二次元妄想設定「魔法」(2226文字)

これに関しては誰もが一度はやる妄想だろうけど、
創作として考えるときはすごいシンプルなんだ。

後付設定で継ぎ足していくか、
事前に全部ガチガチに決めておくか。

後者はさらに二択があって、
実はたいして決まってないけど情報量で圧倒するか、
実際に全部決めておくか。

この世にはフレーバーテキストというものがあって、
「n代目のXの魔法使いjohndoeは」みたいな、
作品・本筋・システムには直接関係のない無駄情報のことだ。

別にjohndoeが何の魔法使いだろうが何代目だろうが、
それは作中において何ら意味を持たないけれども、
ユーザーとしては「そんな世界もあるのか!」となる。

このフレーバーテキストがやたら充実していると、
実際にはそれだけ多くの設定があったのかと錯覚し、
世界観が深いだの何だのという評価がつきやすい。

だが実際にはそれ以上の設定など特にはなく、
ユーザー側が勝手に邪推した結果、
ありもしない世界観のイメージが固定化されるだけだったりする。

・・・ということも、可能だ。
もちろん設定を実際に考えてあってもいいのだが、
それはもうとんでもなく手間がかかる。

作者専用の辞書を自力で作って、
逐一設定を忘れないようにしないと、
ユーザー側から盛大に突っ込みを食らうからだ。

だから創作は総じて、
情報量で圧倒するタイプのものは好まれない。
あらゆる他人を置き去りにする覚悟がないとやれない。

かくして、
作中で多くは語らず淡々と後付して厚みを持たせていくほうが、
没入感は強くなる。主人公が常に話の中心にいる必要はあるけれども。

後付設定の使い方で重要なことは、
その場限りの設定ではなさそうに見せかけることだ。
説明で理解させるのではなく、流れから察することをユーザーに強制する。

その性質上、子供向け作品では使いにくい手法であり、
逆に青年向けならそれなりに便利なやり方ではある。



ひとつ妄想のタネを披露するなら、
「条件をつけたうえで誰でも使える」と、
「条件はないが使える人が限られる」の二択かな。

魔法使いは神秘の存在だとされていて、
社会的地位も高いが、
実はごく簡単なカラクリを知っていれば誰でも好きな魔法を使える。

そのカラクリの守秘こそが魔法の価値を高めているから、
魔法使いは弟子を取らない。
口の堅さが何よりも重要視されるから。

・・・というお話は既に無数にあるけれども、
ドロドロとした閉鎖的な神秘主義を描くのは、
人間模様のほうがメインになりがちだから、まあ難しい。

その魔法を使うためのカラクリをどう設定するのかが、
腕の見せ所にして話の大半を決めるだろうのは、言うまでもなかろう。

逆に、完全に先天的な、偶然の産物として才能を付与されれば、
誰だって魔法は使えるけど、才能以上のことはできない。
こちらのほうが現代風味な魔法の話だとよく出てくるだろうか。

人体改造で魔法使いを作り出す、なんてよくある設定だしな。


そこで妄想設定をひとつ寄越せというなら、
「魔法を使えるようにする魔法」
を使える主人公の話かね。

魔法を使える人は全て、主人公に認められた人だけ。

指導者や教育者のポジションが主人公になる話は多いけど、
神の加護のようなものを与えられるとなれば、
敵からは狙われ、身内からは嫉妬され。

だから何かしらの制約が必要になる。
主人公の存在と特異性は絶対に他者へバラせなくなる、的な。
そうなると安楽椅子探偵のようなポジションになる。

逆に堂々と政治家なり王なりにしてしまうのもいいし、
魔法の力で大成功している経営者にしてもいい。
その場合は契約内でしか魔法が使えない、という設定もいい。

「科学を無視できる科学的な魔法」を使ってもいい。
一番有名なのは瞬間移動か時間遡行か死者蘇生だろうけど。

命や大金を動かせる魔法ですら、
主人公には、「使えるようにする」ことができる。

これはまあ有名どころでいうなら『火の鳥』の生き血かね。
不老不死すら実現させるけど、
あらゆる苦難と永久に向き合い続ける必要が出てくる。

しかし不老不死に限らず超越性を付与できるのだから、
話の筋そのものは単純明快にしておく必要がある。


あとはそれをどう魅せるかの問題になるけど、
漫画でいうなら、
「最初に出てきた主人公っぽい奴は主人公じゃなかった」。

まあ連載漫画でそれやると総スカン食らいやすいから、
ビジュアルノベル(エロゲーギャルゲーの類)のほうがよかろうけど、
効果そのものは覿面だったりする。

実際にそういう作品は既に無数にあるからな。
人間の鑑のような登場人物が世の理不尽に負けて、
それを颯爽と救うのが本当の主人公、というやつ。

ピーチ姫がクッパにさらわれることを、
ピーチ姫目線で描いてから、
勇者マリオの冒険が始まる、と言い張るかのごとき。


結局は、魔法そのものがロマンの塊なのだから、
どう魅せたいか、何をテーマにしたいのかが重要で、
詠唱がカッコいいとか、魔法の名前がカッコいいとか、色々。

設定を考えてからテーマを決めてもいいし、
テーマを決めてから設定を考えてもいいし。

先の「魔法を使えるようにする魔法」なら、
主人公は賢いって設定は不可避だろうしね。
そんなもん真っ先に悪用され、何なら殺されるから。

教わることなく学べるほど賢いからこそ、
その力を得た意味を自問し苦悩しつつも、
信じた正義や秩序のためだけに使う。

それが清廉潔白なのか、邪悪なのかは、作者のみぞ知る。

「邪悪な原動力で模範的なことをやってのけている」というなら、
これを書いている人間にも似ている気はするが。

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