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【読んだ】そういうふうにできている

おすすめ度 ★★★☆☆

さくらももこの妊娠・出産エッセイ

以前、さくらももこのエッセイに爆笑していた息子のために図書館で借りた。
妊娠・出産の本だとは知らずに。

残念ながら息子には共感ポイントがなさすぎて、読む気が起きなかったらしい。そんなわけで私が読んだ。

1994年に出産しているから、少し時代は感じる。
妊娠前に婦人科に行くのが女性だけとか、夫側の言い分にイラッとするところがある。
まあ30年近く前だから、時代が変わってよかったなと思おう。

便秘、ホルモンバランス、手術、入院と妊娠出産にまつわる話題が取り上げられているが、さくらももこ独特の表現が相変わらず面白い。

ちょっと哲学的

子供時代のエッセイよりも内省的な語りが多め。
哲学的というか、ちょっとスピリチュアルっぽいことも書いてある。
嫌な感じはしないけど、私はあまり興味がないのでフーンといった感じ。

ギャグを書いている一方で、難しい話題もちゃんと言語化できるところがすごいなぁ。

好きだったのは、我が子に対する愛情を冷静に分析しているところ。
別の個人として尊重しようという強い意志を感じた。

彼はまだ小さいという理由で、今は生きる術を知らない。だから私達は世話をしてやる。
”家族”という教室に”お腹”という通学路を通って転入生が来たようなものだ。(中略)お互いの絆は固く結ばれ、かけがえのないものになるとも思う。
だが、お互いに一個の個体なのだ。親とか子どもという呼び方は人間が便宜上関係を示すために作ったもので、個体にとっては無関係である。
私は”親だから”という理由でこの小さな生命に対して特権的な圧力をかけたり不用意な言葉で傷つけたりするようなことは決してしたくない

これは、産後1年ほどたった時の言葉だが、自分に対する戒めというか、誓いのような強さがある。

10年以上子育てをしてきた私も、同じように意識しているつもりだが、それでも日常の中で「うーるさーい!いいから黙ってやりなさい!!」みたいな気持ちになることはあるし、それ以上の「特権的な圧力」に該当する発言をした記憶もある。

さくらももこさんは2018年に亡くなっているので、息子さんは24歳になっていたはずだ。
完全な想像だけど、子育て中に何度かこの本を見直して、この時の気持を思い出してたんじゃないだろうか。

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