妊娠していないよ、に騙された経験


妊娠していると話が変わってくる状況が世の中にはあります。

お母さんだけでなく、これから生まれてくる子供の影響もあるし、
妊娠している痛みは、正常な痛みなので病気ではないんです。

なので、若い女性の患者さんには、妊娠の可能性について聞きますが、嘘をつかれたことがあります。
誰しも、言いたくないことがあるものです。

若い女性が、「お腹が痛くなった」と言ったらまず妊娠を考えねばなりません。
正確にいうと50代までは考えます。

研究医の頃2年間で、2000例以上救急外来をやりましたが、
高校生から中年の女性まで、該当する方は全員聞いてきました。
高校生の場合は、付き添いの両親を待合室に戻して、単独で質問しました。(そうでないと、本当のことを教えてくれないと思ったからです。)

救急科の大御所のセミナーを受けに行くと、
「妊娠の検査は、患者さんの同意など必要ない。検査の一環で、必要だから取るのだ。」
と教えられて、
それ以来は、全例妊娠反応の検査をとっていました。

なぜ妊娠を確認しないといけないかというと、

まず、胎児に影響のある検査をするかどうかの判断に迫られるからです。

お腹が痛い時に最もわかる検査は、CTという体を輪切りにする写真ですが、
これは放射線被曝が起こるので、器官形成期(胎児の体が形成される時期)に被曝してしまうと、障害の影響があります。

また、妊娠反応が陽性でも、正常に妊娠していない例、つまり異所性妊娠という病気があり、子宮の本来すべきところではなく、他のところで妊娠してしまう病気で、破裂して危険な状況になりえます。

検査を全例とるようになってからも、
依然として、「最近パートナーと性行為をしたか?」とききました。「妊娠の可能性はあるか?」だと、避妊したから可能性はないと答える人がいるからですね。コンドームの避妊率は100%ではありません。

3名の患者は問診で否定したのに、妊娠反応が強陽性の方がいました。
その中の1例は異所性妊娠だったと記憶しています。

僕の知り合いに、
絶対怒られることがわかっているのに
「やっていませんでした」と毎回正直にいう人がいます。

学校の宿題とかもそう答えてきたのでしょう。

でも、やっていないことを正直にいう人ってちょっと信頼感を感じます。

逆に、このケースのように、初対面の異性に、医療関係者とはいえど、隠したくなる気持ちがあるのもわかります。
これをいうと怒られるかもと躊躇してしまうんですね。

僕自身も、これを言ったらやばいと先読みして、回答を編集する傾向があります。

僕も女性なら、白衣の男性に真面目に質問されても、一夜限りの関係が頭によぎったとして、正直にいうかは怪しいですね。