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大阪の下町・新世界で、不動産会社が初の自社運営ホテルをオープンした理由&経緯

こんにちは、日本ユニスト広報室です。
当社は2021年9月より、大阪・新世界にある「Willows Hotel 大阪新今宮」を運営しています。不動産開発や企画販売を行ってきた当社にとって、Willows Hotelは開発から運営まで、すべて自社で手掛けた初めてのホテルです。

開業から1年半が経つ中、「なぜ新世界で約230室もあるホテルを自社運営しようと思ったのか?」という質問を、方々でよくいただきます。
そこで、今回はホテル開発~運営に踏み切った理由と、ホテルプロジェクトが発足してから現在に至るまでの経緯について、公開したいと思います。

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始まりは遡ること7年前 

2016年の仕事始めの朝。
全社員を前にした年頭の挨拶で、日本ユニスト代表の今村は「今年はホテル開発に挑戦しようと思う」と、思いの丈を述べた。2011年の創業以来、日本ユニストは不動産の企画・開発しか行ってこなかったので、社員にとっては寝耳に水。思わず、あたりからどよめきが上がった。

5期(2015年)までは、土地の境界を整備して宅地開発を行ったり、ロードサイドの事業用地に店舗の建物をつけてバリューアップしたりした結果、売上高が10億を超え、順調に利益を積み上げていた。だが、デベロッパーができる基本的な一通りのことに挑戦した結果、「会社をさらに一段階上に引き上げるため、より大きなプロジェクトに挑戦したい」と思うようになった。

30億円以上の不動産開発で、なおかつこれまでやったことのない業態の物件は何か。そう考えてたどり着いたのが、ホテル開発だった。
当時は大阪を訪れるインバウンドの数に比例して、ホテル需要が急増。2025年に大阪・関西万博が控えているのも後押しとなった。

ホテル開発を行う地として選んだのは、大阪のディープタウン・新今宮。
日本ユニストは元々、大手デベロッパーが扱わないような、西成のニッチな土地の加工を得意分野としてきた。
折しも当時は、リーズナブルな宿を求めるインバウンドが、西成に多く泊まりに来ていた時期。今村は「日本が今後観光立国となる上で、大きなポテンシャルを秘めた地域だ」と目を付けた。
2022年春にはJR新今宮駅前に星野リゾートが開業し、2030年にはJRなにわ筋線が新今宮駅を起点に開通するが、今村が西成でのホテル開発を決めた2016年頃はまだ、そうした動きはなかった。
結果的に、当初の読みが当たったということだ。

初めてのホテル開発で成功を収める

初めてのホテル開発として、JR新今宮駅徒歩1分の土地を購入し、約190室を備えたホテル建設を実施。その後、大手電鉄会社に売却し、2018年秋に開業へとこぎ着けた(現・チサンスタンダード大阪新今宮)。

このプロジェクトでホテル開発の知見と実績を得た今村は、「これで得た利益をフルベットして、さらに大きな規模のホテル開発に挑戦したい」と決意を新たにした。前回と同じく新今宮駅周辺で土地を探したところ、通天閣から徒歩2分の距離にあるコインパーキングとして使用されていた土地を発見。前回から時間を置かず、2018年のうちに購入した。
これが、のちに「Willows Hotel 大阪新今宮」が建つ土地となる。

まだコインパーキングだった2018年頃の様子

公開空地や展望デッキを設け、独自性を確立

ハード面の設計では、こだわった点がいくつかあった。
まず1つは、インバウンドの団体客に対応できるよう、大型バスを駐車できる公開空地を設けたこと。バスの乗り入れだけでなく、イベント開催にも活用できるようなスペースを確保した。2022年7月には、通天閣パートナーホテルに認定されたことを機に、この場所は「通天閣広場」と名付けられることになった。

地域を盛り上げるイベントの会場として、度々使われている

もう1つこだわったのは、屋上の活用
屋上は安全面を考慮して立ち入れないようにしているホテルが多いが、当ホテルは通天閣を間近に臨める立地にあるため、展望デッキをつくり、他ホテルとの差別化をはかった。

何より特筆すべきは、上質な空間づくりだ。
従来の新今宮は安価でコンパクトな宿が多かったが、そのイメージを一新するような、洗練された内装に仕上げた。活気あふれるにぎやかな街にありながらも、ホテルに一歩足を踏み入れたら、外と違う雰囲気を味わえるような空間となっている。

コロナ禍を機に、自社運営を決意

2019年10月には、工事が開始。後は開業に向けて諸々の準備を進めるのみだと意気込んでいた中、その半年後に新型コロナの感染が世界中で拡大した。
インバウンドでごった返していた新世界の街からも、人影が消えてしまった。ホテル業界は煽りを受け、運営を委託するはずだったハウスキーピング会社からは、受託を辞退される事態に陥った。

窮地に立たされたところで立ち上がったのが、現在支配人を務める志方だった。志方は2018年より日本ユニストに参画し、OTA管理や予約管理システムの構築、パートナーのアライアンス選定を担っていた。ホテル業界で40年以上の経験を積み、過去には有名ホテルで支配人も務めていた人物だ。

その志方を中心に、自社運営できる組織をつくることを2020年末に決定。
そこからホテルマンの採用活動を本格的に開始し、アルバイト含め10人がオープニングスタッフとして集まった。2021年3月に竣工したが、観光需要が依然低迷していたため、開業日としてマイルストーンを置いたのはその年の9月。それまでは、水面下で準備を整える時期とした。

緊急事態宣言中に開業した理由

9月になってもコロナ禍は収まる気配がなく、向かい風が吹く中で迎えた開業の日。地域にさりげなく溶け込めるように意識した、静かなスタートだった。

緊急事態宣言中にもかかわらず開業に踏み切った理由について尋ねると、今村はこう答えた。
「アフターコロナや万博に向けてしっかりと下地を作り上げて、成熟したホテルになるためには、感染収束を待つのではなく、早く動き出す方が良い。そう判断した」
引き合いに出したのは、日本ユニストのコアバリューの1つ、「まずはやってみよ」。「ホテル運営に関しては素人なので、外部環境の変化を待つのではなく、経験を積むためにもまずはやってみよう、と思い切った」と明かす。

ホテル開業時の記念写真

ホテルマンの接客が評判に

開業直後の2021年秋は、稼働率が1桁台という厳しいスタート。
休館日を設けるなど最初からフル稼働はせず、小さく回していった。

お客様の数が少ないからこそ、1人1人にきめ細かく心のこもった接客をお届けしよう。チェックインが終わりそうだと察したら、一足先にエレベーターのボタンを押す。雨の日は屋内に入る前に、さっとタオルで荷物や服を拭いて差し上げる。
志方はスタッフ全員に「自分で気づき、考え、行動する」という心構えを共有し、さりげない気づかいができるように伝えてきた。

すると楽天トラベルやじゃらんなどで「フロントの対応が親切で丁寧だった」「皆さん感じが良くて、気持ちよく旅行することができた」との口コミが増加。総合評価のスコアも高得点をいただくようになり、その年のクリスマスには初めて満室となった。徐々にホテル運営が軌道に乗り始めた。

お客様のニーズに合わせ、柔軟に変化

2022年前半はオミクロン株の影響で、手の打ちようのない状況が続いたが、5月頃から再び需要が回復。
その頃、傾向として見えだしたのが、休日に1人で宿泊するお客様の増加。
従来の1人客のペルソナは、平日に出張中のサラリーマンだった。しかし、京セラドームや大阪城ホールでライブがある土日に、1人で宿泊する女性客のシングルユース(※)が多いことが判明した。
(※ベッドが2台あるツインベッドの部屋や、ダブルベッドが1台の部屋に、1人で宿泊すること)

当時はちょうど、大規模イベントの開催が再開され始め、2年間我慢していたリアルの”推し活”をしようと動き出す流れが起きていた。
この動向をキャッチし、シングルルームを2倍に増室。
ファミリーなどグループ客の利用が多い夏休み期間中でも、シングルの需要は途切れることなく、高稼働率を叩き出した。

通天閣パートナーホテルに認定 各種イベントも開催

通天閣完成から110周年となる22年7月3日には、通天閣初となる公式パートナーホテルに認定。周辺飲食店とコラボしたお食事プランなど、地域貢献を大事にする姿勢を評価していただいた結果だった。
営業開始前に通天閣に入場できる「アーリーエントリー」を導入するなど、これまでになかった付加価値の提供も可能になり、ホテル運営の幅が広がり始めた
先述の「通天閣広場」では、音楽イベントやグルメイベントなどを定期的に開催し、コロナ禍で失われた活気も取り戻しつつあった。

今村(左)と通天閣の高井社長による熱い握手

強豪揃いのエリアで、集客人数3位に躍進

旅行のベストシーズンかつ、全国旅行支援の恩恵を受けた22年秋は、毎週土曜は満室となる盛況ぶり。
年が明けて23年に突入してからは、楽天トラベルの大阪ミナミエリア(なんば・心斎橋・天王寺)812店舗の中で、集客人数3位にまで躍り出た。大手やチェーンがひしめき合う激戦区で、無名ブランドながら上位に食い込み、健闘を見せている。

稼働率上昇に伴い、人手不足感が増していたため、しばらく行っていなかった採用活動も再開した。この2ヶ月間で国際色豊かな仲間が増え、組織としてさらなるパワーアップが期待できるところだ。

開業3年目を迎える2023年、さらなる飛躍と地域貢献を行っていきたいとスタッフ一同、決意を新たにしている。

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