で運転するようになった。あんなに出無精だったのに、嬉々としてスターバックスやスーパーマーケットやモールに出かけていく。早朝の自主練も、水泳クラブの夜の練習も、一人で行けるようになっり、私は友達とのランチから帰ってきて、もう明日まで外出することはないから、もうパジャマに着替えてワインが飲めるってことか、と思わず笑った。 独り立ち、である。 ムスコの時と違う。彼は後方カメラが付いてないモデル、父親のお下がりだった大きめのSUVを学校通学とサッカーの練習

目的達成に向かう行動基準が「そうあるべき正しさ」ではなく「自分が望むもの」になっている。

アメリカに住んで20年以上になるが、長いこと違和感のあったモノの正体がようやく形を成してきて、言葉で説明できるようになった。 アメリカは権利主張、個人主張の国だ。一見、世界のため、人類のために主張し活動しているように見えるが、「自分が恩恵を受ける」ことのできるゴールに向かって頑張っているに過ぎない。もちろん全員がそうだというのではないが、そういう人がほとんどだと思う。 学校関係、子供のスポーツクラブ関係。親は自分の子供の「提唱者」として学校にコーチに、進言する。「そのよう

その空いた時間を何をして過ごすのか。

ムスメが4月に17歳になる。運転免許をとるから、水泳の練習も学校も買い物も、私が同乗する必要がなくなる。どこへでも一人で行けるようになる。 「一気にヒマになるじゃん。一体これからその時間どうするの?」 結構な数の友達から真剣な眼差しで聞かれる。その裏にはやることがなくなって時間をもて余して呆然とするのじゃないかという問いが隠れているから、私は首を傾げてしまう。 私にはいくらでもやること、やりたいことがある。 幼児だった子供が大きくなって、一人でお風呂に入れるようになり

あの老人を惨めと見るか、頑張れと応援するか。

10時ごろ家を出て、ムスメの喘息の薬を医者のオフィスまで取りに行った。歩道を、老人がヨタヨタと歩いていた。 ヨタヨタ。脳梗塞を患った父が病院で歩行練習をしていた時の姿に似ている。比較的大通りといえるその道は、最低速度40mph(=時速65キロ)だが、それ以上のスピードで車がビュンビュン走る。その老人の一歩は10cmくらいだったと思う。右肩を少し落として、ちょこちょこと歩いていた。 20分ほど運転して行く途中に、私のいつもの散歩コースがある。このところ天気が悪く歩いていない

Accountabilityのない社会で暮らすということ。

Accountabilityとは、自分の言葉や行動に責任が伴う、ということである。それがアメリカには存在しないと思うことが多い。 ムスメが歯科矯正用のretainerを新調することになった。水曜に型をとって、できるのが翌日と言われたが、フィッティングのアポが来週の火曜まで入れられないので、とりあえず受け取るだけ受け取り、調整が必要ならば火曜日に出頭する、ということとなった。 「明日(木曜日)完成したらすぐに取りに来ますが、お電話いただけるんですね?」と確認。 ところが、

オミクロン対策。アメリカからのアドバイス。

オミクロン、凄まじい感染力である。だった。11月から荒れくるったオミクロンは、12月にピークとなり、今現在の1月末にはほとんど収まってきた。今、日本がピークに向かっているところだろうか。 身近な友人たちの家族が感染したという話をあちこちで聞いた。もういずれは感染する、とみんなで覚悟を決めたほどの凄まじい感染力である。日本の事情で可能かはともかく、私の経験から、以下のアドバイスを日本の皆さんにしたい。私は医者でもなんでもないので、そういえばお隣さんがこう言ってたわよ、ってなレ

コロナ疲れ。ルール破りのアメリカ人。

ワクチン接種三回目(ブースター)をしたのが11月末。クリスマス休暇で大学から帰ってきたムスコは、ブースター接種をしてないと1月半ばからの春学期の授業に出られないとのことで、帰省してすぐに接種を済ませ、どんな注射でも腕が痛くなって泳げなくなるのが嫌なムスメが、年明けにようやく接種を終えて、我が家は「やるべきことはした」体制を整えた。 アメリカは疲弊して混乱している。CDCは自粛と隔離のルールを10日から5日へと緩和したけれど、残り5日はマスク着用。学校はともかくスポーツをマス

読書。"Redeployment" by Phil Klay

2014年に発表されたこの作品は、何度も何度も「読むべき一冊」などのリストに載った。 短編小説だとは知らず、最初の数編を読みながら、つじつまが合わない、登場人物がフォローできない、などと首を傾げていた、というのは内緒の話。小説によっては、異なる場所で複数の登場人物が別個にストーリー展開するのはよくあることなので、そのうち融合するのだとばかり思っていた。 著者には、イラクでほぼ1年の従軍経験がある。前線で戦ったわけではない。が、彼の作品は、前線で戦う(戦った)兵士たちの鮮明

アメリカのコロナワクチン接種。三回目のBooster。

感謝祭の翌日、金曜日にコロナワクチンの三回目、Boosterを接種した。今回は大会場ではなく、近所のdrug storeで。 私の最初の二回の接種は、ほとんど予約が取れない最初の頃に、何時のどこのサイトで取りやすいとか、Twitterのbotを使って空きが出たら通知が来るとかという予約技術を極めた友達がとってくれた。二回目の接種を半年過ぎた頃から、州の衛生局から電話やテキストが入ったが、お年寄りとか最優先の人たちを先に、と思い無視していた。DonnaとLoanとの三人のGr

女子高校生。“Taylor’s Version”で殺意満載。

ムスメはTaylor Swiftのファン("Swiftie")である。高校生大学生の年齢層は「信仰的」なファンと「まぁ聴くね」程度に分かれるらしいが、ムスメ曰く「Breakup song(別れた時の歌)」といえば、Taylor Swift、なのだそうだ。彼女はカントリーソングも好きなので、これまでに車の中でいろんなのを聴かされてきたけれど、カントリーソングのプレイリストも聞き飽きたある日、 ”Mom, what do you want to listen?" "Hmmmmm

高校生。数学さえできれば「頭がいい」のか。

ムスメはあまり数学が得意ではない。彼女のために言い訳するわけじゃないが、5年生になった時にこの学校区の数学のカリキュラムが変わり、私にも何がなんだかわからない方法で教えられ始めた。つまり数学ができない子を掬い上げるために、妙に回りくどく噛み砕いた方法をとっていて、数学が得意な子はその意味がわかるけれど、ムスメのような平均に位置する子は返って混乱してわけがわからなくなった。そこから家庭教師をつけても何しても、彼女の数学は九九を誰よりも早く覚えて、クラスのトップを突っ走っていた頃

Sushi Burritoって何か知ってますか?

25年以上前にアメリカに上陸してから、かなり長いこと私はアメリカ(人)が発明した巻きスシを食べなかった。いわゆる、カリフォルニアロールとその仲間達、である。 私にとって、お鮨というのは神聖なものだった。スーパーでお刺身を買ってきて家で手巻き寿司を作ることすら、神聖なものを汚すような居心地の悪さがあった。東京の大学で4年間過ごし、就職して、自分のお給料で築地のお鮨屋さんに行った。鮨ネタの種類もろくに知らなかった私が「ハマチ」を頼んだら、板前さんに「ネェちゃん、うちはハマチなん