久米島紀行⑧球美の島、沖縄みその世界
沖縄は味噌がおいしい。
沖縄の味噌は本土で一般的な大豆味噌や、麦を使った麦味噌、イナムルチーという汁物を作る時に使う、見た目は白味噌だが甘味が強いイナムルチー用味噌などがある。
豚の三枚肉を炒め砂糖と味噌で甘しょっぱく煮込み練り上げた油みそは野菜炒めの味付けに使うと、立派なご飯のお供になる。簡単で便利、しかも旨いので、ついつい頼りにしてしまう我が家の定番メニューとなった。
そして、味噌と言えば、沖縄の食堂では定番のみそ汁。手のひらを広げても足りぬほどの口を開けたどんぶりに、なみなみとみそ汁を付けて、それをおかずに白米を食べる。みそ汁定食と言えば分かりやすいだろう。
レタス、ニンジン、玉ねぎ、青菜、豆腐、ランチョンミートなどがゴソッと入り、どんぶりの中央には生卵が輝く。栄養バランス抜群の食堂メニューだ。
久米島を訪れ、沖縄に味噌の世界があると知った。
地元のスーパーには沖縄県内の味噌がずらりと並び、久米島のお土産と言えば、みそクッキーがオススメだとガイドブックにも堂々と登場する。
味噌のコクがサクサクとしたクッキー生地に馴染んで、嫌みのない甘さがあとを引く。
一時期に流行った、無限キャベツならぬ無限みそクッキーである。
久米島の居酒屋たか家のランチで食べた、イナムルチーは、旅行中に、さんざんぱら飲み食いして疲れ始めた胃袋を優しく労ってくれた。
自宅でも作れるよと、オーナーのタツさんが教えてくれたので、早速その足でスーパーに駆け込み、イナムルチー用の味噌を買い求めた。
自宅で作ったイナムルチーは、たか家の足元にも及ばない。しかし、再現率はかなり高いイナムルチーが出来た。
残念ながらイナムルチー味噌は関東では簡単に手には入らない。仕方がないので、適当に買った白味噌にしょう油だの、砂糖で味付けしたイナムルチー風みそ汁を作り、わざと大きめのやちむんどんぶりにたっぷり注ぐ。
イナムルチーもどきにしては上々の出来栄え。一口すすって、白米を豪快に口にかきこむ。
すると見慣れた久米島の景色、久米島の空気が窓のすき間から細い帯になって現れては、スルっと私に巻き付いてきた。
沖縄味噌はいつでも私を魅了して止まない。