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【読書レビュー】尾八原ジュージ「みんなこわい話が大すき」

こんばんは。PisMaです。

本日は尾八原ジュージ「みんなこわい話が大すき」を読んでいました。

2回に分けて読もう〜と思っていたのですが、面白くて一気読みしてしまったので1回分のレビューです。長めになるかもしれませんがご了承下さい。

では早速、ざっくりとした冒頭のあらすじから。



小学校に通う森宮ひかり。
ひかりは幼い頃から押し入れの中に居る怖くないおばけ・ナイナイと過ごしてきました。ナイナイより恐ろしい現実や母親。ナイナイが心の拠り所だったひかりはおばけが大すき。

「こわいものなんかその辺にころがっている。わたしなんか、お母さんといる間はずっとこわがっている。」
とひかりが言っていたシーンが印象的でした。
こわい話はこわいものに脅かされている実感がない人ほど楽しめるコンテンツなんだろうなと痛感します。人が怖いとおばけが怖いはまた違った恐怖なような気はしますが、わざわざ怖がる必要はない、というのはちょっと耳の痛い話ですね。


そしてクラスの優等生な女王さま、椿ありさ。
彼女はこわい話が大すき。また、椿ありさのやらかした場面を助けたことがきっかけで少し仲良くなり「こわくないおばけを見せてあげる」という約束のもと、ひかりはありさを家へ招くことに。
ナイナイには、押入れの中に入って襖を閉めないと会えない。ひかりの言葉通り、ありさは押入れの中へ。

邂逅するナイナイとありさ。
響くありさの断末魔。ばんばんと叩かれる襖。


全てが終わると、

まるで人が変わったように
ひかりへ笑いかけるありさ。

ここから様々な事象が動き出します。

なかなかに人間関係が複雑で、私にも理解し切れていない部分があるのでなんとなく人物整理も兼ねて書いていきます。

この事件の解決をしていく
「よみご」と呼ばれる盲目の霊能者、志朗貞明。
通称シロさん。
志朗のボディーガード、黒木省吾。
シロさんを頼ってやってきた相談者、神谷実咲。

特にシロさんは黒木を気に入っており、危ない目に合わせたくないという意味で今回の「椿ありさ事件」から何度も手を引くように警告するところが良いですね。
本心かどうか分からず、厄介払いだったかもしれませんが、愚直にシロさんに最後まで付き合い続ける強面の優しい性格の黒木省吾。お気に入りを考えるならこの二人です。ここだけ覗くとバディものでした。

相談者の神谷実咲は不審死を遂げた姉・工藤晴香、甥・翔馬の死因の謎を解くため、シロのもとへ相談にやってきます。不審死の原因を探るうちに浮かび上がってきた人物は姉の夫の前妻・森宮歌枝。

森宮ひかりの母です。

私この構図のお話す〜んごい好きなんですよね。全く別のポイントから話が二つ同時並行で始まって、物語の中盤でバチっと共通点が見つかる構図。惚れ惚れします。脳の中がパチパチします。

森宮歌枝は工藤晴香と翔馬と呪い殺したと疑われたようです。なんで森宮母が呪術とかそんなことわかんねん〜と思ってたら、彼女はシロさんの師匠・森宮詠一郎の娘でした。霊能者の一人娘。そりゃ呪術にも詳しいわ。ついでにシロさんと森宮歌枝は肉体関係があり、それが原因で師匠と絶縁状態になってました。ここの肉体関係が鍵です。

全ての話が繋がっていき、最後はありさに入り込んでいるナイナイとシロさんの一騎打ちとなります。ナイナイは凄まじく強く、シロさんの用意した秘密兵器も壊されてしまいました。

ナイナイの正体。
それは、少し前に森宮歌枝に作られた「きょう」。霊能者に払われ、森宮家の押入れで弱り隠れていたところを森宮ひかりに見つかり「ナイナイ」の名前をもらって徐々に力をつけていたのでした。

「きょう」は自然物と人工物の2種類。
前者は悪感情が埃のようになって現れるもの。後者は人の身体を素体にして作られる人造の呪物であり、とっても厄介なんだとか。
最後はありさの中に巣食っていたナイナイを退散させることに成功し、物語は終局へと向かいます。

わたしの読みが甘い気がして、ほんとうに申し訳ないんですけど…森宮歌枝はシロさんを誑かして子供を作り、その子供に自分の一番憎い女「神谷晴香」と名づけ、殺し、その子供を素体にしてナイナイを作り出していたってことですか…?

悍ましすぎやしませんか?最強のきょうは浮気相手の名前をした好きでもない男との子供て。
えぐいです。


コトリバコや丑の刻参りなど、ひとを呪うために人体の一部を利用し呪う風習というのは昔から存在しています。
本作は怪異の恐ろしさと人の恐ろしさの両方が丁寧に描かれており、ひとの業や怨讐から怪異が生まれてくる構図に説得力があると感じました。

また全体的に、意図して漢字表記出来るものをひらがなで表記する…いわば「ひらかれている」言葉が多く、すきやきらい、きょうなど物語に大事な単語がどこか優しい印象でまとめられているのが不思議な感覚でした。
背筋がぞくっとする怖さをふんだんに纏いつつ、すこし柔らかい雰囲気が漂う本作。良書に出会えたこと嬉しく思います。

面白かった部分と感想を言いたい部分が多く、要約気味になってしまいました。長くなってしまったので、今回はこのあたりで。
「みんなこわい話が大すき」
ぜひご一読していただければ幸いです。


お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
わたし、こわい話は大すきです。

おやすみなさい。







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