見出し画像

【読書レビュー⑦】尾八原ジュージ「巣」

こんばんは。PisMaです。

本日も「巣」の続きを書いていきます。
前作はこちらから読めますよ。


前回は父と謎の女性が門扉のところで話しているのを見かけたところで終わりましたね。二人はなんの話をしているでしょうか。


門扉のところまで向かう美苗。父が女性に絡まれているのかと思いきやそうではないらしく。
父は女性に家の中へ入るのを勧めているようでした。状況を確認したい美苗は、父に彼女は誰なのか尋ねます。

「美苗。彼女は鬼頭(きとう)さんといって、霊能者だそうだ。ここを買った不動産屋に紹介してもらった」

父の口から出てきたのは突拍子もない「霊能者」
という単語。霊能者と紹介されたのにも関わらず、鬼頭は「私は弱いので無理です」といった旨のことをつっかえながら話し続けます。はて、弱いとは。

真面目でリアリストな父が霊能者とまともに取り合っている。美苗にとっては違和感なようで、父も「この家には何かある」と考えているのでしょう。
鬼頭は「これだけお願いします」と言いつつ、大きめのぬいぐるみを取り出します。一見普通のぬいぐるみを門扉越しに父に押し付け、「あの部屋に入れてください」と伝えてきます。

「ーー怒られませんか?」

美苗の口からついて出た言葉。父は顔をしかめていましたが、鬼頭はその言葉にぱっと顔を明るくし「それなら大丈夫だ」と宣言するのでした。「それは時間稼ぎにしかならない、準備してからまた来る」と口走りながら、鬼頭はばたばたと帰っていきました。

父は貰ったぬいぐるみを早速あの部屋に置きにいきます。部屋にぬいぐるみを収めた父に、まさかすぐ実行するのかと美苗は驚きました。
父は「母さんが泣くんだ、なにかがベッドの周りを回ってたって」と案じている様子で、母の心配する気持ちからも早く現状を解決したいと悩んでいるようです。美苗は皆で別々に暮らすことを提案してみるものの、父は綾子のことも気になるようで美苗の提案にすぐ首を縦には振れない心境でした。

父は綾子にすごくお世話になっています。
本来ならば新婚で圭一(美苗の兄)と二人で暮らしてもおかしくないのに、すぐ一緒の家に入ると希望してくれている。そのうえ認知症の入った自身の母も看病してくれている。家のことも全部やってくれている。
綾子が担う仕事が多すぎて、綾子が動けなくなると生活がまるっきり不便に変わってしまう。父も密かに「綾子さんが妊娠したら大変だな」と思っていました。最悪な祈りが通じたと見るには余りにも無粋ですが、三度の流産をしてしまった綾子は子どもを設けるのを諦めます。

父も美苗と同じことを考えており、それを知ってなんだか美苗は嫌気が差したようでした。

桃花がお昼寝から起きた泣き声が聞こえてきたため、父との会話を切り上げた美苗。
桃花のおやつの準備をしていると、電話がかかってきます。電話を取りに行こうと美苗が廊下に出ると綾子が電話に出ています。綾子の「もしもし」という言葉に続く電話の音声はありません。

無言電話。

綾子が電話の音声を待っていると、祖母がゆっくりと現れ綾子の後ろに立ちます。綾子が電話を切り、祖母に話しかけます。

「何にも言わなかったのよ、おばあちゃん」

祖母はにこにこしながら綾子の手を引っ張ります。

「うんうん、よかったねぇ。嬉しいねぇ」

綾子はそう言いながら祖母の手を握り返すのでした。


父が真剣に家の怪奇現象に悩んでいるのが分かりましたね。母が離婚しようとしているのを知ったらどんな心境になるのでしょうか。また、皆で綾子に「子どもを産むな」と言う無意識の呪いがかけられているようで怖いです。
綾子も綾子でなぜここまで献身的に家族の世話をするのか少し不思議です。

そして最後の無言電話。祖母は何か知っているんじゃないでしょうか。

本日はここまで。また次のレビューでお会いしましょう。

お相手な黄緑の魔女PisMaでした。
あなたがそのままなら楽なのに。

おやすみなさい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?