会津にゃん太郎交流会①
我が古民家で初めて黒白のネコに会ったのは古民家の片付けを始めた初秋だった。
古民家は傷みがあり住むことはできないが、築150年の歴史を背負って令和まで生きてきた。それならば有効な活用を模索しようと試行錯誤をしながらせっせと通っている。
ネコは隣の生け垣からジッとこちらを見つめて、適当に放り投げてある板の上でガリガリと爪を磨いでどこかに行ってしまった。
愛想のないネコだ。
それから数回、同じように見つめられてはどこかに去っていくという淡泊な時間が過ぎていき、あっという間にどっさり雪が降る冬が来てしまった。
どっさりと言っても、私は関東から引っ越してきたばかりだったので、長靴の甲が隠れる程度の積雪でもどっさりという印象になるのです。
したがって、当面は住めないであろう改修半ばの古民家に行く回数は雪が降る度に目減りし、白と黒のホルスタイン柄のネコに会うこともなく淡々と冬が過ぎていった。
この町は凍える冬が終わると、突然春が来る。
気だるく、気を抜くとボーッしてしまう流暢なユルい時間はない。季節スイッチを誰かがバチンッ!と切り替える。
山や街路樹の芽吹き勢いは凄まじく、他の追随を許さない生命力は力任せにこちらに春を押し付けてくる。若葉はより青く、菜の花の黄色は黄金色に揺らめく。タンポポのオレンジは主役さながらの発色になる。
とにかく植物たちのザワつきがうるさいくらいだ。
そうして春が来て、重い腰を上げて向かった久方ぶりの古民家はすっかり雪がとけ、ふきのとうがふっくらと空を見上げていた。ふと感じた視線の先には冬に食べ過ぎて丸々と太った私と同じ体型のぷくぷく艶やかな毛をまとった、あの黒白のネコの背中が見えた。
「春、来たね。」
思わず声をかけた。
それは春風に多少浮き足だっていたからだろう。
白黒のネコは5秒間振り返った後、また適当な板でガリガリと爪を磨いて、古民家の前をのっしり歩いて過ぎていく。
ネコの先にあるのは山である。
野良か飼い猫か、艶やかな毛並みは飼い猫のようだが、目ヤニの具合は野良だ。
この集落には他にも何件か人が住んでいるから、もしかしたら、とっかえひっかえ飼い主を変えて生きているのかも知れない。
ネコの歩く先にある山に私は入った事がない。
あのネコは私が知らない会津の山を相手に何をして暮らしているのか興味がわいた。
つづく