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【読書】棟方志功の生命力と美術の融合、原田マハ新作 『板上に咲く』

行間からあふれるような生命力・強さを感じる作品。

原田マハさんの新作『板上に咲く』。
表紙は、「棟方志功」の版画作品。
読む前から、マハさんの美術物と期待が高まります。

『棟方志功』と言えば、菩薩像や力強い山などの景色を描いた版画作品が頭に浮かびます。

昨年11月、青森県立美術館で、『棟方志功』の作品を目にしてきたばかり。
ふくよかな菩薩の表情、描かれた線は、繊細さと強さを併せ持つ作風。メガネをかけて、人懐っこそうに笑う棟方志功。
どの様な人生を歩んできたのか、ページをめくる手が止まりません。


物語は、記者が棟方の妻チヤへ、「日本で、ゴッホのひまわりが展示される。もしも、棟方が生きていたら何と言うだろうか」と質問し、答える形で、棟方の半生を語ります。

棟方とゴッホの関係は、切っても切り離せないもの。
美術にあまり詳しくなくても、「ワぁ、ゴッホになる」と、言うセリフを聞いたことはないだろうか。
それほどに、ゴッホは棟方に影響を与えた。

今作品は、棟方志功の強さ、生命力、真っ直ぐさと言う、人物像が色濃く出ていた。
正直で、絵や版画、ゴッホ、大切な家族に対しての思いにあふれていた。

棟方の人生を大きく方向付けていくことになる、仏像と出会ったときの衝撃。

久遠の闇の中に、自分は浮かび上がっていた。

板上に咲く P206

棟方が生命をかけて彫る姿をみた、チヤ。

あの人は版画なのだ。

板上に咲く P210

言葉の花束であの人をいっぱいにうめつくそう

板上に咲く P212

チヤの棟方への思いが熱を持って伝わってきます。

棟方の気持ちや生命力を表す言葉を表現した、原田マハさんの作家としてのすばらしさ。
表現の引き出しの多さ。

棟方志功をテーマに書かれた作品だが、棟方志功と原田マハ、活躍の場がちがう二人の作家の相乗効果のような1冊。


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