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小学生が熊野古道をガイドする「語り部学習」に参加してきました!

こんにちは、日本ユニスト広報室です。
当社が宿泊施設を運営している和歌山県の世界遺産・熊野古道では、地元の小学校で子どもたちが語り部(歴史などを解説する山歩きガイド)のノウハウを学び、実際に語り部として地域の人々を案内しながら山を歩く「語り部学習」という取り組みを行っています。
子どもたちが文化的・歴史的な遺産がある地元のことを紹介できるようになり、地域への誇りや愛着を持ってもらえるようにと実施している、全国的にも珍しい取り組みになります。

この語り部学習に昨年12月、日本ユニストから5名が参加しました。半日かけて行われた学習体験について、どのような内容だったのかなどをレポートします。

小学生24人が小さな語り部に

語り部を務めたのは、田辺市立本宮小学校の24人(5年生12人・6年生12人)。校区内には熊野本宮大社があり、熊野古道が身近な環境で育った子どもたちです。
今回案内してもらうのは「大日越え」というコース。約 2.6 ㎞、標高 369mと、熊野古道の中でも歩きやすい山道です。
集合場所となった湯の峰温泉では、まず最初に、小学生も大人も参加者全員が自己紹介と挨拶をしました。当社のほかには、地元の語り部や和歌山大学教員、小学生の保護者ら、隣の校区の小学校に通う子どもらが参加していました。

小学生の皆さんは少し緊張した面持ち。実際に語り部をされている方からずっと指導を受けてきたので、この日はこれまでの練習の成果を発表する大事な日です。山歩きを始める前に、準備運動からしっかり仕切ってくれました。ここから主導となるのは学校の先生ではなく、子どもたちです。

大人と子どもが交互になるように列を組んで、いざ出発!

熊野古道に関する説明はすべて頭の中に

出発地点となる湯の峰温泉の入口では、歴史的な資料を掲げて、江戸時代から全国的にも格の高い温泉として有名だったこと、世界遺産の中で唯一入浴可能な温泉だということを話してくれました。温泉卵や温泉野菜をつくるのがおすすめなど、ちょっとした楽しみ方も教えてくれます。

驚いたのは、皆さんカンペなどを見ずに、すべて文章を暗記していること。
細かい話や難しい話がありながらも、スラスラと話す姿は大人顔負けです。話す人と、紙を掲げる人との連携もバッチリでした。

気配りやサポートを忘れず、安全な山登りを

湯の峰温泉を抜けたら、いよいよ山の中へ。
山道に入る前に「急な坂道が多いので、足元に気を付けてください。植物は勝手に取らないようにお願いします」とのアナウンス。
「しんどくなったら、いつでも言ってください。ケガなく楽しく行きましょう!」と心強い一言も。

登り始めると急な坂道が多くて、息が上がることも。リハーサルのために子どもたちはすでに一度登ったそうで、みんな慣れた足取りで山道を進んでいきます。

途中にある湯峯王子という社で、説明タイム。
道中の無事を祈って人々が参拝した小さな神社で、毎年4月に「湯登神事」という行事があるそうです。2歳児が父親に肩車されながら大日越えをするという神事で、説明してくれた男の子は「僕も2歳の頃に参加した記憶が、今も少し残っています」と話していました。

再び急な登り坂を進み、一度休憩。みんな疲労が溜まってきたところでしたが、「ここで気合を入れてもう一度頑張りましょう!エイエイオー!」と気勢を上げてくれて、元気が出ました☺

熊野古道にまつわる伝説を、劇で再現

鼻欠地蔵というお地蔵さんでは、この地蔵にまつわる伝説を、劇で再現して見せてくれました。

江戸時代に、左甚五郎という彫刻師が湯の峰に仕事に来ていた。甚五郎のもとに毎日弁当を届けていた弟子は、湯の峰の峠にあるお地蔵さまに弁当の中身を少し供えて、師匠の安全を祈っていた。
しかし甚五郎は弟子が盗み食いしていると勘違いし、弟子の鼻を工具で削いでしまった。甚五郎がその日、峠を通ると、お地蔵さまの鼻が削がれたように欠けていたという。

甚五郎役と弟子役どちらも熱演で、見入ってしまいました。

その後現れたヒノキの巨木については、熊野本宮大社の檜皮葺の屋根に樹皮が使われているため、木の表面がツルツルになっていると教えてくれました。

歩いている際は、「滑りやすいので気を付けてください」などと、列の先頭から最後尾まで順に声をつないで呼びかけてくれます。語り部として、古道にまつわる知識を解説するだけでなく、参加者の安全確保にも気を配ってくれました。

本宮・大斎原に到着

約2時間の山歩きを経て、本宮へ到着。
山から大斎原(本宮大社の旧社地)の間にある「私語橋」では、本宮の神様と新宮の神様がささやき合って会話したことが、名前の由来になっているそうです。

熊野詣のクライマックス・大斎原では、熊野本宮大社の歴史などを詳細に教えてくれました。
熊野本宮大社はかつて川の中州にありましたが、橋がかかっておらず、参拝者は歩いて川を渡り、身を清めていました。しかし、1889年に大水害が起き、社殿が流出。現在の場所に社殿を新しく移し替えたそうです。

「130年前に起きた水害のことを忘れず、また被害が出ないように、これからも対策をしていかなければいけません」と力強く話していました。

真ん中の石畳は神様の道なので、参拝者は脇を歩きます

熊野にまつられている神様や、熊野の神の使い・八咫烏(ヤタガラス)などについても、詳しく説明してくれました。「自分たちの住んでいる街に、貴重な世界遺産があることに誇りを持っています」と話す姿に、頼もしさを覚えました。

最後は参加者全員から、温かい拍手が子どもたちに送られました。学校の先生からも、「リハーサルよりもハキハキと説明できていたり、危ない山道でこまめに注意を呼び掛けたりと、よくできていました」と、お褒めの言葉がかけられていました。

参加を終えて

和歌山は少子高齢化が進み、子どもや若者が減りつつある地域です。当社が熊野古道で運営している宿も、働き手が少ない地域でも持続可能なように、常駐スタッフは置かず無人で運営しています。

そんな中で、地域の将来を担う子どもたちが、地域の歴史や文化についての知識を深めて、他者に伝えられるようにする学習は大変意義深いと感じました。
大人になったら、地元に残る人もいれば、都会へ行く人も出てくるでしょう。将来の選択肢がどちらであっても、本宮でのこの学びはきっと地元について語る際に活かされ、アイデンティティーのベースとなるのではないでしょうか。他の地域では体験できない貴重な学びの機会を、これからもずっと続けていただきたいと思いました。

最後に、本宮小学校の皆さん、素敵な体験をありがとうございました!
地元を誇りに思う気持ちを、ぜひ下の世代にも引き継いでいってください!


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