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#39 何かを始めるのに、遅すぎるということはない

NPO法人にいまーるの理事・臼井です。
にいまーるは、障害福祉サービス事業を中心に手話普及活動も行なっている団体であり、ろう者と聴者が一緒に働く職場です。
障害福祉サービスの利用者は全員耳が聴こえません。
しかし、スタッフの比率は、ろう者2割:聴者8割と、聴者が多いので、双方の文化の違いが垣間見え、時には食い違うことも多々あります。
そんな職場から生まれ出る、聴者とろう者が共に仕事をする中での気づきを連載していきます。
今回は、新しいことを始めたいけどなかなか踏ん切りのつかない方に向けて書きました。

NPO法人にいまーるは、設立当時から大学生や専門学校の学生との関わりが続いています。
ろう者と交流をしたくて毎回イベントに参加する人もいれば、手話の方が自分の気持ちを表現しやすいからとろう者に寄り添う人もいます。

嬉しいことに、学校を卒業し社会人になった彼らと再会する機会もあります。

その度に「なかなか、ろう者と会う機会がなくて手話忘れてしまって・・・」と言われますが、学生時代に基礎を叩き込まれた成果か、再会から10分後にはスムーズに話ができています(ああ、すごいなぁといつも感心しています)。

以前、外部の研修会に参加した時のこと。
ろう者は私一人だけでしたが、研修後に一人の聴者が近づいてきて手話で話しかけてきました。
「手話できるんですか?」と聞いてみると、20年以上前に手話を使ったことがあるとのことでした。

20年間ずっと手話をやっていなかった割には、流暢だったので「またどうして?」と興味津々。
そんな私に対して「学生時代に、ろう者と一緒に机を並べて勉強したり遊んだりしたことが楽しくて」と懐かしそうに話していました。

基礎が叩き込まれている、という言い方はふさわしくないかもしれませんが、ろう者と同じ空気を吸って何かを一緒にやったことがあるという経験は人生の財産になり得るのかもしれません。

そう話をすると、手話通訳の活動をされている人たちからは「もっと早く若い頃から手話やっていればよかった」という声もあります。
その度に「『今日という日は残りの人生の中で一番若い日』だから遅くないですよ。」と答えています。

最近、80代になる利用者さんが「(就労継続支援B型)手楽来家に通い始めてからローマ字を覚えた。覚え始めて数年になるけど、おかげでパソコンの入力もできるようになった」と話していました。

手楽来家に関わる前は、何らかの事情で十分な教育を受けることができず手話での会話も難しい状態でした。にもかかわらず、周囲の利用者さんとスタッフたちと手話での会話が毎日行われている中で語彙力をメキメキと向上させました。指文字も70代のうちにマスターしていたので、驚くばかりです。

何かを始めるのに、遅すぎるということはない」。

手楽来家では今日も手話と日本語(時々、韓国語と英語)が飛び交っています。

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文:臼井千恵
Twitter:@chie_fukurou
Facebook:@chie.usui.58

編集:横田大輔
Twitter:@chan____dai


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