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『ももこのいきもの図鑑』さくらももこ 「まるで芸人のエピソードトーク」と、新しい視点で

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『ももこのいきもの図鑑』さくらももこ

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○以下会話

■「好きなエッセイ作家」になりうる存在

 「笑える文章か。そうだな、そしたらさくらももこの『ももこのいきもの図鑑』がオススメかな。さくらももこは文章がめちゃくちゃ上手だから、彼女のエッセイは本当に面白いんだ。

同じ作家さんの小説を読んで「あれは面白かったけど、これはあんまり面白くなかったな」って思った経験ない?小説は設定とか世界観をまるっきり変えられるから、どうしても「自分に合わない」作品が出てくるんだよね。でもエッセイは、作家の日々の体験から、人となりを表現した文章だから、一度その作家を好きになると、どのエッセイも面白く読めちゃうんだよね。だから、一人好きなエッセイ作家を見つけたら、他の作品も読んでみると良いよ。そして、さくらももこはきっと皆の「好きなエッセイ作家」になりうる存在なんだよね。

■まるで芸人のエピソードトーク

『ももこのいきもの図鑑』は、さくらももこの独断と偏見で書かれた生き物図鑑なんだ。アオムシから始まって、ヒヨコ、ショウジョウバエ、コアラなど約40種類のいきものについて、さくらももこ自身が体験した、そのいきもの達とのエピソードを語るエッセイなんだよ。

約40種類のいきものについてそれぞれの思い出を語っているから、一つ一つのエッセイは2、3ページの短い文章になっていて、本が苦手でもスラスラと読めるんだ。

そしてこのエッセイは、さくらももこの「執筆家」と「コメディ漫画家」としての能力をありありと感じられる作品なんだよ。というのも、テーマを「いきもの」に絞って40ものエッセイを書くことって想像するよりも難しいことなんだ。この能力は、まさにバラエティ番組で雛壇に座る芸人さんが「エピソードトーク」を話す能力と同じなんだよね。

決まったテーマでエッセイを書くことと、司会者に「タクシーでなんかおもろい話あるか?」って振られて、変な運転手の話とかを面白く話すことは、全く一緒のことなんだ。テーマは自分で選んでいるにしても、カメとかアユとかラクダとか、色んな生き物との「すべらない話」を短くわかりやすく伝えてる。これは学生時代に「現代の清少納言」と謳われた並外れた文章能力と、『ちびまる子ちゃん』という国民的アニメを作ったユーモアさを兼ね備えた、さくらももこだからできる諸行だよ。

ジャンルは違うけど、又吉直樹の『東京百景』も、又吉さんが好きな東京の百ヶ所の風景とそこでのエピソードを書いたエッセイで、相当面白いんだ。又吉さんは芸人で芥川賞作家だよね。さくらももこも又吉直樹もどちらも、文章力とユーモアさを兼ね備えてるよね。さくらももこはメディアにあまり出なかったけど、芥川賞作家の羽田圭介さんみたいに、バラエティ番組でも十分活躍できたんじゃないかな。

■冬眠するカメ

僕が好きなエピソードは「カメ」かな。さくらももこは、小さい頃からなぜだかカメが好きで、カメの姿を見かけるたびにワクワクしていたらしいんだ。「こんなにワクワクするなら飼ってみよう」と思って、中学の夏に一匹のクサガメを買ったんだ。餌をあげたり、晴れてる日に外に出したり、カメが身近にいる生活をワクワクしながら過ごしていたんだよ。カメとの楽しい夏がすぎて、季節が涼しくなってくると、カメの動きが鈍くなってきたんだ。「冬眠するのだろう」と思って、ちょっかい出すのをやめて、水槽の横を通る度にチラッと動かぬカメを見て微笑んでいたんだよ。冬が過ぎて、3月になって、4月になって、5月になっても、カメはそのまま動かなかったんだ。さすがにおかしいと思って調べてみたら死んでいたんだ。図鑑で調べると、飼育環境の温度が高いと冬眠中でも胃袋が活動して餓死することがあると書かれていたんだよ。そして、

私はいつから死んだカメを見ては微笑んでいたのであろう。気の毒な事をした。こうして私の”わくわく”は終わったのだ。

といって終わるんだ。

それなりに微笑ましい思い出なのに、ちゃんとオチがついていて上手だよね。このクオリティのエピソードがずらっと並んでいるんだよ。すごいよね。

『ももこのいきもの図鑑』は、さくらももこの生き物に対する愛情が溢れた、優しくて愉快なエッセイだから、きっと楽しめると思うよ。是非読んでみて。」


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