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【読んだ】シングルマザー、その後

おすすめ度 ★★★☆☆

重い。タイトルから、重そうだとはわかっていたけど、読むほどに暗鬱な気持ちになった。
暗鬱に耐性がある人、暗鬱になっても現実を知りたい人にはおすすめ。

私は数年前に仕事で、シングルマザーの現状を調べたことがある。当時もショックを受けたが、今回も何度か耐えられなくなって休憩しながら読んだ。
子育て当事者が終わっても報われない現実。どこにも救いがなくて、何も知らなかった自分にもショックを受ける。


さわりだけ紹介すると…
日本のシングルマザーの就労率・時間は先進国ダントツでトップだが、貧困率もトップだ。
つまり、長時間働いているのに、貯金どころか生活していくのもやっとの収入しか得られない。
さらに近年、収入が増えればその分手当を減らされ、トータルの収入が増えない仕組みに改悪された。
ひとり親になった理由が離別の場合、ほぼすべての支援が子どもが18歳になると打ち切られるため、大学進学率も低く、貧困の連鎖を生んでいる。
(死別の場合は遺族年金など支援がある。ひとり親になる理由で支援に差があるのは日本くらいらしい)

「何この国、ひどい…引くわ…」の連続だ。


国の構造的欠陥についても言及している。

詳しくは本を読んでほしいのだけど、要は「日本の女性は、家庭でケア要員をすること」を前提に仕組みが作られている。
例えば第三号被保険者。妻として扶養されていれば税制上優遇される。
働いたとしても家計補助的な仕事でOKでしょという考えのもと、正規雇用が極端に少なく、非正規雇用に偏ってしまう。

この仕組みはひとり親に限らず、すべての女性に失礼な仕組みだという。
つまり根底に「育児や介護の支援を女にさせておけば、国が福祉に金を回さなくて済む」という考えから来ているのだと。
そう言われると、確かにそうだ。ムカついてきた。
この辺りは、読めば読むほど政治に怒りが湧いてくるので、読む人注意である。(客観的でない箇所も多々あるので、「ん?」と思う所も多い。著者が当事者だからこその熱量だが、好みは分かれると思う)


国際比較として登場する、フランスと韓国の事例にも驚かされる。
なんとなくヨーロッパは進んでいるイメージがあったが、お隣韓国がこんなに進んでるなんて、著者も調べて驚いたという。

韓国は、1980年代に日本をお手本にひとり親支援策を作ってきたらしいのだけど、いつのまにか追いつき追い越され、今では遥か先にいる。

韓国がなぜ一気に変わったか、理由はいくつか述べられていたが、女性の意識改革、エンパワメントの強さが大きいという。
ひとり親に対する福祉の問題だけでなく、もっと広く、女性の人権や労働者の権利という視点が強い。
日本以上に抑圧が強く、民主化も遅かったからこその強さなのかもしれない。

戦って勝ち取ったのだ。


戦わなければ勝てない、という某マンガのセリフが聞こえてくるようだ。
韓国の女性すごいなぁと思う。
でも、戦うのは好きじゃない。
でも、声を上げなければいけないんだろうな。でもでもの無限ループ。

「みんな大変なんだから。財源は限られてるんだから。もっと苦労してる人だっているんだから。」
そうやって押さえつけようとしてくる人達に黙っていたら、いつまでも何も変わらない。

でも選挙や署名、SNS以外に、私のようなのんびりボンヤリ生きてる人にできることってあるんだろうか。
それとも、いつか限界が来て私達も立ち上がる時が来るんだろうか。

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