短編小説 サプライズ

どうしよう
先週からずっと悩んでる。
彼の部屋を掃除したときに見つけてしまった。

そうゼクシィーを!

親友の美樹とかに相談したりして!
出た結論は!
つまり、そういうことだよねっ!
男の人が買うってことは!
付き合って3年だし!
色々あったし!
もう二人とも28だからそろそろって思ってたから、すごくうれしい!

「だが!」

ほんとうにそうなのか?

優しいし、顔もまぁまぁだけど自主性はあまりな~という奴だ。
誰かの入れ知恵か?

でも、そんなことが?
モヤモヤする。
聞こうか?

いや!

こういうのは聞けないしな。
ベッドの上でのたうち回る。
先週からずっとこんな感じで落ち着かない。

「はぁ~ 待つしかないかなぁ」
とため息をつくとLINEが来ていた。
彼からだ

金曜、家に来ない?

キタ!いや、これは来る。
来るでしょ。
プロポーズが!

そして、この自然な雰囲気は…

サプライズ!

よし、気取られてはならない。
サプライズは受ける側も重要だ。
自然に…

いいよ。じゃあ、7時にいくね。

了解

その後、他愛もないやり取りをしつつ、気合いを込める。
笑みがこぼれた。
結婚かぁ

そして当日。

いつもの服装で彼の家にいる。
7時ちょい過ぎ。
バッチリだ。
チャイムを鳴らすと彼が開けてくれる。
これまたいつもの服装だ。

「外、寒かった?」
「ううん、そうでもなかったよ」
部屋に入る。

いつもの部屋だ。
コートを脱ぎ、掛ける。
ソワソワしちゃうな。
彼は完全にいつもと同じだ。
ふふっ知らなかったよ。
君がそんな演技派だったとは!

「ご飯食べて来た?」
「ううん、食べてこないからちょっとお腹すいた」
よし、いつもと同じだ。
自然な流れ。
「そういうと思って、作っておきました。餃子~」
彼が持ってきたのは焼く前の餃子だった。

餃子!?
このあとプロポーズなのに!?
プロポーズのあとお泊まりする予定できているのに餃子!?

もしかして私の勘違い?
いや、待つんだ私。
彼はあくまでサプライズをするため、あえての餃子の可能性がある!

私はしれっとホットプレートを用意して、焼き始める。
彼の方は、ご飯や味噌汁等を用意する。
準備が整った。

ご飯を食べる。
美味しかった。
美味しかったけど、必ず歯磨きしようと決める。




なにもない。




なにもない。




ただ、テレビを見てるだけで時間が過ぎて行った。

他愛もない話をしながら時間だけが過ぎて行った。

悲しみを感じる間もなく、空しさが頭に溜まっていく。


ここまで来るとプロポーズはないと分かってしまう。
極めつけは今現在である。
「寝てるし。」
泊まることを伝えても彼の反応はいつもとだいたい同じだった。
そして、いつの間にか彼はソファで寝ていた。

ふふっ知ってたよ。君の甲斐性のなさは。

えぇ、知ってましたよ!

メラメラと怒りが沸いてきた。

空しさを燃料に燃え盛る。
頭が熱く、喉が詰まった感じがする。

そして、私は彼の方を揺さぶる。
「起きろ!!」
「ぇっ あ、何」
寝起きの彼を見て、益々頭に来る。

「ゼクシィー買ったんでしょ!そしたら、言うことがあるんじゃないの!」

「えっあっんえ、デクシィ?」
すっとぼけて!
「ゼクシィー!」
掴んだ彼のTシャツのから、ぶちぶちと音がする。

「えっあっ」
「言うことあるよね」
恐らく私はすごく恐ろしい顔をしている。

だが怒らせたのはお前だ!

ギリギリ締めていると彼が
「待って!苦しい!説明する!説明するから!」

「このまま、聞く」
声に光はない。
「で?」

彼はヒィヒィ言っている。

「あぁ、もう!しょうがないから言うけど!」

「サプライズを計画してたんだ!」

んっ?

「今、君のアパートにお義母さんとか美樹達とか集まって、色々やってるの!明日、お義母さんに呼ばれて二人でアパートに行ったら、みんなが出て来て、サプライズプロポーズするはずだったんだ。」

んっ!?

「美樹が計画したんだ。わざとゼクシィーを見せて、サプライズを匂わせて。それで、家に来てもらってなにもない。がっかりしたその後にサプライズがあれば絶対に成功するって」

つまり、これはあれだな










「まどろっこしいよ‼」
#小説 #短編 #短編小説

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