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【読んだ】人間はだまされる―フェイクニュースを見分けるには

おすすめ度 ★★★☆☆

小5息子が国語で「想像力のスイッチを入れよう」という教材をやっています。超面白かったらしく、珍しく色々話してくれました。(普段勉強のことなど全然話さない)

内容はメディアとの付き合い方について。
メディアの情報を鵜呑みにせず想像力を働かせよう、的なお話だったんですが、今の小学生はこんなことも学ぶのね。

というわけで、これを図書館で借りてみました。
10代からとあったけど中学生くらいに丁度いいかな。
息子にはまだ少し難しいかも。まだ彼、読んでません。

メディアリテラシーの基礎として

デジタルネイティブな今の子ども達は、メディアとの関わり方が根本的に私世代と違うと思います。
情報源が少ない時代も知っている自分の世代と違って、子ども達は生まれた頃から大量の情報に囲まれています

タブレットもスマホも、未就学の頃から使いこなせるのが大多数になっているそう。
常に情報の洪水にいることが当たり前だと、何が真実か?を深く考える暇なんて無いんじゃないか。
注意深く見るなんてめんどくさいって思っちゃいそう。
それはとても危険なんだけど、親から子に伝えるのは難しい。

本では、実際にあった事件やニュースを交えて、その危険性をわかりやすく学ぶことができます。

コーヒー1杯2億9千万円

一つの例として、米国で起きた裁判の話を書きます。

熱すぎるコーヒーをこぼして大やけどを負った責任は、コーヒーを売ったマクドナルドにあるとして、290万ドルの損害賠償支払いが命じられたという裁判。
訴えたのは81歳の女性で、コーヒーを膝の間にはさみ、ふたを外そうとしてこぼして足に大やけどを負ったそう。

これを聞いて、私は「やっぱりアメリカは何でも裁判にするんやなぁ。こんな屁理屈こねて大金とるなんて強欲な婆ちゃんだわ」と思いました。

しかし、20年近く後に報道されたドキュメンタリーによると、全く異なる見解が生まれます。

・当初マクドナルドは治療費として800ドルしか出そうとしなかった
(実際の治療費は1万ドル超え)
・マクドナルドはマニュアルで火傷するほど熱い温度を決めており、これまでに700件以上の火傷の苦情が来ていたにもかかわらず、改善策を取らなかった
・裁判の際も、マクドナルドは火傷事故の件数は統計学的に大したことはないとして反論した
・賠償金額はマクドナルドの売上2日分とされたため、290万ドルになった
・さらに48万ドルまで減額されたのち、最終的に両者が非公開の金額で和解した
・訴えた女性は、仕事を退職したばかりの元気なおばあさんだった
・車の中で、砂糖を入れるために蓋を開けようとして大やけどを負った(車は停車していた)
・女性は「強欲なおばあさん」というレッテルを貼られ、失意のうちに亡くなった

疑いたいものしか疑ってない

うわーーー、こわ。

自分も全然注意深くニュース見てないじゃん。
子どもに「ニュースやSNSが真実とは限らない。疑ってかかれ」と言ってたくせに、まんまと自分も先入観に縛られて、おばあさんに批判的な視点で読んでいました。

そう考えると、私が疑いを持って考えるニュースって、政治経済・世界情勢・環境問題など、もともと賛否両論が分かれてて偏向報道されやすい分野ばかりでした。

しかもそれも、自分の考えに似ている意見は「でしょでしょ、やっぱりそうだよね!」という視点で見がちだし、反対意見は「それってあなたの感想ですよね?」って穿った視点を持ちがち。

結局、信じたいものを信じる、見たいものしか見ない、と同じです。
疑いたいものだけ疑ってた。

人は自分に騙される

今回でいうと、海外の裁判という内心どうでもいい程度のニュースだったから、注意深く見るなんてめんどくさくてやってなかったんだと思います。

あら、さっき息子に警鐘を鳴らすために書いたことを自分でもやってたじゃんね。あかんやん、わたし。

どんな小さなニュースでも、というのは難しいのかもしれないけど
自分の判断なんて信頼できるもんじゃないなと反省しました。

だまされる、というと悪質なフェイクニュースを思い浮かべるんですが、どんなニュースにもかならず偏りはあって、知らないうちに自分も傾いてるってことはあると思います。

自分の意志や判断を「正しい」と思って、脊髄反射的に「正しくないもの」を攻撃してしまうかもしれない。

大事なのは、「自分が正しい」と簡単に信じないことなのかも。
矛盾するようだけど、濁流のような情報の渦の中で、自分を保つには自分に騙されないことが大切なのかなと思った一冊でした。



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