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【読んだ】アハメドくんのいのちのリレー

おすすめ度 ★★★★☆

息子用に借りた児童書。
今のパレスチナとイスラエルの情勢について、きちんと説明できる自信がなかったから、本に頼ってみた。
しばらく読む気配がなかったけど、ふと手に取ったら止まらなくなったらしい、一気に読んでいた。

「ちょっと衝撃が強すぎて、食欲でない…」と放心気味になるほど、ショックが大きかったらしい。
主人公のアハメドくんが、めっちゃいい子なのに、いきなり死んじゃうんだ、という。

私もまだ読んでいなかったので、えっ!!そういう話なん?と驚いて、読んでみた。
息子の言う通り、アハメドくんはとてもいい子で、そして銃で打たれて脳死状態になる。イスラエルによる誤射で。
アハメドくんのお父さんイスマイルは、悲しみに暮れるが、アハメドくんの臓器をイスラエルの病気の子どもたちのために移植することを承諾する。

後半では、著者がそのニュースを知って、なんとかお父さん本人に話を聞いてみたい、アハメドくんのことを世の中に知らせたいと奮闘する様子が描かれる。
お父さんの想い、パレスチナやイスラエルの人たちの反応、臓器移植を受けて命が助かった家族との交流…
どれも考えさせられる。

「臓器提供は平和を望む我々のシグナルだ」とイスマイルさんは言う。

息子をイスラエル兵に撃たれた。
にもかかわらず…
愛する我が子の臓器をイスラエルの病気の子どもに与え、いのちを救ったパレスチナ人のお父さん。
この「にもかかわらず」が、閉塞した世界を変えるのではないか。
困難の中で生き抜くヒントが隠れているような気がした。

悲しみや憎しみを超えて、人と人とは繋がれるはずだ、という希望を託して本のお話は終わる。
本が出版されたのは2011年。

イスマイルお父さんは、きっと本が出版された後もずっと、ずっと平和を願い活動してきたんだろう。
だけど、12年たってニュースで流れてくる現状は凄惨なものだ。
アハメドくんのように理不尽な目に合う子どもたちが、連日報道されていて、心が痛む。
どうしてこうなってしまうんだろう。
イスマイルお父さんは今どんな想いでいるんだろう。


話はわかりやすいが、読み仮名が全部振ってあるわけではないので、小学校中〜高学年向けだと思う。
イスラエルとパレスチナの紛争の経緯もわかりやすく書かれているし、どちらかを悪者にするような偏りも感じないので、子どもに読ませるにもちょうどいい。

今、読むことはむしろ虚しさを感じることになるかもしれない。
けど、読んでよかった。希望を捨てたくない。

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