長編の指針は「行って、帰る」〜簡単な物語のつくり方(6)
崖っぷち作家のニジマルカです。
「簡単な物語のつくり方」6回目です。
5回目はこちら。↓
前回のおさらい
前回は、長編の冒頭について説明しました。
冒頭では、
・背景や舞台、雰囲気をちらっと見せる
・きっかけとなる事件を起こす
・主人公を紹介する
・何を解決する話か伝える
くらいができるといいです。
難しければ、「きっかけの事件」を起こすだけでも大丈夫です。
「きっかけの事件」を起こせば、舞台や主人公、何を解決する話なのかも、だいたい伝えることができます。
では、今回の話を始めましょう。
長編の指針
長編の骨組みについては説明してきましたが、それとは別に、長編にはおおまかな指針があります。
定形パターンと言ってもいいですね。
この指針を知っておくと、話が作りやすくなります。
指針は簡単です。↓
「行って、帰る」
行って、帰る
長編の指針は「行って、帰る」です。
簡単に言うと、
日常 → 旅立ち(行って) → 非日常 → 勝利 → 日常(帰る)
のように、「日常」から旅立ち、「非日常」で戦い、勝利して「日常」に帰る、というのが定形のパターンです。
これに従っておけば、長編らしい物語になります。
図にするとこうです。↓
それぞれ説明していきましょう。
ヤマと指針の対応
【スタート地点】
物語の最初、主人公は「日常」にいます。
図の左端です。
ある日、「最初の事件」が起こり、主人公は旅立つことを決めます。
「最初の事件」は「物語のきっかけとなるイベント」のことでしたね。
たとえば「誰かから手紙が届く」「依頼が来る」「引っ越しした」「殺人事件が起こる」「冤罪で捕まった」「親が病気で倒れた」など、きっかけはさまざまです。
きっかけのイベントが起こることで、主人公は行動を起こすことを決め、「日常」から旅立ちます。
【第1ターニングポイント】
物語が進みだすと、しばらくして問題が起こり始めます。
最初の問題を解決するのが、第1ターニングポイントです。
最初のヤマはそれほど大きくないので、簡単に解決できるでしょう。
解決すると、一旦物語は落ち着きます。
【ミッドポイント】
物語が中間地点に差し掛かると、そろそろ大きめの問題が起こり始めます。
2つめのヤマで大きめの問題を起こした方が、物語の収まりがよくなります。
一度、中間地点で物語を終わらせてしまうのもありでしょう。
(たとえば、誰かを助けるのが目的なら、助けてしまう)
その場合、後半は、別の目的のために動き始めます。
ところで、ミッドポイントまでは、主人公だけでなんとかするのではなく、誰かが助けてくれることが多いです。
物語の前半は、周りの人がサポートしてくれるのですね。
【第2ターニングポイント】
(図を再掲)
さて、ミッドポイントを過ぎると、物語は後半に入り、どんどん危険になっていきます。
後半は、基本的に誰も助けてくれません。
主人公1人で問題を解決しなければならないのです。
(主人公とヒロインの2人などでもいい)
第2ターニングポイントで問題を解決し、一旦落ち着いたあと、物語はクライマックスに向けて、一気に加速していきます。
【クライマックス】
クライマックスでは、もっとも日常から離れた「怖い場所」で、もっとも「怖い敵」と戦います。
戦うといっても、物理的な戦いだけでなく、精神的な戦いでも構いません。
たとえば、主人公が母親との確執を抱えていたとします。
虐待されていたとか、そんな感じです。
主人公は家を出ているのですが、なにか問題が起こり、母親と対峙しなければならなくなります。
その場合、怖い場所というのは自宅であり、怖い敵というのは母親になるのですね。
主人公の一番怖い敵が母親なら、最後は母親と戦わなければなりません。
その戦いは、激しい心情の吐露とか、隠していた想いの告白とか、そういったものになるかもしれませんね。
このように、クライマックスでは危険度がもっとも高くなります。
そして、そこで敵を倒して日常に戻る、というのが長編の全体的な指針です。
既存作品を例にすると
言葉だけでは理解が難しいと思うので、既存作品を図に当てはめてみましょう。
みなさんが見ていそうなジブリ映画で、『天空の城ラピュタ』を例に取ってみます。
すると、図はこんな感じになるでしょう。↓
見事に指針に合っていることがわかりますね。
前半は、炭鉱のおやっさんや女将さん、汽車の車掌さん、地底のポムじいさんなどがパズーたちを助けてくれます。
第1ターニングポイントを越えた辺りで、ドーラ一家と協力関係を結びます。
ミッドポイントでは、シータを助けて一旦物語を終わらせていますね。
(つまり前半の問題は「シータを助けることができるか?」)
ですので、後半からは問題が変わって、「ムスカを止めることができるか?」という問題を解決するため、パズーたちは動くことになります。
第2ターニングポイント以降、舞台はラピュタに移り、パズーたちは何度もピンチに陥ります。
それらのピンチを解決しつつ辿り着いたクライマックスでは、「玉座の間」というもっとも日常から離れた場所で、もっとも恐ろしい敵であるムスカと対決します。
ここで、2人は協力してムスカを倒すわけです。
そして、2人は日常へと戻っていくのですが、その日常はいままでのような1人きりの日常ではなく、2人で生きていく日常なのですね。
このように、『ラピュタ』はとても上手く作られているので、物語づくりの良いお手本になります。
物語の骨組みや、今回の指針を知ったあとで、改めて見てみると、いろいろと勉強になるはずです。
今回のまとめ
簡単な物語のつくり方6回目「長編の指針は『行って、帰る』」でした。
1.長編の指針は「行って、帰る」
2.「日常→旅立ち→非日常→勝利→日常」が定番パターン
3.既存作品を図にしてみるとわかりやすい
次回は「中間まとめ・長編の骨組み」です。↓
それではまたくまー。
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