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【ちょっぴり暖かくなる童話】たぬきの恩返し


画像:いらすとや

『たぬきの恩返し』 童話でHappy♪その5 

♢1♢

むかしむかし、山の深いところにある森の中に、年老いたタヌキが住んでいました。

タヌキは若いころ、人間が仕掛けた罠につかまり、命を失いそうになったことがありました。

その時、男の人がとおりかかり、かわいそうだ、と助けてくれました。

男の人はおばあさんと二人で暮らしていました。
男の人はおばあさんの息子さんのようで、二人は、いつも優しそうな笑顔で暮らしていました。

タヌキは、その家のそばに住み、家や畑に、悪さをしようとする、イノシシやキツネを体をはって追い返すようになりました。

そうして何年かたった後、その男の人は、病気で亡くなってしまいました。

タヌキは悲しみましたが、それ以上に、息子を失ったおばあさんは悲しみ、すっかり元気がなくなってしまいました。

ずっと落ち込むような日々が続きました。

若かったタヌキも、いつしか年をとっていました。
そろそろあの世へ旅立つ日が近いことが、自分でも分かります。

タヌキは神さまにお願いしました。

「死んでしまう、一週間前に、どうか男の人の姿に変えてください」

タヌキは、一週間でいいので、お婆さんを元気づけたいと思ったのでした。

♢2♢

ある日、タヌキは目覚めると、手にも足にも毛が生えておらず、人間の着物まで着ていました。

自分が人間の姿になったことに気付いたタヌキは、

「神さま、ありがとうございます」

と、神さまに感謝しました。

タヌキは、早速、おばあさんの家に行きました。

「おばあさん、こんにちは。私は、庭師です。これから一週間、無料で庭の手入れをさせていただきます」

タヌキがそう言うと、おばあさんはしわくちゃな顔が、もっとしわくちゃになるほどの笑顔になり、

「まぁ、なんてありがたい話だろうね、息子が死んでからというもの、庭の手入れができなくて」

ありがたい、ありがたい、と手を合わせてタヌキに感謝しました。

タヌキは一生懸命、庭の手入れをしました。

ちょっと一休みをしていると、おばあさんがお茶と漬物を持って、休んでいるタヌキの側に座り、一緒にお話しをしました。

息子さんの話、おじいさんの話、そしてこの森の話。
タヌキが一休みするたびに、おばあさんは嬉しそうに、しわくちゃな笑顔を浮かべて、話しました。

おばあさんは、ずっと1人でいたので、話し相手ができてよっぽど嬉しかったのでしょう。

タヌキも庭仕事をしながら、休み時間になると、おばあさんの話を相槌をうちながら楽しく聞きました。

♢3♢

一日が終わり、次の日、次の日と日は過ぎて行き、あっという間に、一週間がたってしまいました。

タヌキが人間でいられるのは、今日が最後です。
そしてそれは、タヌキの命が終わることも意味しています。

タヌキはその日の庭仕事を終えたあと、おばあさんに言いました。

「おばあさん、今日で、ボクの仕事は終わりです」

「おやおや、もう一週間がたっちまったのかのぉ」

おばあさんは、とても悲しい表情になりました。

タヌキは優しい口調でいいました。

「おばあさん、この一週間、私はおばあさんと話しができて、とても楽しませていただきました」

「わしも、楽しかったよ、息子が戻って来たみたいじゃった」

と、おばあさんは言ったあと、

「また、ちょくちょく遊びに来てくれんかのぉ」

タヌキは、少し驚いた表情になりましたが、

「ごめんなさい、もう、ここには来れないのです」

と、言ったあとで、

「実は、私は、ずっと前、あなたの息子さんに助けられたタヌキなのです」

「え?」

おばあさんは、キョトン、とした表情をしました。

「だましていてゴメンナサイ!」

タヌキは頭を深々と下げて謝りました。

するとおばあさんは、優しい口調で言いました。

「おやまぁ、なんであんたが謝るんだい、あんたが誰だろうと、わしはあんたに感謝しているよ、ありがとう」

と、地面に座り、両手をついて深々とお辞儀をしました。

タヌキは慌てて、おばあさんの体に手をやり、

「おばあさん、体を起こしてください」

と言いました。

そして、

「神さまに頼んだのです。死んでしまう一週間前に、人間の姿にしてくださいと。そして今日がその約束の日です」

「なんと、そうじゃったか、そうじゃったか」

と、おばあさんは顔をくしゃくしゃにして、目からは涙が、ぼろぼろとこぼれ落ちました。

「おばあさん、どうか、お元気で」

タヌキはそう言うと、立ち上がりました。

立ち去ろうとしているタヌキに、おばあさんは声をかけました。

「すぐに、あの世で、会えるだろうよ」

驚いてタヌキは振り向くと、おばあさんのしわくちゃなステキな笑顔がそこにありました。

タヌキは、なにも言わず、とびっきりの笑顔を返して、おばあさんの家をあとにしました。

帰り道、おばあさんと息子さんとの再会を想像して、タヌキは楽しい気分になりました。

おしまい。
 

元のお話
福娘童話集『タヌキの糸車』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/03/03.htm
 


#創作童話 #私の作品紹介  

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