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私の琉球古典音楽「かぎやで風節」と罰金7000円

いつもの仕事の帰り道、信号機のないT字路に差し掛かった。この場所は一時停止を監視しているパトカーがよく止まっていることがあるので、特に気をつけてピタッと止まる習慣がついていた。
はずだった。
その日に限って減速で満足した結末は、けたたましいホイッスルが鳴り響いた。

一時停止無視の罰金は7000円。

運転中、ついつい三線の歌の練習に集中してしまった。三線を始めてからというもの、運転中は絶好の歌の練習時間と化していた矢先の出来事だった。

その日も帰宅中の車中で、三線の師匠である山内昌也先生のCDを流しながら琉球古典音楽の「かぎやで風節(かじゃでぃふうぶし)」の歌の練習をしていた。このかぎやで風節は沖縄のおめでたい席では定番の曲で、3月4日の三線の日には正午から20時までの間、1時間毎に演奏するというイベントも行われるほど超超有名な曲なのだ。
しかし、とにかくクセがすごくて三線初心者にとっては非常に取っ付きにくい。
琉球古典音楽は三線のリズムも比較的ゆっくりだが、歌はもっとゆっくり歌う事がある。

「今日のうれしさは何に例えられるだろうか、蕾のままだった花に露が付いて花が開いたようだ。」という歌詞を約4分かけてじっくり歌い上げる。

連続して息を吐きながら歌うから、あくびは連発、副交感神経が刺激されるためなのか眠くなる。
しかも、歌の間合いや独特の抑揚がむつかしさに拍車をかける。
しかし、むつかしいほど負けず嫌いに火が付き、完全マスターに向けて猛特訓中だった。

そして見事に捕まり、素直に7000円お支払申し上げた。

私はいつもかぎやで風節を演奏する時には、7000円のもとを取らなければ完全マスターではないのだと自分を鼓舞して古典と向き合っている。