曖昧な「形容動詞」という品詞

学校で習う国文法では、品詞分類の中に「形容動詞」というものが当たり前のように一つの品詞として立てられています。しかし、この「形容動詞」という品詞は、絶対的なものというわけではありません。すなわち、どのような文法体系であっても「名詞」や「動詞」などは欠かせないものであるが、「形容動詞」は必ずしも必要ではないということです。

今回はこの「形容動詞」について、改めて考えてみたいと思います。

国語辞典での形容動詞の扱い方

まず、各々の国語辞典で品詞として形容動詞を立てているかどうかについて見ます。

多くの国語辞典では学校文法に倣い、形容動詞を一品詞として立てています。しかし、そうではない国語辞典も少なからず存在するのです。

テレビにもよく取り上げられる中型国語辞典である『広辞苑』(岩波書店)では、形容動詞は「名詞+だ」であるとして、名詞に分類しています。

また、日本で一番売れており去年の11月には第8版が出された『新明解国語辞典』(三省堂)では、「編集方針」の中に「名詞・副詞のうち、サ変動詞またはいわゆる形容動詞としての用法を併せ有するものは…」とあります。すなわち、「いわゆる形容動詞としての用法」についての言及はあるものの、形容動詞を一つの独立した品詞としては考えず、あくまで名詞の一用法であると捉えている、ということです。

このように、形容動詞は一品詞とは捉えない文法体系も存在するのです。

形容動詞の曖昧性

それでは、なぜ形容動詞を立てない文法体系が存在するのでしょうか。そこには、形容動詞という品詞の曖昧性が関わっていると考えられます。

次の2文では、どちらも「平和だ」という表現が用いられていますが、品詞が異なります。前者は「とても」に修飾されていることから、形容動詞だとわかります。それに対し、後者は形容動詞とは考えにくく、名詞+「だ」と捉えるのが一般的でしょう。

この国はとても平和だ
国民が求めているのは平和だ

また、「自由」を連体修飾させる際には「自由の」と「自由な」という形がありますが、前者の場合は「自由」という名詞、後者の場合は「自由だ」という形容動詞になります。

このように、形容動詞の名詞との近接性が、「形容動詞を一つの品詞として捉えるかどうか」ということにまで繋がっているのだと言えます。


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