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「冬の思い出」

 世間はそろそろクリスマスを意識し始める季節になってきた。という訳で、一人の探検部員である僕(庄子)が経験し、印象に残っている、冬にまつわる2つの思い出(探検部としての活動)を紹介しようと思う。

1) そうだ、海に行こう
 ある年の冬、普段埼玉に住んでいるせいなのか、突然「海」を見たくなった僕はカヤックで久喜から利根川に乗って「海」を目指し、その行程を始めた。しかし渇水期のためか、どんなに漕いでも川岸を散歩するおじさんに抜かされるほどカヤックは進まない。終いには向かい風の冷たさにパドルを漕ぐ気力が奪われ、変化のない景色にうんざりさせられる。やはり、電車か車で行くべきだったとようやく後悔した3日目、自分に呆れた僕は久喜から70km地点(全行程130km)で諦めた。
        やはり、カヤックツーリングは夏に限る。

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2)「かまくら」に泊まろう
 毎年冬になると凍るX湖は、何故か凍っていない。その光景を見るやいなや、S先輩は苦虫を噛み潰したような顔をしている。彼は、凍った湖をカヤックで砕氷艦「しらせ」が南極海の氷を突き進んだような、そんな気分を味わいたかったらしい。以下は、そんな活動での思い出「かまくら」についての話だ。
 急に風が強くなってきた。湖面は荒れ狂い、のんびりと降っていた雪は勢いよく僕らの防寒具に音をたてながら八つ当たりをする。しばらく天候の回復を待ってみたが変化がないので、この日の航行は中止になった。だけど日が沈むまでの時間はある。
         「暇だからかまくらを作ろう」
そんなノリで、誰もいない空き地で黙々と「かまくら」を作る。S先輩が持ってきたスコップとカヤック用のオールで雪をすくって、ひたすら一ヶ所に集める。それを3時間続けると、多分3人ぐらい入るだろう大きさの不恰好な雪の塊ができた。そんな塊を炭鉱夫気分で掘り、中に空洞を作る。途中で崩落事故がおきるも、どうにか3人ぐらいが横になれる広さの「かまくら」が完成した。皆満足そうだ。 

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 その光景は冬山登山で言えば、ビバーグである。我々はテントもあるし、遭難をしたわけでもない。けれども、我々はこの「かまくら」で一夜過ごす事を決断したのである。世間では「かまくら」の中は暖かいというが、あれは嘘だと思う。雪の壁は、冷気たっぷり。唯一頼りになる寝袋は、雪が溶けたせいで濡れている。ただの極寒だ。なので、ガスバーナーで熱々の即席ラーメンとコーヒーを作り、胃に流し込んで、命をつなぐ。そして体が温かくなった僕らはエマージェンシーシートと寝袋に身を包み横になった。それでもじりじりと凍てつく冷気が骨までしみこんでくる。無事に朝を迎えられるだろうか、そんな心配が頭に浮んだ。
 翌朝、目を開けた僕は心臓が動いているのを確認する。
             「あ、動いている。」
それは、普段の日常では感じられない「生きている」という感覚だった。そんな中、他の隊員も目を覚まし、再びカヤックでX湖の旅に戻る事ができた。
 こうして「かまくら」の体験は幕を閉じる。最後に記しときたいことは、「かまくら」の天井は高くしたほうがいいという事だ。朝になったら天井が低くなっており、頭をぶつけたことは今でも忘れられない。

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