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「お留守番。」/ショートストーリー

パパが朝、僕を撫でながら告げた。
「今日、ママが帰ってくるよ。」
それを聞いた僕は嬉しくてはしゃいでしまった。

ママが帰ってくる。大好きなママが。

ママがママのおうちに行ってしまったのはいつだったかな。
タンポポの綿毛が飛んでいた頃だったかな。
今はたまに空から鳥さんの羽根みたいな雪が降ってくる季節になっている。

「そんなに嬉しいか。」パパが笑いながら僕に言う。
もちろん、パパのことだって大好きだよ。内緒だけど。ちょっとだけママの方が好きなんだ。だって。パパはいつもお外に行ってしまう。その間、ママと僕はお留守番。お留守番が嫌ではないんだけれどね。

今回のお留守番は長かった。ママのかわりにパパのママがおうちで僕と一緒だった。パパのママも大好きだけどね。やっぱり、ママとは違うんだ。


「ただいま。」
大好きなママが帰ってきた。僕は玄関まで走った。
大好きなママ。そしてちいさなものを抱いている。良い匂いがする生き物。

「ハッピー。いい子だったって聞いてるよ。」
そうだよ。ママ。
「ほら。あなたの弟よ。」
そういって僕に小さな生き物を見せてくれる。
僕の弟。僕の弟だって。僕は嬉しくて、くるくるまわる。
弟にお手とかお座りとかの見本を見せてやらないと。

「年内に帰れてほっとしたわ。明日はもう新しい年だもの。」
「朝からハッピーは落ちつかなくてね。」
「うん。わかる。ハッピーは本当にお留守番をちゃんとするの。その分、お留守番というお仕事が終わると嬉しくて甘えるの。そうそう。今年のお正月、覚えている?パソコンやテレビからハッピーニューイヤーって聞こえるたびに自分のことかと喜んで、くるくる回ってしっぽがブンブン。明日もそうなのかしら。人間が大好きなハッピー。ママも逢いたかった。」

ママはパパと一緒に弟をあやしている。僕は嬉しくてしっぽのブンブンがとまらない。

大好きなママが帰ってきて。そして弟ができて興奮したせいか、もう眠くて仕方ない。
人間の弟にお兄ちゃんとして色々と教えるのは明日からにしよう。

おやすみ。また明日。


今日は大晦日でしたね。30日がパートだったせいか、全然大晦日という感じにならない、いとうです。(笑)
ショートストーリーの毎日投稿がもうすぐ3ヶ月になります。未熟な私の作品にたくさんの方がフォローしてくださり、私のしっぽもブンブンでした。そして、なんと私のショートストーリーを紹介していただくという嬉しいこともありました。
本当にいつもありがとうございます。来年も何卒宜しくお願い致します。。どうぞ良いお年をお迎えくださいね。
皆様へ愛と健康を祈ります💗





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