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【読んだ】ウルトラマンになった男

息子のために借りた本だけど

息子(小5)のウルトラマンブームが再燃している。
5歳のときにウルトラマンが大好きだったのだけれど、長らく去っていた。
しかし何かで円谷英二さんのドキュメンタリーをみたこと、去年上映されたシンウルトラマンを観たことで「やっぱりウルトラマンが好きだ!」と火がついたらしい。

5歳のときと違って「ウルトラマンになりたい」ではなく「円谷英二さんみたいになりたい」と制作側に想いを馳せるようになったのは成長か。
図書館で円谷プロに関する書籍を借りると一生懸命読んでいた。

これもその一つ。初代ウルトラマンのスーツアクター古谷敏さんが書いた本だ。

めちゃ泣けた

これはね、想定外にめっちゃ泣けました。
考えたこともなかった、ウルトラマンの中に入ってた人の苦労と苦悩に胸を掴まれた。

だって、初代ウルトラマンってもう伝説的なヒーローじゃないですか。
ゴジラに並んでシン〇〇が作られるくらいの存在ですよ。
その中に入った人はさぞかし選ばれしスーツアクターで誇りに思ってたんだろうと思ってたんです。

それがぜんぜん違う。

古谷さんは元々大部屋俳優で、なかなか目が出なかったそう。
仮面をかぶった主役なんて、俳優として恥だと初めは断ったのだそう。
スーツアクターなんて言葉すらない時代。初代だもん。

素顔を出さないことを条件にオファーを受けたけど、他の役者からは馬鹿にされ、顔を出せる隊員が羨ましくて仕方なかった(ウルトラマンが隊員に憧れるて!)

当時は通気性も視界も最悪なゴム製のスーツ。
数分のアクションで汗だく、なんども熱中症で倒れそうになって、スーツを脱ぐたびに吐いて吐いて、胃液しか出ない、体重も減り続ける。

体型がウルトラマンとして理想的という理由で抜擢されたから、アクションは専門外だし、普通に歩くだけでも汗だくになるスーツで飛んだり跳ねたり。
初回の撮影で飛び降りた先に釘があって踏み抜いたとか、爆発シーンでは火薬でやけどしたり、水を使うシーンでは何度も窒息しかけたり。読んでいて「ひぃっ」と声が出るシーンばかり。

今なら絶対できない危険な撮影をさせられて、身も心もボロボロになる様子がリアルに描かれている。
あぁ、なんて可哀想なウルトラマン。もうやめさせてあげて、と言いたくなる。

子供の夢のために

過酷な日々に何度も辞めたいと思ってきた古谷さん。
意を決して「今日こそ降板させてほしいと言おう」と、朝撮影現場に向かうバスに乗る。
そのとき、後ろに乗り込んできた小学生4人組が、大興奮でウルトラマンの話をしていた。

自分が演じていたウルトラマンが、どれだけ子どもたちにワクワクと感動を与えていたのか初めて知るシーン。めっちゃ泣く。思い出すだけで泣く!

昔から、子どもの夢に弱いのよ。ステージショーとかで手に変身グッズ持って、衣装着て目をキラキラさせる子どもたちが一生懸命「〇〇マーーーーン!」と叫ぶの見るだけで涙腺崩壊。

自分の辛さばかりを考えるんじゃなく、観てくれる子どもたちのことを考えよう!気持ちを改めてウルトラマンになる古谷さん。
くぅっカッコいい。超格好いい。

いつでも初めは手探りだ

その後、ウルトラマンが大人気になり、古谷さんも注目されてその後のウルトラセブンでは念願の隊員役になれた。しかし俳優としてはこれ以上伸びないと判断してセブン終了後に引退してしまう。
スーツアクターの元祖であり、レジェンド的な存在がこんなに切ないものだったなんてと感傷にひたってしまうような最後だ。

古谷さんはシン・ウルトラマンにもモーションキャプチャーのアクターとしてクレジットに名前が出ている。

対談記事を読んで、あぁよかったなぁ、こうして新しい作品にも呼んでもらえるほど愛されて。嬉しかっただろうなぁ、とほんわかした。

スーツアクターもそうだけど、撮影スタッフも初めての撮影は本当に手探りで、今読むとメチャクチャだ。夢もへったくれもないくらいひどい現場だ。でも、そのスタートがあったから今も子どもたちを魅了する作品がある。

特撮なんて全然興味なかったし、今みると当時の映像って本当に子供だましでちゃちい。
でも当時、限られた技術と予算の中で試行錯誤して、いい大人が何人も真剣に汗だくで作品を作り上げてきたことを思うと胸が熱くなる。
全ては子どもたちの夢のために。

まっすぐでジーンとくる、古谷敏さんの言葉はまさにヒーローで素敵だった。

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