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憑き物使いと猫行者と死人使い 後編


◆前回までの、あらすじ
病院から、林田行男(63)の遺体が消えた。
その連絡を、ご遺族に伝えようとしたところ。
別の病院で、入院中だった林田朝子(60)の姿も無く
母の看病で、着いているはずだった長男林田和男も連絡が取れなくっていた。
家族全員の失踪に、困り果てた親戚、林田行男の弟から
探偵では無く、憑き物使い、深見胡堂に動く死体と、その家族の行方の捜索の依頼があった。
その、謎を解くために、林田家に向かうと、失踪した長男が猫に憑かれた状態で発見し
そこへ、謎の山伏猫行者が現れ、長男の扱いについて意見が割れ、戦いとなる。
猫行者の提案で、休戦状態になった後、
憑き物使い、深見胡堂は再び、残りの家族の行方を追うことになる。
◆登場人物
林田行男 死亡後遺体が消える。
林田朝子 行男の妻。持病にて、入院中だったが失踪中
林田和男 長男、実家で発見される。
深見胡堂 憑き物使い、動く死体の件で、専門家として捜索依頼を受ける。
猫行者  謎の山伏、猫と旅をする老人、猫優先で行動し、猫を使った術を使う。
推測
問題は、父親が死んで生き返ったかどうかだ
この俺で出来るかと言われれば
ゾンビもどきすら怪しいもんだ。
死人が蘇る可能性か、
死人帰り、かつては西行法師が行ったと言われる
「反魂法」が有名だったが失敗している、その方法の一部に
骨を繋ぎ合わせると言うくだりがある。
つまり今回のような、死んで数時間後に棺に入った遺体を
一旦、骨にする必要がある、さらに27日間待つ必要があるとされている点で
反魂法の類では無い。
だとすれば、まことしやかに語られている呪文、死んだ肉体残っている状態で使うとされる

「タナトス・キシプニステ」他にも

「ヒプノス・ススキターティオー」などがあるが。
他にも、中国における、キョンシーの可能性もあり得るが
現在、キョンシーを作れる、現役の道士は存在しないはず。
キョンシーを作るには、自然法、と術を使った方法があるが
自然法は、100年がかりと言われ、術の方は、キョンシー本来の使い道が、現在の科学の力によって不要になったため、
廃れていった。
キョンシーの本来の使い方は遠方で死んだ、死者を故郷まで送るため、死者自体を歩かせるために作られた
その技法を操る使い手も近年聞いたことがない、他にも、ブゥードゥー教のゾンビがある。
だが、どれも成功事例を見たが無いが
まぁ、力業で幾つか方法はあるが、
実際のとこ、ゾンビでもねぇし、魔術でもない
ゾンビパウダー、つまりは薬品、ドラックと、催眠、マインドコントールによる
操り人形だ、これが今回の答えに近い。
死ぬ前の、弱った人間に強烈に深い深度の催眠をかける、自分の命令に従うように、そして生きている間にゾンビパウダーの飲ませる。
何が起こるのか、その薬のせいで、心臓が止まるが
どんな薬効があるのか分からねぇが、数時間後に目が覚めるのよ
ただ、その時は、心臓が止まる前に掛けた、催眠術が効いて
操り人形の出来上がり。
催眠の深さも段階があり、催眠ショーなどで使われる
中程度になると、夢遊状態で、感覚麻痺、物忘れ、名前が言えなくなる、腕をつねっても痛み感じない。
更に、深くエスディル状態になると、昏睡、手術の際に麻酔の代わりになるほど深い催眠状態で
この段階で記憶の消去が可能と言われているが、この先がある。
Ultra Depth(ウルトラデプス)と呼ばれる極度に深い催眠状態があると言われ
危険で結果が分からないため、論文などが見つからない程だ、
もし、この状態を操ることが出来れば
病気の進行を異常なほど、ゆっくりにすることができ。心臓の音も1分間に2,3回それも弱く鼓動することで。
まるで、死体が動くように見える。
ただ、映画のキョンシーのように、機敏に動き回れるわけではないが
反応はあるし、動くと言えば、ゆっくりだが動く。
自分のモノにしたいのなら、うってつけだとは思うが。
人体冷凍保存「クライオニクス」、脳死の身体提供者2人で試みた「ヒト頭部移植」も成功されている
が、今回のケーズに当てはまるかと言われれば、可能性に過ぎない。
やはり、きちんと調査をしなければ、見当もつかん。
胡堂は、独り事止めた。
ー追跡ー
今時、記請文を書く、まじめな奴がいるとはな、
となると、この起請文を神に誓い
霊験あらたかな、寺社の敷地に埋めるのが
古典的な呪詛のやり方だ。
何とか、我に返った、長男に、父親だけでなく
母親も居なくっていること
そして何か、心当たりがないか、聞いていると
最近、見たこともない
スーツ姿の若い男が、母親と病室で会話していたと
保険会社の人間とか言ったけど。
名刺も、名前も付けずに慌てて帰っていったと言う。
母親が、入院していた病院に、胡堂が
長男を連れて来たところ
母親の私物はそのままになっていて
その中から、握り潰した1枚のメモが不自然に
鞄から、発見された。
開いてみれば、何と呪いのやり方が簡単にメモしてあるじゃねぇか
不用心にも、程がある。
すると長男がメモを見て
「起請文ってなんですか?、摩利支天神鞭法ってなんですか?」
と聞いて来た。
「気になるのか?」
まぁ、近いうちに、殺される奴だ、冥途の土産に聞かしてやるか。
「起請文とは、迷いを、断ち切り、人を呪い殺す決意を、誓いを立て
信じる神仏に心情を訴えて、加護を受け、失敗した時は、進んで罰を受ける約束をするためのものだ。これを霊験あらたかな寺社にて、読み上げ、人目のつかぬところに、埋めたりする。」
「昔から、術師は色んなモノや事を、限定したり、縛るの大好きで
それによって、束縛することでエネルギーを集める効果があるから、好んで縛りたがるのさ。」
「摩利支天神鞭法は、人を呪う呪法の一つだ。」
誰を、呪った。
ただ、死人を動かすほどの奴がこんなへまをするのか?
もしくは、一般常識が曖昧になるほど頭がいかれたか
俺もか、と言いかけて辞めてしまった。
例え、罠であったとしても
どの道、順番で追いかけるのが
フルコースを味会うには、一番適してる。
神社にて
この辺で霊験あらたかな神社は
諏〇神社か、解りやすくここに行って見るか。
深夜の〇訪神社は、シーンと静まり返って誰もいない
特に、都会ならまだ、人気があるかもしれないが
こんな、ド田舎の神社となれば
丑の刻参りぐらいしか、来る用事が無いぐらい
静かなもんさ、鳥居くぐり、いざ中へと一歩踏み出した。
「こんな、解りやすい所に埋めたのか。」
鳥居の正面は、石畳みがずっと奥の本殿迄続くが、両脇はまだ
地面が見えていた、そこに1か所いかにも掘り返した跡がある。
「如何にも、くせぇぞ、匂う、匂うぞ」
「あなたは、逃げないと思ってましたよ。」
「おめぇ、こんな所で殺り合うつもりか
この罰当たりが!!」
「へぇー、あなたがそんな事を言うんですか」
闇夜から、響くように男の声がする。
どこにいる?
「おまえが、死体を甦らしたのか?」
「ええ、でもそんなことどうでも良いんですよ深見胡堂!!」
「私は、お前が来ることを望んでいたからだ!!」
俺を望んでるだと、まぁ、いつも通り人気者はつらいね。
「蘇った、林田さんと、その奥さんは何処にやった。」
「本当は、お金のためにここに来た、あの二人の事は忘れたらどうですか?」
「そうは、いかん、依頼の失敗は後で尾ひれがつくからな、そろそろ出て来てもらおうか、蝙蝠野郎!」
胡堂は、懐から、1枚の紙きれを、空中へと放った。
「出でませ、大蝦蟇(おおがま)!!」
すると、一枚の紙に向かって小さなカエル無数に跳びかかって行って
その小さな大群のカエルの塊を飲み込む、大きな蟇蛙が空中に現れ
その大きな口から、赤黒い舌が、松のかなり上に向かって伸びて行った。
次の瞬間その舌先真っ黒な服の人間がくっついて戻ってきて
3mとはあろうか大蟇蛙の口に挟まった。
人間の頭と足先が口の両側から飛び出している。
「まだ、食べるなよ!!」よほど腹を空かしているのか
涎が足先からぼたぼた零れている。
さて、松の枝に逆さまに立つ演出なんて、ダサイ真似する奴の顔なと拝もうかね。」
そう言って、頭側に回り込む
「ちっ、これは死人だぞ?」
顔は半分骨になっている、服は後から着せ替えたように
黒い喪服を着ているが
「私は死人使い、まだ、まだ沢山いますよ。」
背後、暗闇から、がさがさ、何かが蠢く気配がする。
あきらかに、ゾンビ映画で見る光景だ、数は大したことは無い
ざぁっと数えて、20に届かないぐらいだが。
おかしいぞ、この俺でもせいぜい死霊を操る、憑き物を操る、でも
死体だ、本来なら動かない、動かないだと。
この俺と、したことが奴の術にまんまと掛かったわけだ。
死体一つ動かす事がどれほど難しいか、ましてや甦らせることなど
出来るはずはない。
「種明かし、してもらうぜ、幻術使いよ!」
胡堂の目から、白目が消え、またも口から黒煙を吐き始めた。
胡堂の目が黒目だけになり、霊眼へと切り替わった。
黒煙が、鼻の孔、耳の穴、恐らく毛穴からも黒煙が漏れ始めている。
正直、久しぶりに、幻術なんぞにかかったぞ
「大蟇蛙よ、全部平らげろ、」そういうと大蟇蛙が、次々と、ゆらり、ゆらりと迫って来ていてた、歩く死体を、長い舌で集めてパクパク食べていく、
幻術とは、現代で言うところの催眠術、それを、普通の人間なら、まだしも、大方、人に非ずのこの俺に気づかせることなく可能してたのは
これだな、
胡堂の目に映る、松の木や、鳥居にも青く光る札が貼ってある。
そのうち、一番近くの札をはぎ取った。
「単純に、俺が憑き物近い存在を分かった上で、人を惑わす、催眠術ではなく、悪意ある霊的な存在を閉じ込めるための結界を上手く利用したか。」
また、別の方向から声がする。
「深見胡堂、この名前に憶えがないか?呪い屋中村呪王」
「貴様に殺された我が父の名だ!!」
「この日のため、俺は、全てを捧げて来た、」
「かつて日本に存在した伝説幻術使いの果心居士、修験道の不動金縛りなど、人を惑わす幻術の正体
現代で言うところの、催眠術に過ぎない。」
「という事は、手前ぇが、死体を動かしたんじゃあ無いな、それに
中村呪王だと、大層な名だが、一つも覚えがねぇな。」
「俺は、確かに色んな奴と殺し合った、ある程度は相手を調べてから、戦うのは、呪い屋、拝み屋、陰陽師も同じこと、名前や出生日時が分かれば、相手の急所を知り、呪い、式を飛ばし、念を送って、力尽きた方が負ける。」
「だから、案外覚えてるもんさ、手前の親父の名は、戦って無いし、聞いたこともない、」
「そろそろ、その化けの皮剥がしてやる!!」そう言って
右手の袖を捲ると、その腕には、沢山の呪文、お経が書かれた包帯でぐるぐるに巻かれていた。
「これで、終わりだ小僧!!呪縛布を奴を掴め」
すると、するすると緩んだ、包帯が2本、闇夜目掛けて伸びいく
その時、社務所の屋根の上に潜んでいたのであろう
男の前で、呪縛布がぴたっと1m手前で止まった。
胡堂の腕は、包帯が解け、その姿が見えていた。
それは、青黒く光、あちこちが数センチほど裂けて
赤い肉が見えているかと思いきや、その切れ目をよく見ると
全て口で、歯や舌が見えるではないか。
「胡堂、貴様のその、醜い腕やはり、貴様は化け物であったな。
それゆえ、これが良く効くてあろう、」
「高天原たかまのはらに神留かむづまり坐ます 皇すめらが親むつ神かむ漏ろ岐ぎ 神かむ漏ろ美みの命みこと以もちて 八や百ほ萬󠄄神よろづのかみ等たちを神かむ集つどへに集つどへ賜たまひ 神かむ議はかりに議はかり賜たまひて」だんだん祝詞が早くなる。
「大祓祝詞か、まさかな。」
「胡堂、我が足元を見よ」
そこには、父親の遺体が横たわっていた。
「貴様、もろとも、祓い、清めてやろうぞ!!」
「いかん、金づるが、呪縛布を、あいつを守れ、呪護封郭!」
呪縛布は、横たわっている父の死骸を、あっというまに包み込み
ミイラのようになった。
「祓へ給ひ清め給ふ事を 天つ神 國つ神 八百
ひ萬神等共に 聞こし食せと白す。ヒト、フタ、ミー、ヨ、イツ、ムユ、ナナ、ココノ、タリ、モモ、ヨロズ」という神文を数回唱えた後、厳かに「ウーン」と唸りながら、人差し指で霊力を注ぎ込む。

鎮魂帰神術

胡堂を中心に、神社の敷地一杯に、八角形に取り囲むように、光のカーテンが、上空から降りて来て、地面まで降りて来たとたん
その八角形の中が一面、真っ白になるほど光が輝いた。
光が収まる中、胡堂はかろうじて、声を上げた。
「むう、これは、不味いかもしれん」
そういって、胡堂は、膝をついて
うずくまっている、その顔は焼けど負ったかのように
焼けただれて、鼻は無くなり、右目がこぼれ落ちている
更に、右手の前腕は、骨と化している。
まるで、焚火が終了したときのように、白い煙が
胡堂から昇っている。
「やはり、効果覿面、悪霊、悪鬼になり果てた、貴様には
神の御威光は聞いたようだな。」
「神降ろしの儀か、一瞬だが、何か、階間みた気がした。」
「良く、父の亡骸を守ったな、あっしに後はまかしてもらおうか
うなれ、藤虎、白虎よ!!」
何処からか、現れた、猫行者が鈴を鳴らして、霊獣たちを使役する。
またも、雷纏いし、2匹の霊獣は、中村呪王の息子と名乗る男の
両肩に嚙みついた、するとコマのように水平回り、稲光ともに
その男を、胡堂の前に吹き飛ばした。
両肩をかじり取られ、かろうじて繋がっている両腕がぶらりと垂れ下がっている、しかし、その男の表情は歓喜に満ちており、わなわなと振るえていた。
「胡堂を、打ち取ったり、父よ、喜び給え!!」
「ふざけるなよ、てめぇも、猫行者も、俺はまだ終わりじゃあねぇぞ。」
そう言って、たれさがった右目をむしり取り、投げ捨てた。
「確かに、俺の体のほとんどが、憑き物や呪物に置き代わっている、
それ故、代用可能だ、これを見ろ。」
背中に、背負っていた、箱の上部の紐を解くと
「出でよ、黒猿、そして、わが身と一体と成れ!!」
すると、箱の上部から、大量のコバエが噴き出して
胡堂が、大きく口を開けると、どんどん大量のコバエが入り込んで行くと
真っ黒に穴が開いていた右目が、何やら、真っ黒な塊を押し出し
目の大きさの玉状になり、グリグリ動き始めた、鼻も黒い粘土の要なものが形を作り、耳も同じで、本当に元通りではないが、格好は戻りつつある。
さすがに、右腕は再生仕切らなくて、骨に僅かな肉が付いたほどで止まった。
今は、これで十分だ、せっかくだから、俺の身になった、憑き物を使うとするか。
右手の、黒い皮手袋を外すと、真っ黒な掌の中央には、何やら文字が刻まれていた。
これは、封印だ、こんなものと
胡堂は、手のひらにかみついた、「ばりぃ!」
封印部分を噛み千切り、吐き捨てた。
「出でよ、混沌の化身、不浄の王よ!」
真っ黒で中心は嚙みちぎられ、
真っ赤な肉が見えていたはずの掌を
向けるやいなや、胡堂の手首から先が
大きく膨れ上がり、一抱えの黒い玉のようになった。
「さぁ、全てを粉砕せよ、黒姫」
伸びる伸びるどんどん伸びる
黒い玉はどんどん伸びながら形状を変えていく
頭が、人の身長を超えるほどのムカデとなり
辺り一面を粉砕しながら、のたうち回る。
大ムカデ黒姫が暴れたおかけで
地面はあちらこちらが抉れて、砂埃がで視界が見えなくなるほど。
松林はごっそりと倒れ、その先の
社務所の屋根が削り取られ
中村呪王の姿は無くなっていた。
「やりすぎじゃのう」猫を抱えた、猫行者が
被害を受けなかった鳥居の向こうから姿を出す。
「あぁ、確かにやり過ぎた、アイツの本当の姿と、死人を操作する種明かしを吐かせるつもりだったが、黒姫の出現に起こる、呪力の波動で消し飛んでしまった。」
「まぁ、今回の件は、アイツとは、別の黒幕がいたはずだ。」
「確かに、儂も見られておったからのう、何者か知らんが」
「ほっといたのか、いつから気づいていた?」
「あんたと、会う前からだよ、」
「ちっ、どこから仕組んでやがった、まだ見てるんだろう、出て来いよ!!」
すると、胡堂の目の前を、白色の人型の紙がひらひら落ちて来て
それは、まるで胡堂の掌に吸い込まれるように、収まった。
1枚の紙切れが、不自然に胡堂の前に落ちてきて
右手でキャッチした。
それをよく見ると、白い紙で作られた、人型で
上を向いている面には、八咫烏のマークだが、真ん中で2つに別れた黒い印が押してあり
裏には、墨で世界平和計画は決行し、お前は対象者だ。と書いてある
ちっ、あいつらの仕業か、もしかすると、林田家の事件も
この名もなき術者も全て、俺を始末するためのもの?
すぐさま、人型を握り潰し、ポケットへしまい込んだ。
そういえば、社務所の方へ目線を移す。
そこにあるのは、
林田行男の遺体だ。
深見胡堂は今はまだ、霊眼が使える状態だ
林田さんの、奥さんがタブって見える。
「つまんねぁ、事するなぁ、だが、どうなったか聞いてみるまで
真相は分からんからな。」
「もし、会話が出来るなら、どうしてこんなことになったか
聞かしてくれないか?」
すると、物陰から、長男が駆けつけてきた。
猫行者が連れてきたらしい。
「親父、かあさんはどこだ!」といって詰め寄るが
その遺体から
死んだ、夫に憑りついた、奥さんが語り始めた。
「卓也ごめんね、母さんは父さんが一番大事なの、
卓也は、嫌いじゃな無いけど、ごめんね。
母さんはこのまま、この人とずっと一緒いるわ。」
「本当にこれでいいのか?
旦那は、何も返してはくれないし、あんたも死んだと同じだ。」
胡堂は聞き返す。
「全然構わない、これで十分幸せだから。」
自分で自分を抱きしめて、動かなくなった。
まだ、奥さんの霊は、旦那さんの遺体に憑いている。
起請文を書いて、自分も死んで、夫に憑りつく予定だった
自分の夫に憑りつくことで、一生離れないつもりだった。
しかし、成功したのは、奥さんが、旦那さんに憑りつく所までだ。
生きている父親に憑りつくつもりだったが
敢えて殺した、そして、俺に探させるつもりだった。
父親を殺したのは、恐らく
操り人形で、父親に似た
他の死体と入れ替えた。
そして、あの映像に移っていたのは
本物の、父親でまだ殺されておらず、仮死状態であったのを、操り動かした。
映像で映らなかっただけで、最初から、葬儀場に忍び込んでいた。操り人形が脱出を手助けした。
まぁ葬儀屋の社員でも成りすましていれば、色々できる。
まぁ、手の込んだことをやったが。
騙されて、こうなったが
「悪いが、このままにしておく事が出来ない。
死体遺棄、になるんでな。」胡堂は、虚ろな目で、奥さんに告げる。
「深見さん、あんたどうする気だ、奥さんの霊を成仏させるのか?」猫行者が割り込んだ。
「いや、俺は、そんなに優しく出来ちゃあいねぇんだ。
死霊払うが、成仏するとは限らん。」
「なら、あっし、いや、猫たちに任せて貰えんかね
ここで会ったが、何かの縁だ、雪が、旦那の魂の所まで連れてってくれるそうだ。どうだい、あんたたちの遺体もいっしょに墓に行き、
魂も同じところに行くんだ、それで納得しておくれ。」
「そこまで、して貰えるならそうしてください。」旦那の姿だが、奥さんの声でそう言った。
「サービスし過ぎだぜ、爺さん」
「そうかも、しれんなでもな、世知辛い世の中で、こういう終わり方があっても罰は当たらんよ」
あと、長男の方を向いて、「あんた、両親の葬儀を済まして、墓に納めるまできちんとやれよ。」
「おい、こいつまで、生かすつもりか」
「この2,3日の付き合いだが、そこまで悪いやつじゃあねぇし、猫の供養もさせる。もし、親がとか、こんな子供がとか巡り合わせが問題なら
全部を罰することは、あんまりにも厳しいなぁ」うなずきながら猫行者は言う。
「巡り合わせだと、こいつの家みたいに、それぞれが勝手に暮らす、家族崩壊みたいになってるのは、今じゃぁ、当たり前なんだよ。」胡堂は続ける。
「今、人の営みは、個を重視している、だから、自然の調和から外れてる
それでも、地球の枠組みとして生きていて、生命のサイクルから外れた人は、つまり子孫繁栄しない奴は、自然に淘汰される、日本は、人口減少しているが、世界的に見れば、人口は伸びている、多くなり過ぎた人間は、地球から間引かれる、それが自然であり、それでも世界は周り続ける。」
「だから、子孫繁栄を諦めた奴は、どれだけ楽しんでも問題ない、
それが、問題だと思えば統〇教会でも入って、合同結婚式でもやりやがれ、
自分が選んだ未来ぐらい、自分で片付けろ、その点で奥さんはやり切った、その点を認めて、爺に全てまかせる。」
「まったく、素直じゃないのう、しっしっし、それなら、お前たち頼んだよ」
「にやおぉぉぉん」と一斉泣いて、次々と猫たちは姿を消した。
大きな虎猫だけが残って、胡堂の足に頭突きをかましていた、
「気に入られたようじゃあ、主も猫を飼わんかい。」
「こいつをくれるのか?」
「そりゃあ、駄目だ、また会った時には、別のを連れて来よう
意外と優しいから、沢山連れて来ても良いかもしれん。」
「俺は、憑き物使い、動物はもう足りてるから、心配すんな。」
「俺は、ひとまず、こいつを連れて、クライアントに会って来るぜ。」
さっさと来い、長男の首根っこを鷲掴みにし、ずるずると引きづって、霊柩車の乗せ、その場から走り去った。
その後、猫達が奥さんの遺体を神社の裏の山林で発見し、夫婦そろって墓に入ることになり。
猫の供養を済ませた、長男が、お礼を言おうと
猫行者の方へ、ふり返ると、そこには、姿がなく、
遠く、海沿いの道から、『にゃおーん」と猫の鳴き声が聞こえた。

今回の事件は、俺の元居た職場の連中が使う手だ。
死人に口なし、そして、世界平和計画は、まだ、諦めてなかったか?
日本政府が行う、裏世界で生きる全ての人間、拝み屋、呪い屋、陰陽師、さらには、占い師迄、闇に関わる全てを消し去る計画だ。
人もそうだが、日本政府が管理して、番号を振って生かしている、化け物ども、鬼や,妖怪全てをまとめて滅ぼし、日本を清浄化する計画だ。
そして、俺はこの計画について、意見し、日本政府から
追われる立場になった
一度は頓挫したものの、まぁ、でも、いつまでも、日本の政治家たちが
俺たち、日本の闇に恐れおののいても、面白くは無いからなぁ。」

続く

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