兵役義務(徴兵制)は最大の "男性差別" である

この世に存在する最大の "男性差別" が、男性のみを対象とした拒否することの許容されない兵役義務(徴兵制)である。 

大韓民国の場合、全ての男性に約2年間の兵役義務が課せられており、基本的に逃れることはできない。軍隊組織は極めて不健全で、理不尽ないじめ・シゴキや暴力が当たり前のように蔓延っているという。国家権力によって強制的にそのような組織へぶち込まれる。拒否することは許されず、もし兵役拒否を貫こうとすれば刑務所送りになる。 

韓国では過去60年以上にわたり毎年、信条から兵役を拒否した数百人の若者が、社会奉仕の意思があるにもかかわらず、有罪判決を受け収監されてきた。通常、良心的兵役拒否者は1年半収監され、前科者の烙印を押され、長期にわたり経済的・社会的不利益を被る。
2018年、最高裁と憲法裁判所は、兵役拒否の権利を認める画期的な裁定を下した。さらに憲法裁判所は、2019年末までに一般社会での代替役務の導入を国に求める判決を言い渡した。
2019年12月に改正された兵役法では、良心的兵役拒否者は軍管理下での長期の代替役務を義務付けられた。依然として良心的兵役拒否者に不合理で過剰な役務を課し、思想、良心、信仰の自由を侵害する状況が続いている。
兵役拒否者は2020年6月30日から代替役務の申請が可能になった。その年の10月には、最初の一団が刑務所などの矯正施設での3年間の代替役務を始めた。
国際人権法、国際人権基準は、兵役義務がある国に民間の代替役務を提供することを義務づけている。役務期間は兵役と同期間とし、もし延長するなら、合理的、客観的基準に基づかなければならないとしている。また、良心的兵役拒否者と認めるか否かの手続きと認可後の役務は、いずれも文民の管理下に置く必要がある。

大韓民国:代替役務を拒否した良心的兵役拒否者への起訴取り消しを 
2022年8月31日 [国際事務局発表ニュース]
https://www.amnesty.or.jp/news/2022/0831_9681.html

ただ「男性に生まれた」という理由だけで、理不尽ないじめ・シゴキや暴力が蔓延る国家組織へ容赦なくぶち込まれるか、さもなくば刑務所送りになるという、あまりにも救いのない二択を突き付けられる。 
(そして、彼の姉妹や女友達などはその苦役とは一切無縁でいられる。なぜならば「女性に生まれた」から。ただそれだけの違いで………) 

わが身に置き換えて考えてみれば、到底耐えられそうにない。男性が皆もれなく好戦的で、好き好んで戦争をしていると考えている人がもし居るならば、それはとんでもない大間違いだ。男性の中には、体格が華奢で体力が乏しい虚弱な人もいるし、乱暴なことが苦手で繊細な者もたくさんいる。そういう男性たちにとって兵役義務(徴兵制)は耐え難い苦役だ。それを国家権力が強いるのだ。

そういう国が、世界を見渡せばいくらでも存在する。当たり前のように存在する。そして、多くの人は "男性差別" であると認識すらしないし問題視しない。声が上がってきてもかき消されている。
極めて重大な人権蹂躙であり性差別であるにも関わらず、そのことをまともに問題として議論されることすらあまり無い。基本的人権とは何なのか。"法の下の平等" とは何なのか。"苦役の禁止" とは何なのか。いったい何なのか………。 
幸い、現在の日本国には兵役義務(徴兵制)は存在しない。そういう国に生まれることができたことは、私にとっては本当に幸運なことだったと言わざるを得ない。もし違う国に生まれたならば、国家権力によって暴力が蔓延る組織へぶち込まれて、心身ともにボロボロにされていたのかもしれないのだから………。

2022年2月下旬からロシアによる軍事侵攻を受けているウクライナにおいて、「18~60歳の全男性の出国禁止」という措置が当たり前のように取られている。もちろん、武器を持って国のために闘えという、そういう意図であることは明白であろう。また、ロシアは徴兵制が健在の国であり、ウクライナへ出撃したロシア兵の中には、徴兵によって意に反して軍隊へ入隊させられたうえで、戦地へ連れてこられて破壊と殺戮に従事させられている者も少なからず居るのではないだろうか。考えるだけでおぞましいことだ。
私と同じように、乱暴なことが苦手な繊細な男性たちが、きっと苦しんでいるはずだ。どうすることもできないのが、ただただ悲しい。

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