【読んだ】 i(アイ) 西加奈子
おすすめ度 ★★★★★
はぁ〜、良い。なんで私、もっと早く西加奈子さんに出会ってなかったんだろう。早く読みたかった。できればリアルタイムで。
読み終わって、しばらく呆けてしまって、感想もあらすじも上手く書けなかった。これ以上ないほど中身が詰まっていて、何も書ける余地がない。
他の人はどう書いてるんだろう、と思ったら素晴らしい感想文を見つけた。
ほんとこの通り。言いたいこと全部これに書いてあります。おしまい。
というのは流石にひどいので、なにか書こう。
チクチクするような心理描写
主人公のアイは、とても繊細で思慮深くて、傷つきやすい。裕福で愛に溢れた家庭に育っているのに、悩んだり傷ついていること自体にも罪悪感を覚えてしまうほど。
そういえば、前回読んだ「うつくしい人」の主人公にも近いところがあった。
西さん自身がそういう面があるんだろう。そうじゃなきゃ、ここまで細かく胸がチクチクする心理描写はできないと思う。
ほんとに特別な言葉や独特の表現が目立つわけでもないのに、どうしてこんなに刺さる文章がかけるんだろう?すごい、としか言いようがない。
平和な日常を送る罪悪感
ストーリーの中に、世界で起きた痛ましいニュースがちょいちょい入ってくる。
アイは、高校生の頃から大きな事故や災害による死者の数を、ノートに書き記していて、そのノートに書かれているのかな?と思うような唐突な書き方で小説に織り込まれている。
悲しいニュースを目にするたびに、近いことは考える。
どんな酷いことが起きて、ショックを受けたとしても、日常は変わらない。
死、でなくても、例えばチョコレートが安価で買えることは、貧しい国の搾取や児童労働に繋がっているけれど、我が子がチョコを食べたいといえば買ってあげたくなる。
自分のしていることが、もしかしたら誰かの不幸や死に繋がっているかもしれなくても、自分の日常が変わらないことを優先している。たまに
私はアイほどに繊細ではないけれど、疑問や罪悪感を抱くことはある。
どうして自分は平穏でいられるんだろう?
そうでない人はどうしてそうでないんだろう?
アイは、少なくない金額の寄付もしているが、それでも苦しい気持ちは消えない。
悲しみを味わうしかない?
後半、アイに降りかかる苦しみや悲しみの描写は、読んでいるこっちも辛くて泣いてしまった。
私はそんな気持ちになったことがない。そんな不幸を味わったことがない。
ただ、それを単純にラッキーだと思えるほど厚かましくもいられない。罪悪感がある。アイのように。
結局は、存在を全否定したくなるほどの悲しみがないと、その罪悪感を手放すことはできないんだろうか?
アイほどではないけど、アイに共感する気持ちを、私はどうすればいいんだろう?
わからない。これはアイの物語だから。
自分のことは自分で考えるしかないのだ。
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