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【読書記録】人生を面白くする 本物の教養

おすすめ度 ★★★☆☆

ライフネット生命創業者の出口治明さんの著書。
もともとすごそうな人だと思っていたけれど、タイトル通り教養の深さと広さを感じる本だった。

コスパが良すぎて

前半は、出口さん流の教養について語られている。本・人・旅の3つが重要で、それぞれ自分の体験を踏まえて教養をどう身につけるか論じている。

2015年初版なので少し古さは感じるものの、それぞれに「はぁーなるほどねー」と思うし、出口さんがすごいことは十二分にわかる。
わかるのだけど、普段本を読まない人がこれを読んで行動に移せるかは微妙だと思った。
おそらくこの本のターゲットはビジネスマンだろう。でも、この本がうまくまとまりすぎているがゆえに、一冊読むとなんとなく教養が深まった気分になる。それで結局「まぁ出口さんほどすごい人にはなれないけど、参考になったな」で満足して終わりそう。

忙しいビジネスマンは本を読むヒマがない、だからコスパよく分かりやすい本を読む。だけどそれは教養といえるんだろうか?
この1年、たくさん本を読んできて思うのは、教養って積み重ねだということだ。本から直接得た学びは点でしかないけど、たくさん読んで考えていくうちに繋がりが見えてくる。
出口さんの本の読み方も、人との関わりも、旅の仕方もコスパとは対極にある。だけど、この本自体がコスパが良すぎて一冊で満足してしまう。
矛盾を抱えてるなぁと思った。

とはいえ学びが多い

とはいえ学びが多いので、良いと思ったところを備忘録。

◯西洋のリベラルアーツの概念=人間を自由にする7つの学問
「算術」「幾何」「天文学」「音楽」「文法学」「修辞学」「論理学」

◯チベット・中国の国情
スイカの価格から現地にいかないとわからない国情が見えてくる話。ただし90年代の話なので、今とは違いそう。何事も自分で判断するのが大切。

◯社会保障制度
制度が作られた1961年は、働く人11人で高齢者1人を5年間養うモデルだった。現代に合わせたモデルに変える必要がある。
世代間の不平等を声高に叫ぶ前に、現実的にできることを考えるべき。

◯時事問題は「本音はなにか」「動機はなにか」で考える
表面的な枝葉がニュースになりがち。本質を捉えるには「この問題は何が本音で、どんな動機(原因)で起こっているか」を考えるのが大切。

◯ナショナリズムと愛国心
ルカーチ「歴史学の将来」の中で「ナショナリズムとは、劣等感と不義の関係を結んだ愛国心である」という言葉が紹介されている。愛国心は生まれた土地に愛着を抱く自然な感情だが、劣等感と結びつくと排他的になり、攻撃的になる。それがナショナリズム。確かに。

自分で考えるのが苦手

出口さんは「日本のリーダー層は、諸外国と比べて社会に対する関心や理解が浅く、他人事に感じているように思える」と述べていた。
この前読んだ「学校ってなんだ!」でも、日本の若者は社会に対する当事者意識が低いことが指摘されていた。

主語が大きくなったけど、確かに周りをみても割と得心がいく。
会社員が税金や社会保障のことをほとんど知らず「そんなこと知っても手取りが増えるわけでもないし」といったり。テレビに向かって悪口を言う割に、選挙にいかなかったり。「投票したところでなにか変わるわけでもないし」。
社会に対する無気力、無抵抗感は強いと思う。

上が決めたことに黙って従うべき、和を乱す意見を言うべきではない、が染み付いているのは、やっぱり教育の影響だと思う。
学校だけでなく、親や社会から受けとる教育すべて。

私自身、社会問題にたいして自分なりの意見があるかと言われると難しい。ネットの意見も参考にしたくなるし、同じ意見の人がいると嬉しい。「みんな同じ」ことに安心感を覚える心理が自分にもあるのだと感じる。

簡単に変えられない。自分なりの考えを持ち、表現するには、訓練がいるんだろう。
子どもにも伝えたいし、自分もできるようになりたい。

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