食べものがぴかぴかに輝く街、鶴岡
ふだん海外にいる友達が帰国するというので、温泉に入っておいしいものを食べにいくツアーを敢行。名店「アル・ケッチァーノ」に行ってみたくて、さらにかねてから憧れていたホテル・スイデンテラスのツアーパッケージが安かったことも後押しして山形県は鶴岡へ行くことに。
2024年時点で日本では二つしかない世界食文化都市に認められた街ということもあり、行く前から美味しいものへの期待で胸が高鳴る。
1日目
お昼すぎについて、まずはラーメン!山形はラーメンの消費量が全国一位なんだとか。寒いなか歩いてからありついたラーメンは、あっさりした醤油スープに極太麺の組み合わせが新鮮で美味しかった。
そのあとはカフェ・EN/MEへ。友達が頼んだチーズケーキが、岩塩とオリーブオイルをつけて食べるものだったのだけれどこれが本当においしくて!ラーメンでお腹いっぱいで頼めなかったのが悔やまれる。
ベーカリーも併設されていて、バターチキンカレーパンとか、クリームがたっぷり詰まったドーナツ、キャロットケーキ、スコーンなんかもあって、近所にあったら絶対に通っちゃう…と思った。
店を後にして、スイデンテラスにチェックイン。水田のど真ん中にたつホテルは、いたるところから水田が見えて開放感があるいっぽうで木の温もりのおかげか寒々しい感じはまったくなくて、素晴らしく快適だった。
夕食は市街中心部の「いな舟」へ。夏に鶴岡に旅行にいっていた友人がおすすめしてくれたお店で、メニューを見ただけで期待が高まる。
ひらめとそいのお刺身、ハタハタの湯揚げ、庄内柿の白和え、銀杏、弁慶飯(味噌おにぎりを葉っぱの漬物で巻いて焼いたもの)、むきそば(そばの実)を頼んだ。どれも本当に美味しい…!地元の旬の食材がぴかぴかに光っていた。
特に好きだったのは「庄内柿の白和え」。庄内柿の甘さとごまのきいた白和えの相性が抜群だった。
隣に座っていたお客さんは、遠方から毎年数回こちらのお店に足を運んでいると言っていた。次は真鱈の時期に来るそう。遠くの街に行きつけのお店があって、旬がかわるたびに訪れるって、人生に張り合いと季節感が出るだろうなあ。
ホテルに戻り温泉に入って就寝。
2日目
スイデンテラスで朝食ビュッフェを食べる。旬の味覚をふんだんに使っていて、朝から食べるのに嬉しい和食が中心。
市内中心部に移動して観光したあと、ついに待望のアル・ケッチァーノへ!徒歩で40分ほど歩いて店に近づいてきたとき、綺麗な田んぼが目の前に広がって期待に胸がワクワクした。
今回は8,500円のコースをおねがいした。ドルチェまで含めて全9品。
特に美味しかったものを抜粋すると、まずはサワラとレタス。庄内は生でサワラを食べられる珍しい地域で、軽く炙ったサワラと水分をおぎなうレタスを一緒に食べる一皿。透明感のあるおいしさだった。
庄内柿とヤギのリコッタチーズ、生ハムの一皿も美味しかった。ヤギのチーズだからくさみがあるのかなと身構えていたら、全くそんなことはない。近所の牧場?にヤギの飼育を委託していて、レストランのスタッフが毎朝面倒を見に行っているのだとか。庄内柿のとろっとした甘さ、生ハムの塩気、チーズのまろやかな甘さがあわさって、いつまでも口の中にとどまっていてほしかった。
庄内豚と藤沢カブのグリルも忘れられない。豚の火入れが絶妙で、脂が甘い!カブはパリッとしていて、豚と交互に食べると豚の脂がさわやかにリセットされていい。
車社会だからかノンアルコールドリンクメニューも充実していた。ノンアルワインの赤と白があるのはもちろん、モモジュースとジンのノンアルコールカクテルやノンアルスパークリングワインも。ウエイターさんに料理とのペアリングを相談しながら決めるのも楽しかった。
ここで食いしん坊が発動。ディナーメニューもあまりに美味しそうで、その場で夜も予約した。だってこんなの見たら、無理じゃないですか…?
また夜も来ますと店を出てからタクシーでホテルまで。道中、運転手さんが庄内のうまいもの自慢をしてくれた。「これとひとつには絞れねえ。米もんめえし、水がきれいだから野菜も酒もんめえ、夏のだだちゃ(豆)なんかサイコーよお」と東北弁で話すようすがなんとも誇らしそうだった。
一度ホテルに戻ってから昼寝をし、ふたたびアルケッチァーノへ。お腹は空いてないので軽めに…。といっても、きのこのピザ、穴子とほうじ茶のリゾット、鯛のハーブロースト、ズッキーニとクラゲのフィットチーネサラダとしっかりめなんだけど。
中でも感動したのはきのこのピザ。テーブルに運ばれてきた瞬間からきのこの香りがふわっと鼻先まで薫ってくる。口に入れるときのこのうまみがじゅわっと広がって、本当においしかった。
ウエイターさんにおすすめされた真鯛のハーブローストも絶品だった。何種類ものハーブの香りをまとった鯛は、ふわふわほろほろ。いくらでも食べられそうな味だった。
食べながら思い出したのは、午前中に南岳寺で見た即身仏のこと。おばあさまが解説をしてくださったところ、即身仏になるには1000日〜5000日もの間五穀をたち脂肪を落として、その後ひたすら仏の名を呼ぶ過程を経るのだとか。あまりの辛さに途中で断念する人も多いなか、庄内地方には全国でも有数の7体もの即身仏がおられるのだそう。ミイラになったかつてのお坊さんと、パリッと焼き目のついた鯛の皮目がかさなって、鯛の身をナイフとフォークで少しずつ食べ進めるたびに、命の生っぽさを感じた。食材にこだわるアルケッチァーノというレストランだからこそ、リンクしたんだと思う。
アルケッチァーノでお料理が運ばれてくるたびに、「この食材はここから車で10分ほどの場所で」「15分ほどの場所で」という説明が頻発していて、いかにこの土地が優れた食材の宝庫なのかを実感させられる。
昼も夜もお世話をしてくださったウエイターさんと写真を撮って帰路に着く。タクシーに乗り込んで開口一番「おいしかったあ〜」というと、運転手のおじいちゃんが笑いながら「美味しかったかあー」と言ってくれた。そこから「庄内んめもの話」が始まって、昼間の運転手さんと同じくやっぱり誇らしげに庄内の美味しいものを教えてくれる。自分の故郷を好きって、素晴らしくいいな。
お腹いっぱい、幸せな気持ちで2日目を終える。
3日目
スイデンテラスのモーニング。昨日のごはんがまだお腹に残っている気がして、白湯を2杯飲んでサラダを中心に軽めに。ここでも庄内柿。やっぱり美味しい。
柿のサラダを作っていたら上品なおばあちゃまに👵「それどちらにあったの?」と聞かれ教えてあげたら、真似っこしていた。おいしいのお裾分けができたみたいで嬉しい。
左下はつや姫と雪若丸の食べ比べ。個人的にはつや姫のほうがよりもっちりしていて好き。
ホテルをチェックアウト後、加茂水族館でくらげや魚を見て、昼は水族館でくらげラーメン。寒かったのであたたかいラーメンがしみた。クラゲはコリコリしていて食感がいい。
水族館をあとにして、駅前の喫茶店コフィアでコーヒーをいただく。コーヒーの美味しさだけ、カップが美しくて感動!
電車の時間までまだまだある。1日目のEN/MEが忘れられず、雨の中ふたたび。スパイスパンプキンケーキにキャラメルアイスクリームとクランブルのせ。美味しくないわけないじゃんね!
食べに食べた鶴岡旅行はこれにて終了。
食材の旬を大切にしていて、地元のひとたちがその魅力をきらきら誇らしげに語り、一番おいしく食べられるように調理されてでてくる……鶴岡は、食材たちがぴかぴか光る街だった。
数名のタクシー運転手さんがだだちゃ豆と花火大会を推していたので、次はぜひ夏に訪れたいな。そのころにはスイデンテラスも青々とした田んぼに囲まれているだろう。
美味しいものが大好きな人は、ぜひ一度訪れてほしい街。