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外国語学習/日本語教育

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海外で継承語教育、ドイツ人に日本語教育をしていることから考える外国語学習についてあれこれ。
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2024年6月の記事一覧

【高校生継承語クラス】主人公の心情を知るロールプレイ

数週間前にクラスで考えた、「登場人物の心情の変化を知る」というめあてを達成する方法の図式化とロールプレイ。 昨日がこの単元の最終日だったので、取り組んでみた。 結果としては時間があまり取れなかったので、駆け足になってしまって残念だったから、次回はもっとがっつりできるように、私も準備しようと思った。 方向性は悪くないと思った。 読解のときにすでに教科書にない情報について考察していくのが好きだ。 例えば主人公の文子は何才なのか、何を着ているのか、どんな性格か。 教科書にあるこ

「知れる」という人の気が知れない

小5の国語の授業では、毎週作文を宿題に課している。 何度か注意しているのだけど、「知れてよかった」という表現をする。 ひょっとして、私が間違ってる?!と思って、調べてみたら、やっぱり間違ってないけど、どうやら最近若い人たちの中では「知れる」という表現が使われているらしい。 「知る」という動詞は確かにやっかいだ。 日本語を教えているときも、「食べますか」「はい、食べます」「いえ、食べません」のような使い方ができない。 「知りますか」「はい、知ります」「いえ、知りません」とい

「バナナでりんご」なドイツ語のund(and)

昨日の大学の授業で、複数の形容詞が重なるとき、1つ目の形容詞は「-て/で」になることを教えた。 い形容詞(学校文法の形容詞)は、「おいしくて、安い」、な形容詞(同形容動詞)は、「きれいで、元気」のように。 名詞もな形容詞と同じく、「-で」でつなぐ。 以前、動詞の重複も「勉強して、寝ます」のように、1つ目が「-て」になることは学習済。 そもそも第1課で助詞「と」が出てくるときから、口を酸っぱくして「と」は「名詞と名詞」にしか使えません!と言っている。 なぜなら、ドイツ語のu

打ち言葉、「打ち文化」のコミュニケーション

のっけから、暗号文の登場です?! これは、昨日聞かれた学生の質問で思いつきました。 その質問とは、 「日本語には横書きと縦書きがあるが、縦から読むのか、横から読むのがどうやって識別するのか」 というものでした。 まあ、上の文は句読点の位置がおかしいですが、実は縦書きに読むと意味を成すように打ちました。 (句点がとてもおかしかったので、半濁点で代用しました。) すぐに読めましたか? 日本人は誰もそんなことを思いもしないでしょう。 1年生を何度か持ったことがあるけど、子ども

小5「言葉の意味が分かること」

5年生の説明文読解単元「言葉の意味がわかること」(今井むつみ著)は、私の好きな単元の1つ。 改訂前の「生物は円柱形」もよかったなあ! だから、変わってしまって残念だったけど、補習校のように在外にいる子にとっては、「ことば」という切り口での話は面白いだろうと思う。 著者は、「言葉の意味が分かる」というのは、点でなく「面」でとらえるべき事項だとして、いくつか例をあげている。 例えば「コップ」。 どんなものを見せれば、「コップ」の説明にふさわしいか。 取ってのあるものかないものか

【高校生継承語クラス】小説読解の「めあて」達成のために

先週、子どもの運動会を見に行くためにお休みをいただいた高校生の継承語クラス。 代講を補習校元同僚の友人に頼んだら、Back numberの「わたがし」を使った「人称」や場面設定などの話をしてくれた。 (以下、会員登録ないと詳細見られませんが・・・) そんなわけで、昨日は久しぶりに教科書の小説を読む。 「ドライクリーニング」(吉田修一作) めあては、「現代を舞台とした小説を読み、情景描写や登場人物の心情の変化を表現に即して捉える」。 まず、先週の復習としてごく簡単に教科書「

「ですます」体とDu(あんた)の矛盾

補習校で教え始めて、しばらくして、子どもたちの日本語のインプット絶対量がかなり少ないと気付いた。 日本にいれば自然に耳に入るような言葉が、外地では意図して親が話さなければ、子どもが覚えることはない。 簡単な例でいえば「ですます」体。 国際家庭の子女であれば、片親だけが日本語母語話者で、その人としか日本語で話をしないのだから、「ですます」体なんて耳にしないのだ。 まあ、もちろん絵本を読み聞かせるなどで、ゼロではないのだけど。 低学年のときは、取り立てて何も思わなかったけど、

外国語視点での「あげます・もらいます」

大学の海外メンバーの会を通じて、お声がけをし、文型の勉強会をしました。 教育実習のご予定が近い方がいたので、教科書「みんなの日本語」7課の「あげます」「もらいます」をとりあげました。 ドイツ語 ・「あげます」と「くれます」が同じなので、「私にあげて」などの誤用 ・「先生にあげます」(渡します)などの誤用 ・ドイツでよく使用する「geben」(give)「bekommen」(get)は一時的な受け渡しで、所有権の譲渡がなくても使えてしまう。 ・「宿題をもらう」などの誤用