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脳を総合的に活性化させる「知性+感情」で授業をつくる

脳科学者の茂木健一郎さん
プロフェッショナル仕事の流儀の対談の中でこんなことを話していた

「人間は知能の発達もすごいが、喜怒哀楽がこれだけはげしい動物はいません。いろいろな微妙な感情もあります。人間の二つの柱をあげるなら、知能と感情です。」
住吉美紀アナウンサーが質問する
「では、感情を抑えないというのは、脳に大事なこと?」
すかさず茂木さん、
「トータルに活性化させるためには、絶対に必要なことです」

このやりとりを聞いていて、ピンときた。
授業でも、もっと感情を重視した取り組みが必要ではないか
感情+知性をセットにした授業をすることで、脳を総合的に働かせて、よい学びにつなげたい
これまでも、「情動」や「情意」という言葉で、学習における必要性が問われてきた
時には意欲という言葉にもなった

筑波大学附属小学校の由井薗先生は主張している

子どもたち自らが問いを見いだし、追究できるようにするためには「事実とのインパクトのある出会い」を 「演出」することを通して、子どもたち一人ひとりの中にある「情意」と「知識」 の行き来を促し、「おかしいよ!」「納得できない!」「本当になぜだろう?」「どうすればいいのか…?」という声をわき上がらせることが大切である。ここでいう「情意」とは、小学生ならではの豊かな感受性や正義感のことである。

つまり、子どもらしい感性を生かし、怒りや矛盾の感情を学習に取り入れ、知識とセットにして学んでいくことで、切実な学習問題が生まれていくということである
脳科学的に見ても、的を射ている
そのためには、「深める教材研究」により授業で使えるネタを掘り起こすことが必要
そして、「絞る教材研究」により、どの資料を、どのような順番で、どう見せ、発問していくかが重要だと由井薗先生は言う
これが「インパクトのある出会い」を「演出」すること
子どもたちの感情の揺らめきを作るために、力を尽くしているのである

数学者の岡潔さんもこんなことを言っている

数学は知性の世界だけに存在するのではない。感情を入れなければ成り立たぬ。
まず知的に矛盾がないということを証明し、めいめいの数学者がみなその結果に満足できるという感情的な同意を表示しなければ、数学とはいえない。

学習の中に、感情がなければいけない
それは、問題提示の中で「わからないぞ」といった不安から始まる
そして、「わかった」「できた」という感情的な「満足」を生み出すことが大切だ
この感情の流れは、ただの知識授与の授業では生まれない
教師の導入からまとめまで、よく演出された授業構成が必要なのである

授業・人(じゅぎょうひと)塾代表の田中博史先生も、講演の中で言っていた

算数のテストで100点をとっても、算数が難しいっていう子がいるよね
これはなぜか?
解き方だけ先生が教えて、なんだか子どもがよくわかっていないんだけど、問題だけは解けちゃう
こういう教え方をしているからなんです

つまり、子どもの「わからなくて、もやもやする」感情を作り出すことも、「わかった!こういう意味か!」と満足させることも、何もしていないということ
これでは、算数が楽しい、という気持ちにはならないだろう
さきほどの岡潔さんが言っていることと重なる
知性だけでは人間は学んだ、とは言えないのだ

情意、情動、感情が重要なのは明白だ
これからは、はっきりしたキーワードとして感情的側面が取り上げられ、授業づくりが充実していけばと願う

                    三浦健太朗

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