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めんこいこけしの今どき事情・その②

そうやって、ボンヤリとこけしの未来を考えていたところ、ポツンとひとり、目元がゆったりとした印象の町娘風のこけしと目が合った。
他のこけしとは一線をひく古風がある。それは実家にあるこけしで見かけた胴体が輪っか模様を連想させるからかもしれない。
手のひらにおさまるほどの大きさの、その子にジッと見つめられて目が離せなかった。
今どきのかわいいがあるが伝統も感じる不思議なこけしだった。

「あなたも少しは考えなさいよ。」

その子が問いかけてきた、気がした。
こけしを通して伝統が生き残る算段を継承者たちはでしゃばらず、偉そうに語らず、大ごとにせずに思案し遂行している現実に気づいた。
アイドル顔でも青くても良い、後世にこけしがある当たり前のふるさとの守り方を弥次郎こけし里で知ることができた。

こけしの裏には達筆な字で「真由美」とサインがある。
真由美さんは私にこけし事情を教えてくれた職人さんの奥さんの名前で、このこけしの産みの親だ。
あの日、帰り際に館内で仕事をしていた真由美さん本人にお会いすることができた。
しかし、あまりに突然の出会いに「買いましたよ!」と突発的に一言だけ伝えて別れてしまったことを少し後悔している。
こけしの未来をつなぐために、伝統文化を絶やさないためにも、こけしの話をもっと聞くべきだった。

最近、インスタグラムにこけしを登場させることがあるが、笑わないアイドルに負けず劣らずの表情でイイネを量産してくれている。
恐るべしこけし推し。
二歩も三歩も遅れてこけし推しになった私のこけし活動は始まったばかりである。
髪型はこけし風のおかっぱにした。

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