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「民主主義VS独裁主義」が陥りかねない大きな”落とし穴”

今、アメリカのバイデン大統領主催で「民主主義サミット」が開催されている。

オンライン形式のこの会合のなかで、バイデン大統領は「世界中で独裁者が力を増し、人権侵害は拡大している。」と危機感を示した。
さらにハリス副大統領は「民主主義が現在、脅威にさらされている」と続ける。

念頭にあるのはもちろん中国(サミットには不参加)であることは間違いないが、たしかに今、世界にはアフガニスタンや北朝鮮のような独裁主義国家が、ここ半世紀のなかでもかなり力を増してきている用に思える。
実際、今世界で最も多い統治形態は独裁主義であるとさえ言われている。

これが現実だ。

バイデン大統領はあらためて民主主義の危機感を表明することで、「民主主義VS独裁主義」という構図を世界にむけて発信していこうとしている。

しかしこの動きは、中国を刺激しかねないという意味以上に、危険な未来を予感させる。

というのも「民主主義VS独裁主義」という対立構造は、たしかに国家間の構造としては現状を言い表しているかもしれない。
しかし、それが数十年前の冷戦時代と大きく違うのは、もはや国家以上に力をもった巨大IT企業の存在があるという点だ。

国家の思惑とは別なところで、世界中にネットワークと資金をもつGAFAMのような企業が、今力を増している。
バイデン大統領が「俺のとこと中国と、どっちにつくんだ?」と迫るとき、それは各国の首相に向けたものというより、巨大企業の役員たちに向けたものとみるべきではないか。

つまり、アメリアと中国(もしくはロシアやインド)といった大国にとって、他の国々がどうするかよりも、莫大な個人情報と資金を有する巨大IT企業がどこに拠点をおくのか、どこに都合のよい経営方針を示すのか、が試されている。

結果、こういった対立構造のなかで生まれるのは、完全にイニシアティブが巨大IT企業に渡っていく世界である。
キーマンをさらにキーマンとして際立たせることによって、よりその存在感を強めさせてしまう。
そのきっかけになりかねない。

今ある本当の対立構造は「国家(旧来の物理的権力)VS巨大IT企業(非物理的な権力)」の争いではないか。
それを、最近の中国のように強権的に抑えつけるわけでもなく、これまでのアメリカのように野放しにしておくのでもなく、ともに成長しつつ監視する、といった構図を期待したい。

それは例えばブロックチェーンのような、非集権的なネットワーク技術なのかもしれない。
いずれにせよ、「民主主義VS独裁主義」という対立構造からのみ世界を眺めていると、その背後(もしくは前面?)で拡大する非物理的な権力の無防備な拡大を許してしまわないか。


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