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大晦日……?

 記事は約3分強で読めます。全1470文字。

 下記の記事で予告していた「大晦日」の違和感の話をしておきます。時系列の関係から記事投稿が遅くなりましたが、お楽しみいただけると嬉しく思います。

「晦日」とは

 まず漢字から見ますと、晦日というのは「晦」の日という訳ですね。晦とは何かと言いますと、これは訓読みを「つごもり」と言いまして「もり」を指しております。150年以上昔、まだ太陽太陰暦だったころは年月日の「月」というのはまさしく天体の「月」に基づいて動いていたのですが、この時代の呼称であるということになります。

 当時は新月を1ヶ月の始まりと捉えておりまして、月の満ち欠けと日数が厳密に対応しておりました。下にその例を記しましょうか。

朔:新月を指す。訓読みは「ついたち」。
朏:三日月を指す。訓読みは「みかづき」。
望:満月を指す。十五夜のこと。
晦:月が見えなくなる、新月の前日の月を表す。

 話を晦日に戻しますけれども、これは新月の前日を表すということがこれでお分かりいただけたかと思われます。新月の前日ということは月の最後の日ということになりますね。ところで太陽太陰暦では1ヶ月は何日だったのかお分かりでしょうか?

 中学校の理科で教わることではありますが、月の満ち欠け周期は約29.5日です。つまり大の月が30日、小の月が29日ということになります。そこで、晦日の読みが「みそか」となるのです。どういうことかと申しますと、「三十日」を「三」「十」「日」に分ける。すると、実は3つの漢字はそれぞれ古い読み方で「み」「そ」「か」と読むのです。これが晦日の読みの由縁ということになるでしょう。

「大晦日」の違和感

 さて本題です。「大晦日」ということばの何が違和感をもたらすのか? それは日付です。大晦日とは言わずと知れた12月31日のことですね。ここで古い読み方でこの日付を読んでみましょう。すると「師走しわす三十一日みそかあまりひとひ」となるのです。

 お分かりでしょうか。の部分にご注目ください。そして読み仮名を一緒にご唱和いたしましょう。それでは参りますよ。せーの、「みそか あまり ひとひ!!!」何たることでしょうか。大晦日は「晦日に一日余る日」であるのです。これでは大「晦日」などとは申せますまい。

 いえ、少し間違いを申し上げました。大晦日は確かに12月の終わりの日であり、月が終わる(12月が隠れる)と考えればことは許されるでありましょう。しかしそれは「晦日」であって「みそか」ではない。たとい「大晦日」と紙にスマホに書き記すことができたとしても、僕らは未来永劫それを音として読み上げることができないのであります。

 ああ、何たる悲哀。日本語の哀しきことよ。できることはもはや何も残っておりません。残された道は、自らに矛盾を抱えることを知りながら世間に唯々諾々と恭順し、この矛盾を解決することができないまま往生することだけなのです。

 それでは最後に、常識を備えた日本人に戻るため、「三十一日」の読み方を復習しておきましょう。

三十一日みそか

さいごに

 そんなに深い話でもなかったので、少し大げさにリアクションを取って古めかしく書いてみました。「世界は調べれば調べるほど分からないものが増えていく」とはよく言ったものですよね。

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