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【読んだ】14歳からわかる生命倫理

おすすめ度 ★★★☆☆

「14歳からわかる」と書いてあるが、大人の私でも答えが出せない難しい問題だった。
生命倫理。

「臓器移植」「安楽死・尊厳死」「出生前診断」「優生保護法」など、生命を巡る問題について書かれている。
それぞれに歴史的な背景や海外の事例、多角的な視点での情報が盛り込まれている。これ、14歳にわかるの?というレベルの内容だ。

序章にはこんなふうに書かれている。

そんな報道の締めに、必ずと行っていいほど使われる言葉がある。
「私達の、生命倫理が問われています。」という言葉だ。
たしかにそうだ。しかしそれは何か言っているようで何も言っていないに等しい言葉ではないだろうか。
直訳すれば「ちょっと難しすぎて、もうお手上げなんだけど」ってことだ。

ほんと、そのとおり。難しすぎて、お手上げしたくなる。


最近、「コウノドリ」という医療漫画を読んでいる。

ドラマにもなったので有名だけど、ここにも出生前診断や、同性カップルの出産、医療ケア児の問題などが出てくる。
生命倫理って難しいなーもっと勉強してみよう!と今回の本を借りてみたのだが、余計に難しくなった。

特に出生前診断について。
マンガの方は産科医と妊婦にフォーカスしている。
最初は「出生前診断は命の選別だ」と批判するキャラを出しつつ、そんな単純な話ではなく、親にとっても医師にとっても判断が難しいことを描く。遺伝カウンセリングの現状なども丁寧に描かれている。

本の方は、生まれてくる子どもの命にフォーカスを置いている。
出生前診断のニュースをみて、ダウン症の子どもが「自分は生まれてこないほうが良かったの?」と発言した話。
また出生前診断が一般的な国では、障害を持った赤ちゃんへの治療ができる医師が減ってしまう問題にも触れている。

といって、必ず産むべきと言うわけではない。親の負担の重さや、社会の偏見など様々な事情に言及している。

ほんとに、事情が様々すぎてこんがらがってくる。正解がなさすぎて。


すべての問いにおいて、正解がない。
例えば、私は脳死判定後の臓器移植に賛成だったけれど、脳死判定後に機能回復した少年の話なんか読むと「ムムム…」ってなるし
尊厳死にも肯定的だったけれど、優生思想との関わりや、ALS患者の呼吸器判断の難しさなどを知ると、やはり頭を抱えてしまう。

本当は「生きたい」と思っている人が、「迷惑なのでは」と考えて死を選ばざるを得ないなんて、やっぱりどう考えても切なすぎる。
自分の大切な人には、決してそんなふうに思ってもらいたくない。
「そんな身体になってまで生きたくない」
そう思うのは勝手だ。
だけど、それは絶対に人には強要してはいけないことだと思うのだ。

結局、最後まで読んでも何一つ答えが出せないままだった。
知れば知るほど、これまで考えたこともなかった問題を突きつけられている気持ちになる。

普段、この問題に出会うことはなかなかないけれど、無知のままでいいわけではない。それこそよく知らないまま、メディアの風潮なんかで簡単に判断したら危険だ。

いやぁ、でもこれは本当にね。
14歳どころかいくつになってもわかる気がしない。10年おきに読んだらその度に(死に近づくにつれて)感想が変わる気もする。

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