場所さえわかれば多くの原因は特定可


医師が病気の種類を当てようとするとき、

症状や時系列の変化などから、病変が体のどこ組織にあるかに思いを巡らせていることが多いです。

参考にはならないかもしれませんが、ちょっと職業的な考え方みたいなものを紹介します。

例えば、お腹が痛いとなると、一般の方は腸が痛いと思うかもしれません。

でも、お腹の中には他にも様々な臓器が収納されており、それぞれで痛みの質が違ったりします。
よくやるのが、お腹を押してみたり、叩いてみたりして痛みが誘発できるかどうかです。

痛みがあれば少なくとも、お腹の中の臓器の病気によるものと考えています。

お腹の中の臓器の病気以外の痛みもあるのか、という疑問が浮かぶと思いますが、あります。

お腹は痛いのに、押しても痛くない場合があります。これは血管が詰まったりする病気の可能性が高いです。
(上腸間膜動脈血栓症など)

また、お腹の表面、詳しくいうと神経に沿った痛みの場合があり、これは、帯状疱疹だったりします。

他にも、お腹皮膚の神経が締め付けられる前皮神経絞扼症候群なんていうのもあります。

それぞれ、帯状疱疹は痛みの分布が神経の支配分布,
前皮神経絞扼症候群はCarnett's sign と言って腹筋に力を入れた時痛みが悪くなるかといった、見分け方がありますが、見分け方の元になっているのは、どこに病気があるか、つまり解剖学的な位置です。

これを特定するだけで、だいぶ絞られてくることがわかりますよね。

診察では少し大雑把ですが、画像だともっとわかります。

例えば、腎臓の周囲には膜で囲われており、どの膜で囲われたスペースから出てくるかで、病気の種類が、悪性リンパ腫から、良性腫瘍まで全然変わってきます。


https://遠隔画像診断.jp/archives/8149


例えば、膵臓の周りのスペースに病気があるとわかれば、腎臓癌では絶対ありません。
こんなふうにして絞っていきます。

でも、実は学生時代はこのように教えられたわけではなく、腎臓の周囲には、〇〇があって、△△があると言った形式で知識を入れていきました。

地図であらかじめ知らない街のイメージをつけるのと、目的地に時間通りに着くために最短距離で実際に歩くのとでは、理解が異なるでしょう。

現場に出てから、このような知識の配列を、現実に意味がある序列に並びなおして、頭の中に、別なフローチャートを作って記憶して使っているわけです。