第8章、寮(3階、1番奥の部屋)ー3「地獄姫を捜してたわよ。」
和室
私は、アルテミスと浴室の方へと歩いて行く。
その途中の右側に部屋があり覗いて見ると、そこは畳敷きになっており、長方形の座卓が2台、柱に立てかけてある。部屋の隅には、座布団が5〜6枚ほど積み重なっているのが見える。その奥は押入れのようだ。
私はそこに入り、電気をつけた。
「あまり使われてないみたいだね(畳に座卓の跡がついてない)。」
「そうね。」
アルテミスも畳を覗き込むように見ている。
「バタン」と出入り口のドアの閉まる音がして
「あーやっと行った。」
マーズちゃんが肩を回しながら来た。そして私たちに気づき
「そこはトカレフたちが見てたぜ。」
「そうなんだ、あまり使われてないのかなって、座卓の跡がついてないから。」
と私が言うと
「あーなるほどなー、あいつら怪しい奴がいないか、しか見ていなかったからな。」
その後ろからオフィーリアが来て
「早く入りましょ、どうしたの?」
その後ろからフローラとバッカスも来たので、私が『座卓の跡』について説明すると
「跡ってつきますの?」とフローラ
「うん、カーペットにつくじゃない、あの椅子とテーブルも動かしたらついてると思うよ。それで、ここで(明日の)計画を説明しようかなって思うんだけど、良い?」
「良いぜ。」とマーズちゃん
「寝る所はどうしますの?」とフローラ
オフィーリアが
「それは後にして、とりあえずお風呂に入りません?」
なので、私たちは奥の浴室へと歩いて行った。
「部下は大丈夫なの?」
「あーやっと生き返った。」
マーズちゃんが湯船に浸かりながら、しみじみとした声を出す。
バッカスは、鏡から酒を飲みながら(意味のわからない方は、4章-1を参照してください)、機嫌良く鼻歌を歌っている。
オフィーリアとフローラ、私、バスタオルをまとったアルテミスは、髪を洗い(私は亡者の血を流し)心地良いお湯に疲れた体を浸す。じんわりと熱が顔の方へと昇ってくる。
浴室はかなり広く白い御影石が敷かれ、その真ん中には、黒い御影石の縁に白い御影石で囲まれた浴槽があり、底は思ったより深く、首まで浸かることができる。
私は隣のアルテミスに
「部下は大丈夫なの?」
「やっぱり、あいつが怪しかったんだ。」とバッカス
「大丈夫よ、監視をつけているから。」
「屋敷に居づらくなったのかよ?」とマーズちゃん
「そうね・・・泳がせているの。」
「第三都市にあまり居たくないんじゃなくて?」とオフィーリア
「それもあるわね・・・でも1番は、あなたたちに鏡を作るよう誘ったのは私だから・・・責任を感じてよ。あなた達こそ大丈夫なの? 部下を蔑ろにして。」
「いいんだって、たまには。」とバッカス
「私、独りでなんでも、やってみようと思いますの。」とフローラ
「私もよ、今までナナやミミに頼りすぎていましたわ。」とオフィーリア
「俺は、澪木みたいなのが理想かな?」とマーズちゃん
「あら、まあ。」とアルテミス
「うん、あの副隊長も時と場所をわきまえて、ちゃんと距離をとっているよな。」とバッカス
「んー毎日、忙しく地獄を飛び回っているからかなあ、亡者がいるからあまり
弱みは見せられないし・・・。」
「地獄ってそんなにお忙しいんですの?」とフローラ
「うん、今度おいでよ、ガイアとサファロスの許可が出たら、だけど。」
「明日来るんじゃない? 私は聞いてないけど。」とアルテミス
「ホルスも来そうだな。」とマーズちゃん
「お姉様も来そう。」とオフィーリア
「キングも来そう。」と私
「リリスは来なさそうだな、メガネがいるから。」とバッカス
「あら、やっぱり。」とアルテミス
「私の部下はどうしてるの?」
「んーメガネくんはリリスのとこで、モモタちゃんって言ったかな? あの子はマドンナの子供達のお世話をしながら見張っているわね。子供が行方不明になっているから・・もう1人、ボタンちゃんは・・メガネくんが言うには情報集めをしているらしいんだけど・・。」
「うん・・・わかった。」
「ソウイチロウさんは?」とフローラ
「あーあの、のんびりした子ね・・んー時々、周辺の居酒屋に出入りしてるって聞くけど・・・。」
「第三都市の周辺では、あまり亡者は出てない?」と言った後
(あーあまり良い雰囲気じゃないって言ってたっけ(7章-1)・・今、(ここを)離れるのは無理だしなぁ・・。)と思う。
「地獄姫を捜してたわよ。」
アルテミスが私に
「あなたがゆうべ、あらかた倒したおかげで第三都市では聞かないし、星たちからも報告はきてないわ。」
「でも、良い雰囲気じゃないって。」
「そうなのよ、だから原因がね・・・。」
「なるほど(だからアルテミスも気味悪がってるんだ・・得体の知れない不穏な
空気・・・星たちも落ち着きがない)(7章-1)。」
「そういえば、あの高森くんて言ったかしら?地獄姫を捜してたわよ、私かと
思ったけど、みんなが私を『星の女神アルテミス様』って言うから、結局それ
らしいのがいないって(おかしそうに)私に質問してきたわね、目の前にいる
のにね。」
「別に言う必要ないし・・・。」と私は少し不機嫌に答える。アルテミスが続けて
「あの川原って子のこと好きみたいだし、あの子じゃないの? 降魔術をしたって子、それと右腕がなかった由美って子。」
「マジかよ!」とバッカス、そして「ヒュー。」と口笛を吹く。
「そういえばあの子のお腹・・・。」と言って、フローラは自分のお腹をさする。
「やっぱりな、でも、あいつ自身の力っていうよりは、誰かが勝手に埋め込ん
だって感じだよな。」とマーズちゃん
「うん・・・。」と私
「そういうことって、できますの?」とオフィーリア
「うん・・・みんなは校舎に入った時に、何を見た?」と私
「見たって何をですの?」とオフィーリア
他の3人も同じような反応だ。(じゃ、私だけか・・・。)
「興味あるわ。」とアルテミス
「じゃ、眠る前に話してあげる。」と言って、私は水音をさせながら立ち
上がった。
次回
第8章ー寮(3階、1番奥の部屋)
4、「見つかった、遺体の2人。」
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