【日常エッセイ】自然と散歩
地元の風景は、山や田んぼが広がる美しい自然に包まれている。心が疲れたとき、私はその静けさに身を委ねたくて、よく散歩に出かけていた。歩きながら、自然の中で呼吸に意識を向け、心を整える。山や田んぼの周りを歩くだけで、不思議と心が浄化され、いつの間にか気分が軽くなっていた。「それ、さすがに言い過ぎじゃない?」と茶化す人もいるかもしれないが、そんな声は気にしない。他人と比べることなく、ただ自分を取り戻す時間だったからだ。
しかし、上京してから周囲はビルやマンションばかりで、目に映るのはグレーの風景に変わった。確かに、街路樹や公園もあるけれど、故郷のように豊かな緑が広がるわけではない。日々、車の排気ガスにさらされ、高層ビルに囲まれる生活は、次第に心に重くのしかかる。散歩に出ても、どこか満たされないまま帰ることが増え、心も体も疲弊していった。トレーニングルームでの筋トレも、自然の中での運動とは違う。スマホを眺める時間が増え、そのたびに他人と自分を比較して落ち込むことも多くなった。
ある日、家の近くに緑が豊かな公園があることを知った。どこか人工的な雰囲気に気が進まなかったが、試しに行ってみることにした。「変わるのを恐れていては、何も始まらない」と自分に言い聞かせて。ぼんやりと公園内を30分ほど歩いた。すると、不思議なことに、心が少しずつほぐれていくのがわかった。帰る頃には、明日も頑張ろうと思える気持ちになっていた。その日から、雨の日以外は欠かさず公園に通うようになった。ジョギングや公園の器具での筋トレも取り入れ、心身のリズムが戻り、仕事の集中力も格段に向上した。いずれは、また高層ビルや広告のない、心が休まる場所で暮らしたい。もしかしたら、別の国への移住もいいかもしれない、と夢見ている。