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冬はかす汁

子供はかす汁が苦手です。私もそうでした。昭和の家族は父親第一。
夕食は大人のおかず。子供用にと別に作ることもなく、初めから大人と一緒のメニューでした。

冬の寒い日は鍋ものもありましたが、たまに湯気を嗅ぐだけでも酔いそうなかす汁。白くてドロッとした酒粕はホワイトシチューみたいで一見美味しそうですがその独特のにおいは強烈に鼻につきました。これだけは子供には早いと具はそのままで豚汁にして出されました。

母は、酒粕に砂糖を入れて小さなお団子にして焼いてくれました。火鉢に網を載せて焼くのですが、中の砂糖が溶けて粕の香りは幾分飛び去ります。焦げ目がついて美味しそうですが、でもこれもやっぱり大人のおやつ。少し食べただけで、子供たちはみんなりんごのほっぺになりました。

おとなになって、その良さが分かるようになりました。
生臭さを消すために鮭は焼いて少し焦げ目をつけます。だしの中に小芋、ニンジン、大根、ささがきごぼう。薄あげとこんにゃく。
そこに溶いた酒粕を入れて、少し煮ます。お味噌も加えて最後に鮭を投入します。薄口しょうゆもさあーっと入れて。ねぎは多めに食べる前に。

この料理は誰が考えたんでしょう。昔の人のアイデアはすごい!
関西地方では冬の定番メニューです。今津郷、西宮郷、魚崎郷、御影郷、西郷(東灘区、灘区)は酒蔵が多く灘五郷と呼ばれて日本を代表する酒どころの一つです。ポン酒の好きな友達と酒蔵巡りをしましたが、どれも美味しくてほろ酔い加減の散歩となりました。昔は公園の土手に無造作に酒作りの麻袋が干されていたそうです。杜氏と呼ばれお酒作りに携わる職人がいて農村、山村、漁村から蔵元に出稼ぎに来ていたそうです。

毎年兵庫県の但馬から杜氏の長としてくるおじさんがいて、なかなか偉い人だと祖父が言ってました。
その人が持ってきてくれる酒粕を家族は楽しみにしていました。

重たそうに風呂敷に包んで持ってきてくれました。そのおじさんはなぜか大きくてつるつると白いきれいな手をしていました。今から思うと麹の美容効果でしょう。

美味しそうにたばこをくゆらせて祖父と父、三人の会話は遅くまで続いたようです。
 静かな夜になりました。夕食のかす汁で今も体が温かいのはありがたいことです。

今朝は残ったかす汁を少しだしを足してもう一度いただきます。
寒い朝にこんな温まるものを頂くとなんだかほっこりします。

きっと孫たちはおうちクリスマスを楽しんだことでしょう!
その写真が送られてきたら私も少しは味わえるかなあ?
静かなクリスマスはニケと一緒に過ごせたことが一番のプレゼントです。
今年もあと6日、いよいよ年の瀬。

今日もいい日にしましょう!


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