見出し画像

マツコ・デラックスと有吉弘行によせて - たまにのエッセイ テレビとラジオ no.9

 社会情勢を目にしすぎると気持ちが下がる一方なので、あまりテレビは見ないようにしておこう。そう思ってしまうこともある。そんな日々でも僕には楽しみにしているテレビ番組がいくつか存在していて、気がつくとその番組には明らかな共通項があった。それはマツ有!マツコ・デラックスと有吉弘行が出演しているのだ。

 この2人といえば、テレビ朝日『マツコ&有吉 かりそめ天国』。視聴者からのメールに対して2人がおしゃべりするフワッとしたコーナーにはじまり、視聴者が叶えて欲しい欲望を芸人が体験するコーナー、みんな大好き飯尾No.1やガチガチランキングなど、週ごとに違うコーナーが展開される。ハズレ回はなく毎週安定して面白い。この面白さは深夜枠で放送されていた時の前身番組『マツコ&有吉の怒り新党』からだ。その頃は視聴者から送られてくる怒りメールに共感できたものを採用、できなかったものを不採用にするという内容で、今のメールコーナーのベースにもなっている。マツコが幹事長、有吉が政調会長、お便りを読む夏目三久が総裁秘書、番組プロデューサーが総裁という肩書きで進む番組設定もなかなかイカしていた。視聴者のお便りについて好き勝手に盛り上がってくれるというラジオっぽい時間が、映像として惜しみなく流れる余裕が心地良い。

 マツコのみが出演する番組も好んでよく観ている。とくにTBS『マツコの知らない世界』。各分野の有識者やコレクターをゲストに招き、今まではテレビで取り上げられる事のなかった話題に光をあてるディープな情報バラエティだ。専門的な少数派の意見に振り切るわけでも、多数派の感覚に付いて突き放すわけでもなく「わたし、嫌いじゃないわよ」といった具合に半信半疑で有識者に寄り添ってみるマツコの様子が、視聴者も一緒に共感したくなるポイントになっている。実に平和な番組だと思う。

 またこの春からレギュラー化した日本テレビ『有吉の壁』は毎週生きていくモチベーションを少し上げてくれているような番組だ。街中のモノや人に溶け込んでミニコントを仕掛けていく芸人を有吉が判定するお笑いド真ん中番組なので、ネタの中身は勿論のこと、ウケ滑り関係なく誰にも損をさせない有吉の立ち振る舞いも格好良くて見所になっている。特に有吉の「ばかだね〜」という賞賛的なリアクションはこの番組で多く、観ていて気持ちが良い。ついでに言うと、デート感漂う有吉と佐藤栞里の2人の衣裳も毎度キュートで楽しみにしている。

 先日「ボクらの時代」の総集編で、今ではあまり見られない程に毒づいているマツコを見かけてゾッとしたところ、マツ有の根源的な共通点はおそらく「毒」だと思った。しかし、近年の2人は「毒の中に愛がある」を通り越していて「毒吐く姿も愛らしい」領域にいるようだ。そんな2人がテレビの中で僕らと同じ視点で笑っている事で、そこら中に流れる不安・不満のムードを少し軽くしてくれているような気もする。

 ほんと、テレビにバラエティがあってよかったよね。

2020.5.20



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?