マガジンのカバー画像

短編小説

21
運営しているクリエイター

#小説

短編小説 死霊

土手を犬と毎日、散歩する

健康的だと言われるが精神的には

不健康極まりないのだ

歩いても歩いても心は晴れない

犬の散歩が日課だった

今は僕の日課になっている

妻がよそ見をした車に引かれた……

この散歩中に……

だから散歩が僕の日課になった

そして

妻が引かれた時と同じ道を毎日歩いている

なぜ?

分からない

いや、

本当は分かってる

死んだ妻に今もすがっているのだろう

もっとみる

バレンタインその後

突然だが、私は自分の夫をつけている。

それは決して浮気を疑っているからではない。

これは復讐であり、奇襲である。

なぜ復讐であり、奇襲なのか?

それは私が海外出張の話を受けた時に彼は私を応援してくれ、是非行くよう言ってくれた。

それが……それが……

今回の発端である!

私は引き留めて欲しかったのだ。

「君と離れるなんて出来ない。」とか、「君がいないと生きていけない。」とか、「どうし

もっとみる

バレンタイン前日

私には娘がいる。

もうすぐ高2だ。

妻は現在、海外出張している。

妻も娘もとても可愛い。

二人とも多少、元気が良すぎるが…

その二人がバレンタインが近づくにつれ、様子がおかしくなっていた。

娘はまるでアスリートのような顔になり、妻は電話を掛ける度にテンションが上がっていった。

異様な空気に我が家は包まれていた。

私は意を決して娘に聞いてみる。

「明日はバレンタインだよね?誰かに渡

もっとみる

短編小説 ヒーローと怪人

控え室

ガチャ

「おはようございま~す」

「おう、お早う」

「いやぁ、昨日飲みすぎちゃって朝起きんのきつかったっす。」

「あんまり飲みすぎんなよ。ヒーローなんだからよ。」

「そうなんすけど、久しぶりの休みだとやっぱ飲んじゃいますって。ヒーローも息抜き、怪人も息抜きってね。山田さんは?」

「ん、あぁ、え~と。人に会ったりしてたな。」

「どしたんすか?歯切れ悪いっすね」

「ん、んなこ

もっとみる

短編小説 サプライズ

どうしよう
先週からずっと悩んでる。
彼の部屋を掃除したときに見つけてしまった。

そうゼクシィーを!

親友の美樹とかに相談したりして!
出た結論は!
つまり、そういうことだよねっ!
男の人が買うってことは!
付き合って3年だし!
色々あったし!
もう二人とも28だからそろそろって思ってたから、すごくうれしい!

「だが!」

ほんとうにそうなのか?

優しいし、顔もまぁまぁだけど自主性はあまり

もっとみる

短編小説 「結末」

この人が犯人だなんて。
この人、つまり山田サトさんが人を殺していたなんて分からなかった。
何度も会っていたのに。

高齢の女性である。
孫の敵とはいえ、二人の人間を路上で殺すなんて。
そして目の前に居る人、サトさんに話しかける。

「桜子さんはここにいますね」
玄関でサトさんはセーターの袖を巻りながら、笑顔で答える。
「ばれちゃったのね」
「もうやめにしましょう」
心から訴えた。
「それは出来ない

もっとみる