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【毎週ショートショートnote(壁持ち強襲女)】[軽くなった壁]

↑↑コチラのお題【壁持ち強襲女】に参加してみました。
いくらなんでも、このお題は〜😅

画像: illustB/illustAC


[軽くなった壁]

 壁があった方が楽だ。
 コロナ全盛の時は良かった。
 そこら中に壁があったから。
 その壁も取り払われてしまった。
 だから私は、自分で壁を持つようにした。
 これで安心だ。
 どこへでも行ける。
 どこまでも行ける。
 悪口を言う奴の前にも、陰口を言う奴の前にも。
 話しかけても無視するやつの前にも。
 行ける。
 突進できる。
 壁があれば、強襲できるんだ。
 だから、私には壁が必要なんだ。
 だから、私は壁を持ち歩く。
 だれが、なんと言おうと壁を持ち歩く。

「ねぇ、ママー、あのお姉ちゃん、カベ持ってるよ」

 なんと言われようと、

「ねぇ、ねぇ、お姉ちゃん」

 誰に言われようと、

「なんで、カベ、持ってるの?」

 子どもの質問なんて気にしない、
 
「重くなぁい?」

 同情なんていらない、

「重そうだよー」

 それが、こないだ歩きはじめたばかりのような女の子でも、

「一緒に持ってあげるよ」

 もーう、「大丈夫です!!!💢」

 しまった!
 強く言いすぎた
 驚いて丸くなった目に、どんどん涙が溜まっていく。

 あなたが……、あなたが悪いのよ、

「うちの子がごめんなさいね」

 あなたが親? それなら………、

「この子、人を助けるのが大好きで、困ってそうな人を見ると、誰彼かまわず強襲しちゃうから、たまに迷惑かけちゃうんです」

 ………………。

「びっくりしたねぇ、このお姉ちゃんにはね、助けは必要ないみたいだよ。さ、謝って」

「ご、ごめんなさい……グスン
 ───でも、助けが必要なら、言ってね……グスン」

 ………………。

 手を繋いで、立ち去ろうとする親子の背中に向かって言った私の言葉に、
 ───私自身が驚いた。

「じゃぁ……、壁、持ってくれる? 一緒に」

 親子が振り返る。

「うん、持ってあげる!」

 駆け寄ってきて、小さな手で、私の壁を持ってくれる女の子。
 その表情は、涙目だけど、笑顔。
 我が子を見つめるお母さんも笑顔。

 壁持ち強襲女子のおかげで、
 私の壁が、少し軽くなった。


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