自分で淹れるコーヒーと紅茶。
私は、コーヒーよりも紅茶の方が好きだ。若い頃は1日に何度もコーヒーを飲んでいたのに、17年前に二人目を産んでからカフェインが体に強すぎると感じるようになった。飲んだ後にちょっと吐き気がするのである。
が、紅茶は問題ない。
Fortnum & MasonとMariageはモチロンのこと、イタリアで出会った Babingtonsも香りが素晴らしい。Fauchon, Whittard, Harney & Sons, T2。Tea Forteはレストランでよく出されるし、The Republic of Teaはスーパーでもすぐ手に入る。安くても美味しいのは、やっぱり英国のTetley, PG, Yorkshire Teaだろう。
私はフルーツ味でもミルクを入れて飲む。イギリス人から邪道だと怒られるかもしれないが、ミルクで味がまぁるくなる。
紅茶は外で飲んでも家で飲んでも、紅茶そのものの質が高ければ同じように美味しいが、通常は家にある紅茶セレクションの方が外で出されるのよりもいい紅茶だから、家で飲むほうがいい。
ところが。コーヒーときたら。
アメリカのコーヒーはまずい。昔からとにかくまずい。スターバックスが出てきてようやく飲めるようになり、競争が激しくなっていろんなコーヒー店チェーンが出てきた。チェーンに対抗して個人経営のカフェも出てきたから、旅行先でそういうカフェを探すのが楽しくなった。
ところが、どうしてもスターバックス程度のコーヒーすら家で淹れられない。うちにはKeurigもNespressoもmilk frotherもある。スターバックスのpodsもNespressoもPeetsも試したけれど、ダメなのだ。私はスキムミルクや1%2%の低脂肪ミルクをバカにしていて、Whole Milkを使うのに、それでもダメ。
市販されているpodsは、製造されて出荷されてから棚にどのくらいの期間売れずに放置されているかわからないと言われる。Costcoなどもってのほかだそうだ。Podsに真空密閉されているのに?と思いながら、新鮮さを謳う小規模ブランドも試してみたが、あまり違いがわからない。
朝起きてすぐは紅茶だが、ランチの後はどうもコーヒーが飲みたくなる。紅茶じゃなくてコーヒー、が飲みたくなる。
なのに、どうしても美味しいコーヒーが家で淹れられない。
豆を買って、自分で数カップ分挽いて、ドリップで淹れた時期もある。手間かけても美味しくないから、器械に戻った。
ということは、豆そのものがまずいのか。…….そういえば、昔、ハワイ産のKonaは主に日本に輸出されて、アメリカ本土には回ってこないという話を聞いたことがある。
免許を取ったムスメが週に2回はスターバックスに車を走らせる。そして、Iced Latteはダンキンドーナツの方が美味しいと言い出した。確かに。好き嫌いの激しいムスメだが、そのせいか、それとも若いせいか味覚は妙に鋭くて、ちょっとだけ残っていたCilantroをサラダに入れたら、即座に文句を言われたし、抹茶味のドリンクやスィーツを"It tastes like dirt." (土の味がする)と言って嫌う。
二人分買うと$10を超える。なんでコーヒーに1000円も払ってるんだ、とイライラするが、せっかく免許取って自由を謳歌しているムスメに外でコーヒー買うな、とは言いたくないし、言うべきじゃない。
なんで家で同じように淹れられないんだろうねぇ?
と思わず言ったら、ムスメは答えた。
でしょう?絶対に違うよね。仕事するようになったらお金貯めてメルセデス買うとかよく聞くけど、アタシ、毎日スターバックスでコーヒー買うってのを目標にするの!
えらいっ。それは、とってもいい目標だ、日々のささいな贅沢を目指すのはとてもいい、と褒めたらにっこりした。
私の子供たちは、しっかり育ったと思う。親の財産は老後資金として貯めたもの、あてにするな、と言って育てた。大学までは行かせてやるが、そこでしっかり勉強して、ちゃんと自立できるような仕事を見つけなきゃいけない。でも金に身を売らず、好きな仕事につくんだよ。毎日ながーい時間を働くのだから、好きな仕事でなければミジメになるよ。
二人とも、ちゃんとわかっている。自分の働きで稼いで生きるから自信がつく。そして自立する。
老後の幸せは、いかに子供が自立しているかにかかっているという。母の友達は皆子供を経済的に援助しているから、旅行を楽しむ余裕もない。母が一緒に旅行する友達は、現役で働いている60代。働いているから週末にしか旅行できないので、旅館でも交通費でも高いと母はいい、私が日本に遊びに戻って三人一緒に旅行するのを父と二人で心待ちにしている。ムスメを無事に大学へ送った後の2023年10月まで待っててね。
5ドルのコーヒー飲みながら、独り立ちしてもこのコーヒーを毎日飲むんだ、とムスメが自立の決意を固めるのなら安いもんだ、と思った。
ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。