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2023 双子座の言葉 ケン・ローチ┃答えを求めるのではなく、世界に好奇心を持ち、小さな疑問を拾い、問い続けていく
占星術における12サインは、12か月の季節の移り変わりに照応し、その時期に感じやすい心のテーマがあります。心理占星術家nico (ニコ)が、古今東西の著名人の言葉から12サインそれぞれの象徴を見出し、心理的葛藤と成長を考察したエッセイ。
2023年の双子座期は、個人天体5つのうち、4つが双子座というケン・ローチ(映画監督)に注目。政治活動に熱心であり、一貫して労働者階級や移民の日常生活をリアリズムに沿って描く作品群で知られます。今回は、その作風に、双子座の純粋な好奇心、そして「答えを求めるのではなく世界へ問い続けていく姿」を見出しました。
双子座の言葉
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私が映画のなかで労働者階級の人たちに焦点をあてる理由は、二つあります。
一つ目の理由は、彼らが最高のジョークをもっていて、面白おかしい人たちであると同時に、とてもしたたかだからです。彼らは日々、生活を守るため、生き延びるために闘っています。そして常に、災厄や人生の大きな出来事と隣り合わせです。
富裕層には、何が起きても、問題に対処するだけのお金があります。片や、労働者階級にはそれがないので、工夫をしなければなりません。ですから労働者のほうが、ずっとドラマに満ちていて興味深い。そう、私たち労働者階級は、金持ちよりもずっと面白いのです。
二つ目の理由は、私はもし変革というものがあるなら、それは労働者階級から生まれてくると考えているからです。金持ちから変革は生まれません。労働者階級には大いなる力があります。労働者が生産しなければ、何も生産されません。労働者が輸送しなければ、何も輸送されないし、労働者が提供しなければ、サービスは何も提供されない。労働者階級は巨大な力をもっているのです。
彼らがシンプルに「ストップ」と言えば、すべてはストップします。彼らは機械を動かし、床を磨き、あらゆることをしています。あなたが病気になったときも、彼らが看護をしているのです。彼らには、これらをすべて停止させる力があるということです。
この連載を順序だてて書き進めてみると、本当に視点が変わるものなのだと改めて理解した。牡羊座と牡牛座の段階では、自分と自分を取り巻く環境(人や社会)との境界線があいまいな中で、自分をどう取り戻していくのかが死活問題のようなテーマだったわけだが、双子座になると急に視点が変わる。牡羊座、牡牛座である程度、自己存在というものを確立した後、今度は自分を取り巻く環境に俄然興味がわいてくるのだ。
双子座は、何はともあれ、まず「知りたい」というサインなのだ。理解したいのだ。市井の人々の生き様を通して、生きる力を、生き抜く方法を知りたいのだ。また家族、仕事、政治、社会を構成する要素、その在り方を理解したいのだ。外に広がる世界を知ることで、より自分を理解できるし、「なぜ」と問うことなく疑問をあいまいなままにしておくと、自分自身がおぼつかなくなってしまうのだ。
知る努力をしなければ、自分は存在していないのと同じことなのではないか。
双子座は、よく若者のサインと言われている。年齢でいうと小学生から中学生くらいの義務教育の段階。好奇心旺盛に世界を体験する年齢域が双子座にあたる。
「なぜ雲は白いの?」という子供のような単純な視点で社会を眺めたとき、あまりにも疑問符がつくものが多いことに驚くだろう。
なぜ生きるのか。
なぜ働くのか。
なぜ男女は不平等なままなのか。
なぜ格差はなくならないのか。
ケン・ローチは82歳の時に撮影した映画「家族を想うとき」についてこのように述べている。
主人公のリッキーは、地元の運送会社とフランチャイズ契約を結ぶ宅配ドライバーです。私はその仕事について、何人かのドライバーに直接会って取材しました。そこで驚かされたのが、彼らの仕事の不安定さと、自分たちの慎ましい生活を維持するために働かなければならない労働時間の長さです。
彼らは名目上、独立した自営業者なので、ビジネスのなかで何らかの不具合が生じたときは、すべての責任を負わなくてはなりません。配達用のバンにも不具合は生じ得ますし、それで配送がうまくいかなければ、本部から制裁を受け、大金を失うことになってしまいます。
一方で、彼らの車は最新のテクノロジーによって管理されていて、運転席にはルートを指示したり、顧客の荷物の場所や到着時間を知らせたりする装置が備えつけられています。それによって、顧客は家にいながらにして、走っている車を追跡でき、荷物が時間通りに配達される仕組みなのです。
しかしその結果、何が起こるでしょうか。通りから通りへと忙しく走り回る宅配ドライバーに、大きなプレッシャーがのしかかることになります。技術は新しいものかもしれませんが、搾取の形態は古くからあるものと変わらないのです。
82歳になっても、こうまで繊細に、こうまで新鮮に世界をとらえ、まるで当事者のように憤慨できるのは驚くべきことだ。
年を取ると、大抵は「まあ、そんなこともあるだろう」と諦めと惰性によって物事が見過ごされてしまうところ、ケン・ローチは労働者階級の小さな家族のささやかな日常を追いかけ、苦しいまでの現実を世に問おうとしたのだ。しかも、昨今、日本においても同じ問題(物流の2024年問題)が取りざたされているではないか。
最後に、対談相手の同じく双子座の是枝裕和の言葉を考えてみたい。
僕は映画のなかで何か解決策を提示したり、何かを提案したりすることは恐ろしいことだと考えています。
映画「家族を想うとき」のラストは、そういった意味で必見だ。映画のレビューに「竜頭蛇尾だ!」と書いている人もいたが、私はラストに非常に納得がいった。
実際、問題の解決などどこにもないのだ。労働も続くし、人生も続く。ただそれだけなのだ。そこにどのような納得のいく答えなどあるというのか。
双子座の目標は答えを求めるのではなく、社会を生きる人々に好奇心を持ち、小さな疑問を拾い上げ、それを問い続けることなのだろう。
私も自分の中の双子座と向き合いながら、世界に問いを投げかけ、自分なりの考えを持ち続けたいと思う。世界は「誰も知らない」で満ちている。私は、まだまだ何も知らないのだ。だからこそ、知りたいという熱意をもって、もう一度社会としっかり向き合ってみたいと思う。
ケン・ローチ(Ken Loach)
1936年6月17日生まれ。太陽、月、水星、金星、火星を双子座に持つ。
イギリスの映画監督・脚本家。
政治活動に熱心で、労働者階級や移民、貧困などの社会問題に焦点を当てた作品を製作している。『ケス』(1969年)は英国アカデミー賞作品賞と監督賞にノミネートされた。『麦の穂をゆらす風』『わたしは、ダニエル・ブレイク』パルムドール受賞。俳優の自然な演技を引き出し、リアルな状況を作り出すことを重視している。そのため、シーンは最初から順番に撮影し、時には即興演技に委ねたり、脚本製作時に結末を意図的に執筆しないことももある。– wikipedia より
是枝 裕和(これえだ・ひろかず)
1962年6月6日生まれ。太陽、水星を双子座に持つ。
日本の映画監督、脚本家。ドキュメンタリー出身の映画監督として知られ、国内外で高い評価を受ける日本人監督の一人である。実際の事件から着想を得た『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭で最高賞となるパルム・ドールを受賞。テレビのドキュメンタリーディレクター時代から映画監督になった今も企画、脚本、監督、編集、すべて自らが行うスタイルを貫き、日頃から常に手帳を持っていてアイデアが思いついたら手帳に記している。撮影現場で発見した事を大事にし、役者のリアクションによってはその場で脚本を書き換え、役者同士の会話に耳を傾け、そのやりとりを脚本に加えることもある。– wikipedia より
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