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「イノベーションとともにある都市」研究会 ― vol.01「イノベ研」始めました!―

諸隈 紅花
日建設計総合研究所 都市部門
主任研究員

イノベ研始めました!

日建グループでは、「イノベーションとともにある都市」研究会(通称:イノベ研)を数年前に自主研究会として立ち上げ、イノベーションと都市空間に関する研究を始めています。今年は、今までの研究の蓄積の中から、建築・都市づくりの専門家としての立場で、イノベーションを起こすために必要な空間のレシピ(要素)やイノベーションの場を作るために必要な要素の関係図など、事例分析を通じて得られた知見等を、順次発信していきたいと思います。

「そもそもイノベーションって何?」

近年、世界中で、閉塞した経済や社会状況を打ち破るためにノベーションの重要性が叫ばれ、とくに、「オープンイノベーション」や「スタートアップエコシステム」といった言葉をよく聞かれるようになりました。簡単にまとめると、オープンイノベーションとは、社会課題の解決を目指し、多様な主体が共創しながら新しい製品やサービス等を生み出すことです。
すなわち、今までのように1つの企業、大学、組織等の単体のプレーヤーで課題解決を試みるのではなく、お互いの垣根を超えて、社会課題の解決という一つの大きな目的を共有し、機敏に新しいものを生み出していくことです。そのようなオープンイノベーションの時代において、「スタートアップエコシステム」とは、イノベーションの種となる新しいアイデアや技術を持つスタートアップ企業と投資家、大学、企業等が連携してビジネスの種を育て、事業化していくための環境を意味し、成功したスタートアップが投資側に回ることで、イノベーションを生むサイクルが一巡する、まさに生態系に例えられるものです。

写真1 様々な交流を生む仕掛けとなる空間が組み込まれているイノベーション施設:BLOXHUB

イノベーションは都市で生まれる!

もう一つの重要なポイントはイノベーションと都市との関係です。現在のイノベーションの主流は、かつて都市の郊外に展開されたリサーチパークに代表される隔絶された、人里離れた場所ではなく、都市で生まれると言われています。それを端的に表したレポートにアメリカの政策系シンクタンクのBrookings Institutionが発表したThe Rise of the Innovation District等があります。イノベーションが都市で生まれるのは、オープンイノベーションが多様な人々との共創をベースとしていることとも関わりがあります。様々な人がアクセスしやすい場所であるべき、ということもありますし、すでに都市には多様な属性を有する人々が住み働いているという利点もあります。
また昨今はスマートシティに向けての取組みとして、都市自体がイノベーションの実験場として使われているなど、都市とイノベーションは切り離せないものとなりつつあります。しかし、イノベーションがおこる都市空間や建築等の物理的な空間ってどんな場所なのか、という研究はあまり行われていません。

写真2 コペンハーゲン中心にある都市課題解決のための共創の場:BLOXHUB

イノベ研の目指すところ

そこで建築や都市開発・政策の専門家としての立場から、様々なイノベーションが起こる空間を取り上げ、その特徴を紐解き、イノベーションの空間を作る立場の人々に我々なりの視点から捉えたポイントをお伝えしたいというのが活動の狙いです。

写真3 ニューヨーク市におけるイノベーション創出を目指して作られた大学:Cornell Tech

イノベ研でご紹介する予定の事例

イノベ研では、都市(例えばある都市全体や複数の都市を束ねた圏域)、地区(イノベーションをテーマとした都市開発レベル)、建物(企業のイノベーションセンター、リビングラボ等)の事例を発掘し、紹介をしていきたいと思います。

  • BLOXHUB (デンマーク・コペンハーゲン)

  • High Tech Center Eindhoven (オランダ・アイントホーフェン) 等

  • Brooklyn Navy Yard (米国・NY市)

  • ピッツバーグ(米国・ピッツバーグ)

  • メルボルン(オーストラリア・メルボルン)

  • OIST(日本・恩納村)などなど・・・・

その他、こうご期待。

イノベ研の主要メンバーはこの4人です。

左から
諸隈 紅花(執筆者)
日建設計総合研究所 都市部門
主任研究員
博士(工学)。専門は歴史的環境保全、公園の官民連携による活性化。古いものが好きですが、実は新し物好きでもあり、その最先端のイノベーションが都市にどう表出するかに関心があります。

 石川 貴之
日建設計 執行役員 新領域開拓部門 イノベーションデザイングループ 新領域ラボグループ プリンシパル
専門は都市計画。大規模再開発やインフラシステムの海外展開業務を経験する中で、様々な地域と組織で人や技術が繋がり、新しい空間やスタイルが生まれる「イノベーション」の空間や仕組みに興味を持っています。

中分 毅
元日建設計副社長。40余年の日建グループでの勤務を経て退任。「工場移転跡地を研究開発をテーマとして再生する」プロジェクトに30年程前に参加したのが、イノベーションに関心を持ったきっかけで、その道の達人から教えを受けた「発展的集積構造」に関心を持ち続けています。

吉備 友理恵
日建設計 新領域開拓部門 イノベーションセンター
2017年入社。共創やイノベーションについてのリサーチを行いながら、社内外の人・場・知識を繋いでプロジェクトを支援する。
共創を可視化するツール「パーパスモデル」を考案(2022年出版予定)。


写真2 撮影者:KENJI MASAMITSU



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