【シロクマ文芸部(文化祭から始まる)】[ 幸せな文化祭になったよ ]
↑↑コチラのお題【文化祭から始まる】に参加してみました。
いつもの「みゆう」の物語です。
このお話だけで楽しめますので、肩の力を抜いて読んでくださいませ〜
[ 幸せな文化祭になったよ ]
文化祭で、ハート型の何かをプレゼントすると、恋が成就する。
そんなウルトラロマンティックな情報を仕入れた私のスカートのポケットの中には、袋に入ったキーホルダーが入っている。
小さな鈴に、さらに小さなハートがさりげなくついている。
これでご利益があるのか分からないけど、ハートがどーーーーん! ってやつをプレゼントするのはさすがに気が引けるというもの。
入学して、すぐに好きになった先輩。
ハートのキーホルダーを、文化祭で渡すんだ!
待っててくださいよー!
先輩!!!!!
って、意気込んでいたのに、
”ジュー、ジュー”
なんで、焼きそば焼いてんだ、私!
しかも、校庭の出店で!
汗だくで、首にタオル巻きながら。
「みゆう、焼きそば3つ追加ね!」
「あいよー」
あいよー、じゃないよ私!
クラスで試しに焼いてみたら、私の焼きそばが一番好評で、そしたら私が焼き担当になっちゃってぇ〜。
なんの取り柄もないのに、なんで焼きそばは、うまく作れるんだよ私は!
「はい、3つ上がったよ〜」
「ありがとう、2つ追加ねー」
「あいよー」
あいよー、じゃないよー、
もー、近くにいたクラスメイトに、声をかけてみる
「ねぇ、焼き、だれか変わってくれない?」
「あ、そうだよねぇ、大変だよねぇ、でも、みゆうの焼きそば評判いいよ、だからホラ見てよ、うちのクラスだけ、大行列だよ!」
「ほへ?」
焼きそばを焼くのに夢中で気づかなかったけど、目の前のお客さんの後ろには、たくさんの人だかり。
「だから、もう少し頑張って! 謝礼、弾むからさ!」
もー、こいつは商売上手かぁ〜、声をかける相手を間違えた。
まぁ、喜んでくれている人がいるなら、それはそれで嬉しいんだけど………。
そして私は、一心不乱に焼きそばを焼く。
それでも、頭をよぎるのは、ポケットの中のキーホルダー。
早く、先輩に会って、早く、先輩に渡したい。
「ハァ〜、先輩………」
「ん? 呼んだか?」
「ハイ、呼びましたが………」
焼きそばが舞う鉄板の上から視線を前に向けると、そこにはいつもの先輩の笑顔。
「来たよー!」
って、右手の手のひらを、肩の高さくらいまであげて爽やかに微笑むそのお顔、今日も綺麗です素敵です大好きです。その綺麗なお顔に、焼きそばのソースが飛び散ったら大変、大至急避難してください!
っていうか、汗だくで、タオルを首にかけてる私の姿を、その汚れのない澄んだ瞳で見つめないでください!!
と、妄想が頭を巡っている間も、私の手は動き、鉄板の上では焼きそばが舞っている。
「みゆうの作る焼きそばが美味しいって聞いたから来てみたら、スゴイ行列でびっくりしたよ」
「先輩、言ってくだされば、お持ちしたのに、並んじゃいましたかー」
「うん、でもまぁ、大して待ってないし」
「あ、先輩、ちょっと待ってくださいね」
と、私は言って、出来上がった焼きそばをプラケースの中に素早く入れて、
「焼きそば2つ上がったよ〜」
と、クラスメイトに声をかける。
「ありがとう」
と、焼きそばを受け取ったクラスメイトは、チラリと先輩を見ると「あ、みゆうの先輩、こんにちは〜」と余計なことを言って立ち去った。
離れるクラスメイトの後ろ姿を追いながら、視線を先輩に移す。
「手際いいねぇ〜、プロの焼きそば屋さんみたいだ〜」
と、キレイな顔に爽やかな笑顔を乗せて言う先輩、ステキ過ぎです。先程のクラスメイトが口走ったことは忘れてください。
「エへへへへへ」
と薄ら笑いを浮かべながら、首にかけたタオルで頬の汗を拭く私…。
───ハッ!
何やってんだ私!
目の前には先輩がいるのに、なに、焼きそば職人に成り切ってんだ!!
えーい、ここは気を取り直して………
「せ、先輩の分、焼きます。なにか、お好みはありませんか? 固めが好きとか薄口がいいとか」
もー、だからそれじゃ、焼きそば職人だって!
「んー、そうだなぁ〜」
と、右手を顎に当てながら考える先輩のこの所作姿表情全部彫刻にして保存したい。
「じゃぁー、みゆうの好みで!」
「私は、先輩が好みです」
………………………。
えーとー、私、今、なんか口走った? 言った? 言ってない?
えーとー、えーとー、
「あ、あ、焼きそばですよねぇ、アハ、ハハハハハ」
タオルで汗を拭きながら、愛想笑いを浮かべるしかない私。
気を取り直して、姿勢を正してから言う、
「じゃぁ、先輩のために、気持ちを込めて作らせていただきます!」
って、なんで焼きそば作るヘラで敬礼してるんだ私。
「よろしく頼みます」
と、敬礼で返してくれる先輩。
焼きそば屋台で鉄板を挟んで、敬礼をする2人。
この文化祭で、一番シュールな光景かもしれません。
そんな妄想を振り払い、焼きそばを焼き始めようとすると、同じ鉄板にクラスメイトがやってきた。
「どうした?」
と私が聞くと、
「だって、先輩のために焼きそば焼くんでしょ、他の客の分は私が焼くから、たくさんの愛を詰め込んで、じっくりと先輩のために焼きな」
だなんて言うもんだから、私はもう、反射的にハグしちゃったよー
「ありがとー」
「暑いし、つか、ヘラ持った手でハグすんな、早よ焼け」
「了解であります!」
私は再びヘラで敬礼をしてから、焼き始める。
私の焼きそばを、食べに来てくれた先輩。
肩を並べて、焼きそばを焼いてくれる友人。
ハートのキーホルダーは渡せないかもしれない。
でも、こんな文化祭も悪くない。
鉄板の上では、焼きそばが舞う。
うん、私は今日も、幸せだ。
おしまい。
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