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②三浦春馬とハーヴェイ・ファイアスタイン

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僕がはじめてアメリカに行ったのは2015年。社会人になって、ちょうど1年ぐらいの頃だ。デルタ航空でシアトルまで飛んで、そこから乗り継いでアリゾナ・フェニックス空港に降り立った。その時、独りで行こうとしていたのはセドナ。何でだったのかな。ちょっと前に安室ちゃんとロンブー田村氏がデート旅行で訪れた場所として日本でも知られていた。パワースポットなのよね。「ボルテックス」という大地のエネルギーが湧き出すヒーリングスポットで、有名な岩場が4つほどあるんだけど、確かそのうち3つは制覇したと思う。「ボイントン・キャニオン」「カテドラル・ロック」「エアポート・メサ」。ボルテックスには男性性と女性性のエネルギーがあって、前者は勇気を与え奮い立たせてくれるエネルギー、後者は癒しと愛で包み込んでくれるエネルギーだ。

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女性性のエネルギーが強い ボイントン・キャニオン

それからニューヨークに飛んだ。3月でたしか雪が降っていた。はじめてのMoMA、はじめてのMET、ブルックリンとコニー・アイランド。そしてブロードウェイ。この時「オペラ座の怪人」と「ヘドウィグ・アンド・ザ・アングリー・インチ」を観て劇場の虜になった。この6か月後、僕はまたニューヨークへ足を運ぶ。

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「ヘドウィグ」はちょうどジョン・キャメロン・ミッチェルが舞台に復帰していたタイミングだった。

9月の旅ではNoMad Hotelに何泊かしたと思う。改装されたばかりのホイットニー美術館を観たり、ロックフェラーやワン・ワールド・トレード・センターにも登った。お馬鹿さんと煙は高いところが好きだから。で、この時観たミュージカルが「パリのアメリカ人」と「キンキー・ブーツ」。パリアメは時差ボケで寝落ちしちゃったんだけど、キンキーはもう最高!興奮しっぱなしでした。2016年に日本語版ミュージカルを大阪まで見に行った。ローラ役の三浦春馬さん。こうしてこの記事を執筆している今日、彼は逝ってしまった。若過ぎる死。。。ご冥福をお祈りしています。

2005年の映画を基に舞台化された「キンキー・ブーツ」は、音楽をシンディ・ローパーが、そして脚本をハーヴェイ・ファイアスタインが担当した。


「トーチ・ソング・トリロジー」

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Harvey Fierstein
(写真左。右はマシュー・ブロデリック)

1954年6月6日生まれ。米・ニューヨーク出身。ハーヴェイ・○○スタインと聞くと「Me Too」運動として社会現象化し騒がれたハーヴェイ・ワインスタインの方を思い出す人が多いと思うが、こちらのハーヴェイさんは健全なアーティスト、脚本家です。で、レジェンダリー・ゲイです。

名声のはじまりはオフ・ブロードウェイ劇場で幕を開けた舞台「トーチ・ソング・トリロジー」。ユダヤ人の同性愛者、ドラァグ・クイーンの主人公を描いた作品は後にブロードウェイへ進出、1982年にトニー賞演劇作品賞と主演男優賞の二冠に輝いた。この時ハーヴェイ28歳。

83年にもブロードウェイミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」の脚本を手掛け、これが大ヒットしトニー賞を6部門受賞。これもいい作品だったー。市村正親と鹿賀丈史ペアの日本語版を日生劇場で見た。"I Am What I Am(ありのままの私)" という曲がいいのよ。その後も作曲家アラン・メンケン(「リトル・マーメイド」や「アラジン」などの音楽を手掛けたディズニー御用達のアメリカ版「久石譲(もしくは彼以ジョー)」)と共にミュージカル「ニュージーズ」(92年)を制作している。

※アラン・メンケンとディズニー映画でタッグを組んだゲイ・レジェンド、ハワード・アッシュマンの記事はこちら

俳優として

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ファイアスタイン先生は舞台上でも活躍され、自身が脚本を書いた「トーチ・ソング・トリロジー」のみならず「ヘアスプレー」(2002年)では主人公トレイシーの母親役を演じ、トニー賞の主演男優賞を受賞。これ、映画版ではジョン・トラヴォルタがママ役でしたよね・・・

銀幕にも登場し、「ミセス・ダウト」(1993年)、「インデペンデンス・デイ」(96年)などで名演が絶賛。ものすんごーいガラガラ声が彼の特徴とされていて、「ムーラン」(98年)では声優をつとめた。

88年に公開された映画版「トーチ・ソング・トリロジー」は、かつては「ゲイ映画ベスト○○」みたいなの常連だったような。今調べてみたらランクに入っていなかったけど。ようやく今日全編を見ることが出来ましたが、あまり流通していない映像なので皆さんよく探してくださいね。ファイアスタイン先生演じるドラァグが恋人・家族との葛藤の中で、ゲイとしての自尊心を高く保ちながら生きていく姿が描かれているんですが、恋人アラン役として出て来るのが、とてもキュートな若き日のマシュー・ブロデリック。サラ・ジェシカ・パーカー(「セックス・アンド・ザ・シティ」)の旦那さんです。

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「トーチ・ソング」の意味、高校生の頃から気になってて、そう、スマートフォンが無い時代にガラケーで「名作ゲイ映画」のランキングなんか見てると絶対この作品が出て来るんだけど、TSUTAYAとかにも並んでないわけですよ。だから見れないままモヤモヤしていて、この「トーチ・ソング」という意味だけが頭の隅っこに残っていたわけ。

トーチソング (torch song) は、感傷的なラブ・ソングで、典型的には、歌い手が、報われない片思いの恋、失恋を嘆くもので、恋人が振り向いてくれないとか、去ってしまうとか、恋愛のあやが関係に影響するとかいったテーマが取り上げられる。この表現は、「to carry a torch for someone」(誰かのために松明を運ぶ)という、報われない愛の明かりを灯し続けることを意味することわざに由来している。 - トーチソング 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

悲しい恋の歌、大好き。

「キンキー・ブーツ」


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先生(左)とシンディ姐さん

2012年にシカゴでミュージカル「キンキー・ブーツ」は幕を開けた。演出・振付を手掛けるジェリー・ミッチェル(「キューティー・ブロンド」)、脚本のハーヴェイ・ファイアスタインというオープンリー・ゲイの二人と、グラミー賞&エミー賞ウィナーのシンディ・ローパーがタッグを組んで挑んだ。ストーリーの温かさ、そして音楽の爽快さで、この作品は13年のトニー賞で最多13部門にノミネート、作品賞を含む6部門受賞という快挙を成し遂げた。

2016年にオリックス劇場で見た日本語版のパンフレット。今日の悲しい日に本棚から取り出して読んでる。チャーリー役に小池徹平、ローラ役に三浦春馬、ローレン役にソニン。日本のミュージカル界で燦燦たる輝きを放つ俳優たちが演じていた。英・ノーサンプトンの潰れそうな靴工場に自分に合う「頑丈なブーツ」が欲しいというドラァグ・クイーンがやってきて工場を再起させるというストーリー。

特に、フィナーレに登場する「ローラの6段階プログラム」(①真実を追い、②新しきを学び、③在るがままの自分と他者を受け入れて、④愛に光を当て、⑤自尊心を指針とし、⑥自分の心を変えれば、世界も生まれ変わる)には、作品を超えて世界に向けられたパワフルなメッセージが込められているように思う。 - 2016年日本版パンフレットより

ハーヴェイ・ファイアスタインは「トーチ・ソング・トリロジー」でも「誇りを持って生きること」を強いメッセージとして訴えていた。宗教や性別、人種など、人間はおのおの異なる部分があるし、ゲイであれば尚更、差別や非難の的にされることもある。それでも自分と向き合い、自分を受け入れ、生きていく。

ローラという役を通して、ハーヴェイのメッセージを日本の観客に伝えてくれた三浦春馬さんが自ら命を絶ってしまったことは残念でしかない。伝える側、表現者には様々なプレッシャーがあったと思う。30歳というまだ若く、前途洋々だった彼の死を悼みます。どうか愛と癒しのエネルギーに包まれて、穏やかに眠ってほしい。

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ローラ役でドラァグ姿を披露した三浦春馬さん(1990~2020)

ゲイ・コミュニティで「ハーヴェイ」の名といえば、まずは銃弾に倒れたオープンリー・ゲイのサンフランシスコ市議ハーヴェイ・ミルク。そしてハーヴェイ・ファイアスタインだ。改めて今日、生きていくのだというメッセージを強くかみしめる。

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