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【読んだ】はてしない物語

大人になって子どもの頃好きだった本を読むシリーズ第二弾。
25年ぶりくらいに読みました。
(ネタバレ含みます)

宝物みたいな本

なにかの広報誌におすすめ本特集があったので、子どもと一緒に見ていたら、「はてしない物語」が紹介されていた。

表紙を見た瞬間に、この本を買ってもらったときの興奮が蘇った。
親戚の叔父さんが本屋のオーナーをやっていて、会うたびに本屋に連れて行ってくれて、好きな本を1つ買ってくれた。
たまにしか会えないけど、そのたびに大興奮だった。
小6のころ、私が選んだのが「はてしない物語」だった。

昔の外国の図書館にあるような布張りの分厚い本。中もシックな二色刷りになっていて、字も小さいけどなんかかっこよくて、挿絵もちょっと怖い。
何しろ3,000円する本なんてそうそう買ってもらえるものじゃない。(当時も同じ値段だったはず。消費税は違ったけど)
ドキドキしながらページをめくった。

中身ぜんっぜん覚えてない

その興奮を我が子に語ったら「へーおれも読んでみたい」という。しめしめ、君がよむというなら仕方ない。お母さんがポチしてあげよう。

息子を口実に、今度は自分のお金で買った。どや。
内容は同じでも、単行本じゃダメなのだ。この本はハードカバーで布張りで、あかがね色のこの表紙じゃなくちゃダメなのだ。

息子には「どんな話なの?」と聞かれたが、正直なところあんまり内容を覚えていなかった。
主人公がいじめられっ子で古本屋であかがね色の本に出会うこと、などの導入部分は覚えていたけど、肝心の内容をすっかり忘れている。
ファンタジーだったのは覚えてる、最後どうなるんだっけな?あれ、私最後までちゃんと読んだっけ?分厚い本だったからな…

そもそもファンタジー系は苦手な分野である。魔法とかSFとか。すごく大切な本だったのは覚えてるけど、好きな物語ではなかったのかな?

記憶の扉ばんばん開いた

本が届いた。
息子は文字の小ささと挿絵の不気味さに尻込みしていたので、私が先に読ませてもらった。

導入部分は覚えていた。主人公の名前。怖い古本屋さん。学校の物置。
登場人物の名前やセリフが出てくるたびに、「あぁ!!覚えてる!幼ごころの君!!」と記憶の扉がばーーんと開いていく。
ファンタジー苦手な大人の私から、キラキラの夢の世界に生きていた子どもの私に戻っていく。たぶん、目もキラキラしていたはずだ。

そうだった。小学校6年生のとき私は「漫画イラストクラブ」にはいっていて、この「幼ごころの君」のイラストを一生懸命書いていた。
幼ごころの君は作品世界の女王的なキャラクターだ。
挿絵がほとんどない分、細かい描写がされていたので「白いドレスで、真っ白で長い髪で、儚げで。目はきっとこんな感じで…」とせっせと想像して描いた。昔の自分にきゅんとしてしまう。

「瞬間は、永遠です」というセリフがかっこよくて、そのセリフを言ってる姿も描いたなぁ。意味はわからなかったけど。懐かしくて泣きそう。

ページをめくるたびに開く記憶の扉。キラキラが扉から飛び出してきて世界が輝き出すようだった。なんて影響されやすいんだ、私は。

ラストの意味が今ならわかる

最後までスキマ時間をぬって一気に読んだ。2日くらいかかった。長い!

そして、当時の私が物語の後半をほとんど覚えていなかった理由がわかった。
意味がわかってなかったのだ。

主人公は後半、人間の世界から本の世界(ファンタージエン)にはいっていく。そこで世界をあらたに作っていく。彼が望むものはすべて本当になり、物語になっていく。万能の神だ。
でも、そのかわり彼は自分の記憶を一つずつ失っていく。例えば現実世界ではふとっちょで頭が悪かったこと、臆病でいじめられっ子だったこと。
子どもだったこと。物語を作るのが得意なこと、家族のこと、自分の名前まで。

人間の世界に戻る時は、とてもドラマチックで素敵な展開になっているのだが、当時の私は「だからなんだんだろう?」と思っていた。

主人公がいじめっ子にやり返したり、別人みたいにかっこよくなって学校の人気ものになる、そういうわかりやすい展開が小学生にとってのハッピーエンドだった。でも物語はそうではない。

静かに、父親や古本屋さんとの会話が展開される。そのままの自分を認め、愛することができるようになった主人公の姿が描かれている。

大人になって読むと、この展開の静かな美しさに感動できる。
ああ、主人公のバスチアンは変わったんだな、と理解できる。そして人生の物語は続いていくよね。うんうん。

ファンタジーとしては、小学生でも十分に楽しめる。
いろんなところに現実とファンタジーの境界が感じられる随所の工夫も、子供心をワクワクさせるのに十分だ。

でも、ラストは大人になってからやっとわかる内容だった。
人が成長していく姿、愛すること愛されること、エンデがきっと伝えたかったメッセージを受け取ることができた。

うん、大人になって子どもの頃好きだった本を読むシリーズ第二弾も大成功である。次は何を読もうかな。

補足:「はてしない物語」を原作にした「ネバーエンディング・ストーリー」という映画がある。見たことなかったのであらすじだけ見たら、まんま小学生のわたしが期待したような単純なラストになっているらしい。本から飛び出た竜に乗った主人公が、いじめっこにざまあみろ!する展開。エンデは怒って訴訟を起こしたそう。うん、わかる。そら怒るわ。


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